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異形魅了のUNKNOWN season.2  作者: ヨシアキ
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3-1話




幸大との戦闘から二日、智琉はそこそこ都会感溢れる町のコンビニに立ち寄っていた。スマホの充電が切れかかっていた為、イートインスペースのコンセントで充電するついでに軽く食事も済ませていた。空模様は一昨日と打って変わって土砂降りの雨であった。

智 (……やっぱりマスターピースに関する事は何も書いてないな)

智琉はスマホから以前衆治に教えてもらった、一部のアンノウンを持つ者しか行き着けないサイトにアクセスしていた。そこは保安局が運営するサイトであり、アンノウンに関する事件や保安局が手配する人物などの情報を閲覧が可能な場所であった。智琉はそのサイトでマスターピースに関して調べようとしたが徹の言った通りマスターピースの情報は全く無かった。

智 (ここに情報が無いんじゃ完全に一から手探りって事になるな)

智琉はコンセントから充電機を外し立ち上がると外の降りしきる雨を見てビニール傘を購入しコンビニを出た。傘を差して町中まちなかを歩きながら、さっきまで調べていたサイトを衆治に教えてもらった時の事を思い出していた。




智「へー、こんなものまであるのか」

衆「ここに出ている連中を取っ捕まえて引き渡せばそれなりの金になる。お前も暇な時に試してみろ」

智「…………なあ衆治」

衆「ん?」

智「このサイトって普通の人が見れる様な事は無いのか?」

衆「その辺は全く無いらしい。電波の発信源が特殊らしくアンノウンを持たない人間の端末には表示されない細工が成されてるみたいだ」

智「特殊な発信源って?」

衆「そのサイトにも書いてあるだろ。保安局が独自に作って宇宙に打ち上げた人工軌道衛星クローズドサークルってのが」

智「つまりその衛星から俺達みたいなのの携帯に情報が送られるのか。金かかってるな」

衆「税金の正しい使い方だな」




智琉はふとビニール傘から透けて見える雨空を見上げた。

智「……あの空のどこかで今もその衛星が浮かんでんだろうなあ」

智琉の目には絶え間無く降り続く雨の一粒一粒が傘の上に落ちては他の水滴と繋がり大きくなって傘から落ちる様子が鮮明に見て取れた。

智「初めて使ってみたけど透明な傘も面白いな。ちょっと変な感じだけど……」

その時、智琉はその雨水の動きに変な違和感を覚えた。傘に落ちては下降するを繰り返していた筈の雨水が滑り落ちる事無く傘の天辺の部分に大きな水の塊として留まっていたのだ。更に智琉が立っている付近の地面の雨水までもが智琉の持つ傘の上の水の塊に向かう様に一滴、また一滴と立ち昇っていたのだ。その光景は明らかに異様なものであった。

智「なっ、何なんだこれ……!?」

次の瞬間、傘の上の水が突然大きく広がるとそのまま智琉を飲み込もうとした。

智「うわっ!?」

危険を感じ咄嗟に傘を手放した智琉は思わず尻餅をついた。しかし智琉には尻餅の痛みが全く気にならなかった。ビニール傘を完全に覆いながら活発に動く水の塊を目の前にそれどころではなかった。

智「こんな芸当、アンノウン以外には……」

智琉は瞬時に目の前の出来事がアンノウンの能力によるものだと確信するとその水に背を向け急いで走り出した。

智 (何なんだ一体!?いきなり襲われる訳は分からないが、水が能力に関係するのは何となく察した。水が襲って来るとすれば雨の中にいるのは危険過ぎる)

水から流れる為に智琉は建物間の路地裏に逃げ込むと即座にカードを具現化し振り返った。外の街道に比べ建物でほとんど遮られた路地裏の方が圧倒的に雨水の存在が乏しかった。

智 (ここならさっきみたいな不意打ちは難しい筈。どう出てくる?)

カードを構え神経を尖らせて周囲を警戒する智琉はふと背後に気配を感じ振り返った。智琉の目の前には集まりあった大きな水の塊がゆらゆらと動きながら徐々に人の形を成していった。水が完全に人型へと変わった途端に液状であったそれの表面は硬質に固まりアンノウンとしての姿を露わにした。

智「……持ち主は姿を見せないか。初めて遭遇するパターンだ」

智琉もカードからレッド・ドラゴンを出現させ戦闘の姿勢を見せるとそのアンノウンは智琉に向かって駆け出した。

智「来るか。ならこっちも受けて立つ!」

向かって来るアンノウンに智琉はレッド・ドラゴンを立ち塞がせ、そのまま右手の爪で引っ掻く様に攻撃を放った。その瞬間、アンノウンの体が再び液状と化しレッド・ドラゴンの攻撃をすり抜けて行った。

智「何っ!?」

再びアンノウンは体を実体化させると右手の拳を構え真っ直ぐに智琉へ向けて繰り出した。

智「うわっ!」

智琉はそれを転げながらもなんとか躱した。アンノウンのパンチで智琉がいた地面が抉れた事からそのアンノウンのパワーの強さがうかがえた。智琉はすかさずアンノウンに向けてエネルギー弾を撃ち放ったが、即座にアンノウンは体を液状化させエネルギー弾の直撃を無効化させると液体状態のまま地面を這うように素早い動きで智琉に迫った。

智「体が液体に変わるのか。だったら……」

智琉はレッド・ドラゴンを羽ばたかせ口にエネルギーを貯めさせた。そしてそのエネルギーを瞬時に燃え盛る炎へと性質を変化させた。

智「一滴残らず蒸発させてやる!」

レッド・ドラゴンは真下に向けてそのままエネルギーの炎を吐き散らした。その炎により地面に湿っていた雨水は一瞬にして蒸発していった。

智 (これなら……)

その時、智琉は揺らめく炎の一部が妙な立ち込め方をしているのに気が付いた。

智「ん?」

異様に上る火柱が途端に霧散したかと思うと、舞い散った火の粉が風に乗る様に宙を泳ぎ智琉のすぐそばを掠めていった。微かな風を肌に感じた智琉が振り返ると、火の粉を纏い揺れる風が人の形を留めていった。そしてそれははっきりと形あるものとして姿を露呈した。その姿はあのアンノウンであった。

智「液体だけじゃない……、こいつ……気体にも姿を変えられるのか!?」

文字通り掴み所の無いアンノウンを前に智琉は固唾を呑んだ。




続く



《世界観紹介》

人工軌道衛星クローズドサークル:保安局が独自に作り打ち上げた人工衛星で常に地球の外周を回っている。アンノウンを持つ者の端末にのみ情報を発信する他、様々な用途で役立ってるという。


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