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信長の野望・異説 長篠の戦5

多数の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

今回は武田視点が少し入っています。

5月13日 武田本陣にて


その日、武田勝頼は苛立っていた。

ここ数日、誰のものとも知れぬ視線を感じることが多いからである。

自身が武田の頭首という身分であるため、最初の頃は護衛についている者の誰かの視線であろうと考えていた。

しかし、直ぐに周りの兵士によるものではないと考えるようになる。

寺の建物に入った時にはその視線は感じられないためである。

どこから見られているともわからぬ不気味さを感じながらも大勢の家臣、兵が近くにいるため、不安を口にするわけにもいかず、しばらくの間は本陣にて普通に振舞うのであるが、やがてその異様な状況は彼の精神的な負担となって積み重なっていく。

不快な視線を感じるようになってから数日後、その日も武田勝頼は普通に寝床についたのだが、その日は夢を見た。

夢の中には葦の精と名乗る老人がでてきて、今回の戦に関して武田勝頼を諫めるための話を始める。

老人の話ではこの戦いを続けるのであれば最悪の場合、武田は滅ぶであろう。

降伏か撤退をした方がよいというのである。

その話を聞いていた武田勝頼は突然笑い声を上げたかと思うと腰の刀に手をかける。


「ここ数日の視線の正体は貴様であったか!」


そう声を荒げ刀を抜き、老人目掛けて一刀を振り下ろす。

振り降ろされた刀は老人の片腕を落とし、それと同時に老人の姿は霧散して消えてしまう。

その刹那、武田勝頼の意識は覚醒する。

葦の精となのる老人は武田勝頼の精神的な負担により現れた幻であったのか、寺に存在していた真の精であったのか、それを知るすべはない。



5月14日 巳の刻 武田本陣


今は緊急の評定が行われている。

事の発端は、今朝方に歩哨として寝ずの番をしていた複数の者が見つけた紙にある。

紙には現在、我が武田の軍勢が徳川領に属する城に対して攻撃を行っていることへの抗議と思われる文章と共に、本日、日没までに恭順の意を表す、または撤退する意思を表し、または撤退行動を取れば問題にしないこと。

期限までにそれらの意思がみられない場合は攻撃を開始することとする内容を含めた条文が織田信長の花押を添えられて記載されている。

降伏を促す文章や停戦を呼びかける書状自体は稀にやり取りが行われることがあるが、問題はこの文章が使者の手によりもたらされたものではないということ、武田の軍勢内の広範囲で相当数発見されていることである。

この文章が記された紙を発見した者の中の数人ほどではあるが、これらの紙は夜が明ける前頃に空から降ってきたようだという証言をしている者もいる。

この不可思議な現象についても話し合わなければならないが、とりあえずは文章の通り撤退するか、家臣の間でも意見が分かれているところである。


「織田の軍勢がこの戦で出てくるのであれば数の上で不利になるやもしれません。ここは一度撤退を行い、体制を整えるべきであると具申致します。」


家臣の山県昌景はそう発言する。

彼をはじめ、馬場信春、内藤昌秀など、信玄の代から長く武田を支えてきた者を中心に戦を切り上げて撤退するべきと主張している。

対して戦を続行すべきと論じるのは長坂光堅や跡部勝資など、普段より勝頼と仲が良いとされる者を中心にした戦の継続を訴える者たちである。

彼らは反論する。


「素破衆の報告では織田は岐阜を出たばかりで未だに岡崎にすら到着していないという報告ではないか!奴等が到着する前に城を落としてしまえばいいだけの話!このまま戦は継続するべきだ!」


「織田の軍勢だけが問題なのではない!」


内藤昌豊はそう発言する。

視線の先には集めさせた紙が積み上げられている。


「これらの文章が空から降ってきたという話は信用できないが、突然現れたこともまた事実、そうなれば、誰が、いつ、どこでこれらを撒いたかということだ。陣に突然現れたということは、陣内に内通者がいる可能性もある。」


そのように皆に聞こえるように発言する。

だが、皆、自分には身に覚えがない上に、自分の預かる兵士の中からそのような不届き者が出たとなれば、自分にも責任が降りかかりかねないため、否定する。

それからしばらくの間は互いに腹の探り合いのような会話が続く。

勝頼はそれらの意見に耳を傾けながら昨夜の夢のことを思い出していた。


(昨夜の夢はこのような意味であったか。)


細かい部分は違うが、昨夜の夢の中の話と重なる部分がある。

勝頼は、昨夜の夢の中で老人が告げた降伏、撤退という部分の言葉を思い出し、手元の文章を改めて読む。

もしかしたらあの老人が不思議な力を使って未だに警告しているのではないかとすら思える。

しかし、夢の中の出来事とはいえ、自分はすでに老人を切り捨て、戦う覚悟を決めている。

そう思い出し、皆に向けて勝頼は言い放つ。


「皆の者、よく聞け。我らは降伏はもちろんのこと、撤退もせぬ。織田が数を持って我らの道を阻むのならば、武田の騎馬隊にて打ち崩すのみである。」


そして、評定を打ち切り、指示を出す。


「長篠城へはこのまま攻撃を続ける。織田がどのような道を通るのか素破衆に見張らせろ。まずは奴らがどう動くのか見定める。」


勝頼のその言葉で戦の継続が決定することとなる。




5月14日 18時を過ぎ 護衛艦「かが」内陸自司令部


もうそろそろ日没の時間であるが、武田の軍勢が撤退する様子はない。


「午前中に武田の武将と思わしき方々と話し合いに入ったみたいでしたからもしかしたらと思いましたが駄目でしたか。待機させている部隊に伝達を、予定のポイントまで移動を開始させてください。移動が完了したら予定時刻までその場で待機。」


新田は武田に撤退の意思がないと判断を行い、作戦行動に入るための指示を始めるのであった。

次の投稿までは少し間が空くかもしれません。

申し訳ありません。

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