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異形魅了のUNKNOWN season.2  作者: ヨシアキ
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1-4話




ミスター・タンクは猛スピードで自走しながらバルカン砲を智琉に撃ち放った。

智「甘く見るな!」

智琉はレッド・ドラゴンを自身の前に呼び寄せ弾丸を防いだ。僅かなダメージは通るものの、レッド・ドラゴンの体であれば盾として弾丸から身を守る事は可能であった。

泰「バルカンじゃあのドラゴンに傷を入れんのは難しいか」

智琉は迫り来るミスター・タンクに対し同じ様にレッド・ドラゴンを突撃させた。

泰「そう来るか……。なら!」

その瞬間、泰馳はミスター・タンクを急加速させ向かって来るレッド・ドラゴンに体当たりさせた。勢いを付けたスピードと頑丈な装甲が合わさりミスター・タンクの突進はレッド・ドラゴンを軽々と弾き飛ばした。

智「うぐっ!」

泰「守りだけじゃない。ミスター・タンクの装甲はこうやって攻めにも使えんだよ!」

依然として襲い来るミスター・タンクから逃れようと、智琉は近くにあったジャングルジムを盾にする様に咄嗟に逃げ込んだ。

泰「そんなもん盾にしたって意味が無い。ミスター・タンクの砲撃の前じゃ飴細工以下だ!」

泰馳はミスター・タンクの照準をジャングルジムに合わせ、その後ろの智琉諸共吹き飛ばそうと砲撃を放った。真っ直ぐに突き進む砲撃は呆気ない程に容易くジャングルジムを貫くと泰馳は確信した。しかし、奇妙な事が起こった。砲弾が直撃した筈のジャングルジムは壊れる事無く砲弾の力に合わせてその形を伸縮させたのだった。

泰「…………は?」

大きく伸びて姿を変え、砲弾を智琉の目前で引き止め包み込むその形態はさながら柔軟なゴムの様であった。

智「この公園、ジャングルジムなんてあったっけか?」

泰「……まさか、そのジャングルジム……!?」

智琉の言い振りに泰馳は先程の智琉の言葉を思い出した。放出したエネルギーを自由自在に操れるレッド・ドラゴンの能力の事を。そのジャングルジムは智琉が泰馳に気付かれない様にレッド・ドラゴンのエネルギーで構築していたものであった。そしてその性質は鉄の様に硬いものではなく柔軟な伸縮性を持っていた。

泰「それも……お前のアンノウンのエネルギーなのか……?」

次の瞬間、砲弾を包んでいたエネルギーのジャングルジムが形状を戻そうと働き、その勢いはそのまま包んでいた砲弾をミスター・タンク目掛けて一直線に跳ね飛ばした。

泰「嘘だろ!?」

迫り来る砲弾に泰馳も流石に危機感を覚え即座にミスター・タンクの機動力で回避を試みた。が、泰馳の思惑とは裏腹にミスター・タンクは思う様に身動きが取れなかった。

泰「なっ……!?」

動けない理由が泰馳にはすぐに見て取れた。ミスター・タンクのキャタピラに地面から生え出ている黄色い縄の様なものが絡み付きその場にガッチリと固定されていたのだ。

泰「あ、あれもあいつの……!?」

泰馳はキャタピラを縛り動きを封じるその縄を破壊しようとしたが間に合わなかった。智琉によって撃ち返された砲弾がミスター・タンクに直撃し大爆発を起こした。

智「……目の前の脅威に注意を引き付ければ目の届かない落とし穴は見落とす。お前の持論通りだな」

智琉は先程上空から放ったがミスター・タンクに全て避けられたエネルギー弾を消さずにそのまま地中に留まらせていた。智琉の跳ね返した砲弾に泰馳の注意が集中した隙に地中のエネルギーを縄状に変化させミスター・タンクを地上に拘束したのだった。

