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新国家戦略2

憲法9条改正の是非を問う記者会見から数時間前、同日正午過ぎ。

国家戦略室の平良は、部下の一人である梶原から渡された「新国家戦略」と題された資料を読んでいた。

資料を読み進めていくうちにある一節で目が留まる。

平良は梶原を見据えながら静かに問いかける。


「君は本当にこれを総理に提出するというのかね?」


「そのつもりです。」


梶原は即答する。


「君は日本に侵略国家になれというのか!」


平良から怒号が飛ぶが梶原は怯まず告げる。


「侵略国家ではありません。解放国家としての日本です。」


梶原は続ける。


「この時代、ヨーロッパは労働力としての奴隷の入手先としてアフリカ、南米、アジアで植民地を作り搾取しております、すでに北米の一部でもそのような行為が行われていることしょう。それら植民地のうち、東南アジアにある国々を解放していき、EUのような経済、軍事、両方面の協力をもって中国の台頭を阻止しようという試みです。」


「結果としてヨーロッパ各国はそれを日本による侵略と呼ぶ!そうなったとき、日本は世界を敵に回すことになるのだぞ!国民がそのようなことを許すと思っているのか!」


「私は!」


今まで落ち着いた声で話していた梶原が初めて声を大にして話す。


「私は妻と子を中国に殺され、私自身も殺されました!ゆえに2042年を念頭に置いて指針を作成しました!東京爆撃の折にたまたま首相官邸に赴いていて助かったあなたとは違う!」


憎悪の色を隠そうともしない梶原の姿がそこにはあった。


「今回は奇跡が起きたおかげで何事もおきなかったことになりましたが、私は、私自身の家族も、未来の国民も同じような目に合わせるつもりはありません。」


梶原の気迫に押された平良はその場で何も言い返せなくなってしまった。

ただでさえ異常事態であったため、他の職員も対応に追われ、仕事が詰まっている。

ゆえに比較的手が空いていた梶原に丸投げする形で任せた自分にも落ち度がある。

そう考えている平良を他所に梶原は提出に向かう。

本来なら自分がそれを提出することになっている。

だがいまだに梶原の気迫に当てられ身動きが取れずにいた。




「ふぅ・・・」


藤原は私室の椅子に座り深いため息をつく。

昨夜の会見から一夜明け、手元の「新国家戦略」と書かれた資料が数枚握られている。

すでに転移から3日が経過し、日本国土上での脅威は確認できないとして、戒厳令の解除を行う旨を早朝に発している。


日本単独で転移してしまったため、GAFAなど海外の企業が提供するサービス、それに準ずるサービスを提供できる企業も新たに育成しなければならない。

幸いなことに日本支社を立ち上げ、日本所在のサーバーに日本用サービスとしてのWebサイトを立ち上げているところも多い。

しかし、日本のサーバにサービスが存在しない人気のサービスは一からの構築になるため、時間がかかるであろう。


また、軍事用の静止衛星同様、アメリカと共同管理していたGPS用衛星が1基消失していることも分かっている。

自動運転が無効になっていたのはこの辺りが原因であろう。


GPS測位用衛星1基ではどうしても誤差範囲が20センチほど発生してしまう。そのため、誤差範囲を4、5センチ単位にするために、日本は日米共同管理の分も含めて4基で運用していた。

そのうちの1基が連絡が取れなくなったため、システムがエラー判定を起こし、自動運転が無効になっているらしい。

こちらに関しては誤差範囲を1センチほどに収めるために以前から追加で1基打ち上げることがすでに決まっていた。

しかし、中国が侵攻してきたため、打ち上げが行えずに延期になっていたのだ。そのため、すでに完成している1基を早いうちに打ち上げれば問題ないだろう。


ほかにも国内のエネルギー事情や、工業製品以外の輸出品の策定など、決めることが山積みである。


「ふぅ・・・」


藤原は再び深いため息をつく。

思考を打ち切り、TVに目をやると、昨夜の会見の様子が映し出されている。

憲法9条改正の是非について、アナウンサーとコメンテーターが様々な議論をおこなっているが、政権に批判的な論調であることは変わりがない。

軍靴の音が聞こえる。

日本は侵略の歴史を繰り返すのか。


そして、場面が切り替わり道行く人たちへのコメントを求める場面になる。

戒厳令が解かれ、久しぶりの外出が可能になったせいか町には人が溢れている。

撮影スタッフが道行く人々にコメントを求める。


「僕は賛成ですね。僕自身中国に殺されていますし、あんな思いは二度とごめんです、子供たちにもまた怖い思いはさせたくないですし。」


「私は反対です。このような弱肉強食の時代にこそ、世界の手本として憲法9条を堅持し、その素晴らしさを世界に知らしめていくべきです。」


それぞれが思い思いのコメントをしていく。


藤原はTVを消し、手元の資料に再び目を向ける。

その資料の一節にはこのように書かれていた。


「武力を伴う植民地解放によって、大東亜共栄圏を実現し、2042年の中国に備える。」


言いたいことはわかるがさすがに過激が過ぎる。

国家戦略室には再度別の国家戦略の提出を求めているが、どうなるかわからない。

この時代から再び現代へ戻れる保証がない以上、武力により侵略される危険性もやはり高いのだ。

自衛隊の戦力であれば問題なく退けることが可能であるが、今現在の法律上、民間人に被害が出てからしか動けないのである。

それゆえ、今の自衛隊では民間の被害を0にして防衛戦争を行うことができない。

何より自衛隊の権限が今のままでは外交官に付き添わせるのですら難しいのである。


藤原は再び資料を見ながら、今後の可能性と今取りうる対策を考えていく。


今更ですが、二つある日本の呼び方をどう分けるべきか思案中。

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[一言] GPS1基で測位できてて草
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