新たな情報と情報整理
禅話の続きになります。
「以上の確認した事象から、日本は国土単位で過去、または文明が衰退するほどの未来へタイムスリップした可能性が浮上しております。」
何を馬鹿なことを・・・通常時であればそう断言して、大騒ぎしていた内閣府及び総理を笑い飛ばしていただろう。国会会期であれば、野党が政権を批判する材料にされてもいただろう。
「また、今回の事象発生に伴う市民の混乱は元々対中国戦争時として発令されておりました戒厳令により、極限定的であると思われます。今現在で内閣府及び緊急対策室が把握している情報は以上となります。お集りの皆さんの中で発表された以外の情報をお持ちの方はいらっしゃいませんか?」
進行役が告げた後、一人の大臣が手を上げる。農林水産大臣の村上である。
「すまないが発言いいかな?」
村上の発言に進行役が次の発言を促す意味で首を縦に振る。
「私のところに上がってきた報告があるのだが、ほら、私が懇意にしている。〇〇〇〇県の知事がいるだろ?あそこの〇〇〇〇市の大きな会社に大規模な農業を行っている会社があるんだが、そこが雇っていた外国人技能実習生と連絡がつかないらしい。」
「村上さん、本当ですか?」
驚いた藤原が聞き返す。
「聞いた話だと、今朝の地震の後、会社の各部署の責任者が、安否確認のために連絡を取ったらしいんだ。だが、相手の反応がない。あの地震の後だ、家具の下敷きなどになっている可能性もあったので技能実習生用の寮の各部屋をマスターキーで開けて安否確認を行ったそうだ。だが、開けてみてびっくり、どの部屋も中はきれいさっぱりからっぽだったそうだ。まるで最初から誰もいなかったように。」
村上の発言で藤原が慌てる。
「河内さん、今すぐ全国の外国人労働者の安否確認を行わせるように各自治体に通達をお願いします。」
問題の追加に藤原はまたも頭を抱える。各分野で機械化が進んでいるとはいえ、今や日本の労働力における外国人の割合は300万を超える。国外から連れてきた家族なども含めれば更に数が増える。それらが一斉にいなくなった可能性。それは日本の経済活動が崩壊する可能性でもあった。
「私も発言いいかな?」
そう口を開いたのは国土交通省の宇多大臣だった。
「私のところへ届いている報告は、謎の復元現象で元に戻った町の中でも、建物の復元もなく、瓦礫もなにもないぽっかりと空いた土地があるっていう報告だったんだが、地方の職員に調べてもらったところ、復元で戻ってきた町以外の戦争の影響が少なかった東北以北、その中でも北海道でも特に広い範囲でそのような現象が起こっているっていうことがわかっているということと、あと一つ。海外輸出用のタンカーで、輸送中に戦争が始まってしまったせいで、外国の寄港地で待機状態であったはずのタンカー及びその乗組員が地震の後に日本国内で確認されたっていうことだ。」
また奇妙な情報が上がってきた。
「土地について今も調べさせているのだが、今現在の共通項目として、全部地権者が外国籍だったことがわかっている程度だ。」
宇多の情報報告が終わると同時に防衛大臣の清和が手を上げる。
「宇多大臣の情報と多分関連があると思われる情報が入っております。こちらに入った情報ですと、”元在日米軍基地”があった土地で同様の現象が起こっているとの報告がありました。すでに在日米軍はすべて撤収した後でありますが、情報を精査したところ、元在日米軍基地で建物の無事が確認された場所は、すでに日本に返還の処置が行われているところ、建物や滑走路、港湾施設が消滅しているところは、撤退後、まだ日本への返還の処置がされていなかったところと判明しております。」
清和の発言でほぼ確定となった事象がある。タイムスリップしたのは日本または日本国籍を有した人間、及びそれに所有権があると関連付けられた物品であるということである。
現代国家は経済のつながりや輸出入など、一つの国家のみで生存することは難しい。
第二次世界大戦後、日本は良くも悪くも諸外国とのつながりをもって発展してきた。しかし、今の状況で日本がすぐ元の時代に戻れるのか、戻れないのかすら定かではない。タイムパラドックスの可能性も考えなければならないが、日本が、日本国民が生きていくには、日本国外に目を向ける必要がある。
会合の進行役が他に新しい情報がないのを確認して、緊急会合は終了する。
藤原は、国家戦略の練り直しを緊急対策室及び国家戦略室に指示する。また、外務省、防衛省への外国への接し方の変更が必要かどうかの調査を依頼する。
仮に弱肉強食の時代であった場合、戦後日本のように腰の低い対応は逆に日本に被害をだしかねない。
また、第二次世界大戦時を引き合いに出しても、いくら強力な兵器を有していても、それらの威力、能力を知らない他国からすると、数字の上では日本は陸上戦力、海上戦力ともに桁が二つ以上は下になるのだ。
思考を巡らせる藤原であったが、河内が傍に来て告げる。
「総理、現状を踏まえてとりあえずの緊急記者会見を行った方がよろしいかと。」
誤字脱字報告や感想待っています。