智「突出した防御力を打ち破るには、突出した攻撃力をてがうのが最適解」

爆炎が晴れ智琉の目には、砲弾の直撃によって身体が半壊したミスター・タンクとそれに伴い地に両膝を着き苦痛を顔に浮かべる泰馳の姿があった。

泰「う……ぐっ……」

智「なんとかダメージを与えられたな。キツイのを」

歯を食いしばりながらも泰馳はその顔を智琉に向け続けた。

泰「お前……そのジャングルジムはお前の仕掛けか。誘導してたって訳か……」

泰馳は汗を流しながら力を振り絞って立ち上がった。

泰「自分自身を囮にするなんて危ねえ戦い方しやがる」

智「そう言われてもなあ。これは俺の得意な戦法だ。これで色んな奴に勝って来た」

それを聞いた泰馳は思わず笑いが溢れた。

泰「はっ、とことん危ねえ奴だなお前。長生き出来ねーぞ」

智「……そうだな。そうかもしれない」

泰「俺はまっぴらだね。まだまだこのどうしようも無え世界でやらねえといけない事が残ってんでなあ!」

そう言い放った後、泰馳はミスター・タンクの右腕の砲身の先を地面に突き刺すと勢いよく撃ち放った。その衝撃により公園一帯は濃密な土煙りが立ち込めた。

智「!?」

智琉はレッド・ドラゴンで土煙りを払い掻き消していったが、視界が開けた時には泰馳とミスター・タンクの姿は見当たらなかった。

智「…………逃げたか。まあこれであいつももうこの町には来ないだろうし、徹からの依頼は果たせたと思っていいかな……」

智琉はレッド・ドラゴンをカードに戻すと、戦いが終わりあちこちがボロボロになった公園を眺めた。そしてまた、智琉の心は再び言い知れない虚しさに包まれた。

智「…………また、変なもやもやだけが残った……」




とある廃墟。かつて大きな施設として機能してたであろう寂れた建物。その内部の大きな広間で十数名の若者達が互いに言葉を交わしていた。

瞬「泰馳から連絡があったぞ」

総「何て言ってる?」

瞬「調べてた土地はあんま適合出来そうにないってよ」

梓「やっぱそう簡単に適合する場所って見つからないんだね」

睦「俺ならきっとすぐに見つけられんぞ」

泰馳の動向を語る彼らこそ徹が話していた集団、マスターピースである。

瞬「それともう一つ……」

健「ん?」

瞬「そこでなんか妙な奴と出くわしたみたいだぞ」

俊「妙な奴?」

瞬「ああ、写真も添付されてる」

瞬太がその場の者達に見せた画面には智琉の姿が映し出されていた。

健「こいつカードを持ってんな。まさか……」

拓「この男に泰馳は滑稽な道化を演じさせられた、という事だな」

一「お前は一々そんな物言いしないとまともに喋れないのか?」

瞬「だがどうも拓巳の予想通りらしい」

健「……マジかよ」

睦「俺だったら絶対負けなかったな」

彼らの一連の話を聞いた一人の男は傍らに座する男に提唱を仰いだ。

文「どうします、じん?」

問われた男は顔色を変えず、落ち着いた声で言った。

迅「……泰馳の赴いた地に今最も近しい場所に潜伏する者はいるか?」

黎「なら幸大こうだいじゃない?確か泰馳が行ってた町からもそんなに距離の離れてない所にいた筈よ」

睦「それよりも俺が……」

瞬「だったな、その条件なら幸大が当てはまる」

迅は立ち上がりそれぞれに指示を与えた。

迅「文渡ふみと、幸大に連絡を渡せ。その男の写真と共に」

文「分かりました」

迅「総太そうた、泰馳が帰還次第お前のアンノウンで泰馳の記憶からその男の詳密を割り出せ」

総「りょーかい」

指示を下すと迅は部屋を後にした。

環「……なんだかすごくピリついてる。って思うのは私だけ?」

百「無理も無い筈。もう少しって所でいつも邪魔が入るのは迅にとっても面白い事じゃないんだろうし」

睦「おい、無視すんな!」

不安を漏らす声を文渡の啖呵が塞き止めた。

文「迅もこれ以上の停頓ていとんは望む所ではない。我々の目指すべき目的を掲げ導いてくれた迅の為にも、みな首尾良く事を進めてくれ」

その言葉にその場のみんなが口を閉じ表情を引き締めた。彼らの胸中にあるものは同じであった。




続く



《人物紹介》

上褄かみづま じん

身長177cm 20歳

嫌いなもの:ひび割れた鏡


天楼院てんろういん 文渡ふみと

身長169cm 18歳

嫌いなもの:理解の遅い人間


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