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異形魅了のUNKNOWN season.2  作者: ヨシアキ
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1-2話




智「つまり、保安局ですら手を出せない奴らの相手を俺に任せるつもりなのか?」

智琉は自分の今の状況を整理した。

徹「あの保安局が関わろうとしない以上、俺達みたいな自警団も連中への対応にはちっと決断を下しずらくてな。今んとこは不干渉を貫いてる状態だが、如何いかんせんこのままって訳にもいかないんだよ。何かしらの手を講じないとな」

智「俺にならそれが出来ると?」

徹「信用に足ると信じてるつもりではいるぞ」

笑顔を向ける徹に対して、智琉は表情は腑に落ちないと言ったものだった。

智「……何でマスターピースはそんな行動を繰り返すんだろう?何か重要な目的があるのか?」

徹「そんな事考えてどうなる?今の話だけでも連中に情を向けられる要素なんか無かっただろ?」

智琉の素朴な疑問を徹は冷たくあしらった。

智「……でも、何かしらの理由はある筈だ」

徹「理由?」

智「上手く言えないけど、こう……、決して曲げられない、諦める事の許されない何かが……みたいな」

智琉のアバウトな表現に呆れつつも徹は智琉が言いたい事を泰まかに把握した。

徹「……そうだろな。けど、お前さんが今それを悩む理由も必要も無い」

智「?」

徹「連中にも自分達の信じる正義だってあるだろうが、そんなもんを気にかけれる程お前さんはまだ達観しちゃいない。み合う両者にそれぞれの正義があるなんて子供の立場で理解するのは容易い事じゃないんだよ」

智琉は無性に癪に感じながらもその言葉を渋々受け入れた。

智「…………そいつの名前と居場所は?」




徹から聞き出した場所に向かう最中、智琉の頭はそのマスターピースという組織の行動目的に関する疑問で溢れていた。

智 (その男に俺が敵うかどうかも分からないが、それよりも俺が知りたいのはマスターピースの起こす行動の理由だ)

徹の話を聞いて尚、智琉は戦うという選択肢に疑問を抱いていた。

智 (もしマスターピースがこの世界に不満があっての行動だとすれば、それってどこかあいつと似たものがあるのかも……)

智琉はある一人の人間の言葉が脳裏を駆け巡った。強大な存在としてかつて自分達の前に立ち塞がったあの男の言葉が。


“お前達が考えている程、人命とは尊ばれてはいない。無抵抗に等しい弱者を何食わぬ顔で踏み荒らす輩が混在するのがこの世界だ”


約一年前、衆治達と共に打倒する事の出来た相手。晴斗を倒したあの日から智琉は自分の心に妙な引っ掛かりがある様な気がしてならなかった。そしてその葛藤はそれ以降の戦いでも続いた。倒す相手と認識した者と対峙しそれに勝利していく程に智琉は言い知れない虚しさを感じていた。

智 (俺は今まで相手を倒す事しかしてこなかったけど、それが本当に正しいのか?)

拭い切れない不安を智琉は無理矢理心の奥へとしまい込んだ。




目的の場所に着いた智琉は辺りを見渡した。平日で人気の無い公園、遊具はそれほど豊富ではなくどこか寂れた雰囲気が漂っていた。殺風景な公園を見回すが人影は見えなかった。

智 (見る限りどこにも……)

?「何だ、お前?」

突然背後から聞こえた声に智琉は振り向いた。そこには自分と歳の近い男がこちらを睨んでいた。

智「……お前が泰馳たいちか?」

泰「何だ?この町の奴か?」

自分の名前を口にした智琉に対し、泰馳は警戒よりも興味が勝った。

智「そうじゃないが無関係って訳でもない。お前をどうにかしてくれとは言われたが、しなくていいのなら極力荒っぽい事はしたくない。大人しくこの町から出て行ってくれるか?」

智琉は一応の忠告を行なったがあまり期待はしていなかった。しかし、泰馳の口からは意外な言葉が出た。

泰「へえへえ、お望み通りに」

智「!」

智琉はその言葉に呆気に取られた。

泰「何だよ?不満か?」

智「いや、そんな簡単に受け入れるなんて思わなくて」

泰馳は小さな溜め息をついた。

泰「ここに来たのはちっと調べもんしてただけだ、俺達にとって都合が良いかどうか。その結果もあんまかんばしくなかったんで結局この地にゃもう用は無いんだよ。じゃあな」

そう言うと泰馳は振り返り智琉に背を向けて立ち去ろうとした。

智「…………待て」

泰「……ん?」

智琉は無意識に泰馳を呼び止めてしまった。それは智琉自身の内にある疑問からの行動であったのかもしれない。

智「マスターピースってのはお前達の事なのか?」

泰馳は智琉の姿を凝視すると少しだけ顔に笑みを浮かべた。

泰「……随分色んな所に名前が知れてんだな。何もかもじんの思惑通りって訳か……。お察しの通り、俺達がそのマスターピースだ。嬉しいか?」

飄々と揺さぶる泰馳のペースに乗せられないよう、智琉は冷静さを保った。

智「お前達の事はある奴からさっき色々聞かせて貰った」

泰「さっきって……」

泰馳は思わず失笑し吹き出した。

智「お前達の目的は何だ?」

泰「……あ?」

智「お前達マスターピースがこれまでしてきた事は説明されて聞いた。お前達のしている事は俺にとっては非道な行為としか思えない。仮に重大な目的があったとして、それは誰か生活を壊してまで達成したい事なのか?」

自身の要求を飲んだ泰馳の反応を見て智琉は言葉を使って訴えようとしたが、智琉の話を聞いていく内にそれまで泰馳の表情にあった笑顔は消え去った。

泰「……知った様な口きくなよ。俺達の事を昨日今日知った奴が偉そうに説教か?」

眼光鋭く睨みつける泰馳の目は明らかに智琉への敵意が込もっていた。

智「そういう訳じゃない。ただ俺はお前達に何の理由があって危害を加える様な事をするのかを……」

泰「お前に言ったって分かんねえよ。俺達の決意はそこら辺の連中が仲良しこよしでやってるごっこ遊びとは訳が違えんだよ!」

啖呵を切りながら泰馳は手にカードを具現化させた。

智「!」

泰「どうせこいつが目的だったんだろ?出せよ、お前のカードを」

泰馳の呼び掛けに智琉もカードを具現化した。

智「……結局こうなるか。なら仕方ない」




続く



《人物紹介》

狩羽かるば 泰馳たいち

身長165cm 15歳

嫌いなもの:魚の小骨


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