岐阜会談4
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今回で話し合いは終了予定です。
連絡を終わらせ、橘は元の広間に戻る。
襖を開けると談笑する信長と和泉の姿が目に入る。
「私が席を外している間に随分話が弾んでいるみたいじゃないですか。」
そういい、橘は元の場所に座る。
「橘殿、今、和泉殿とも話をしていましたが、そなたらの時代の日本は随分と発展しているらしいな。」
「そうですね。和泉がどういう話をしたのか存じませんが、人口、技術、文化、ともに世界に誇れるものであったのは確かです。それと、信長様、本国の藤原総理に連絡致しましたところ、次の戦に備えての軍事支援の話、前向きに検討していただけるという話でした。ただし、我が国の自衛隊と呼んでいる部隊を、徳川領内の海岸に上陸させる許可及び、徳川領内での移動の許可を頂けたら、という話でしたが。」
「そうであるか。それならば早いうちに徳川に確認することにしよう。」
その後、いくつかの確認事項のやり取りや、尾張に港を整備することの許可、フリントロック式銃の扱い方の説明、試射を行い、今回の話し合いは終了する。
「今回のこちらからの要望、及び確認は以上となります。そちらからの要望は先程の自衛隊派遣の件以外に何かございますか?」
「こちらからも先の件以外には特にない。」
「承知しました。それでは、最後にこれを」
そういい、橘は無線機を取り出す。
「こちら、無線機といいまして、遠くの人間とやり取りするときに使用する道具となります。」
もう一つの無線機を取り出し、使い方を説明しながら実際にやり取りを行う。
「私達はしばらく尾張沖の船にいますので、徳川領内での活動の許可が取れましたらそちらでご連絡ください。」
そう伝え、話し合いは終了した。
橘達は来た時と同じように馬に乗り帰路につく。
1時間ほど馬を走らせた後、「かが」に連絡を入れ輸送ヘリで船へと戻るとやっと一息つくことができた。
「まさかあんなにあっさりと未来の人間ということを信じてもらえるとは。せっかく用意した資料も無駄になっちゃいましたね。」
そういい、机の上に戦国時代を中心とした書籍を置いて語りだす。
「私はそれを提示する必要がなくて安心しました。あと7年で信長公が信頼していた家臣に謀反を起されて死ぬ。脇に控えていた家臣の中に明智光秀でもいようものなら、その場で血の雨が降っていた可能性もありますし、光秀が謀反を企てる切っ掛けは現在でも明らかになっておりません。本人からしたら全く心あたりがない状態で斬られることになったかもしれませんからね。」
「しかし、完全な秘密にしておくことも難しいですよ?ある程度の身分の人が対象とは言え、国交が開かれて人の行き来が始まればどこかのタイミングで伝わってしまうでしょうし。」
「そうなると信長公が初来日したタイミングで我々が辿ってきた歴史を説明する過程でお知らせすることがベストでしょうか?」
「そのあたりは担当になった部署の人たちが考える事でしょう。とりあえず、私はあの後決まったことも含めて報告してきます。」
そういい、橘は話を打ち切る。
先に報告した内容と徳川の許可待ちなこと、尾張に港の整備許可が下りたことを説明した後、自室で休息をとるのであった。
橘達が岐阜城を経ってからそれほど時間を置くこともなく、信長は広間にいた家臣たちを集め、各々の意見を聞くための場を設ける。
「信忠、あ奴らが儂が言っていた者たちじゃ、まさか未来の日本の奴らだとは思いもよらなかったが。」
「あ奴らが我らより技術が上なのは銃やその無線という絡繰りで理解はできます。しかし、本当に我らが気をつけねばならぬ程の相手なのですか?未来の日本というのも本当なのか疑問が残ります。」
「信忠を含め皆の者は尾張沖にいる巨大な船や空を飛ぶ絡繰りを見てはいないであろうが、あれらを見た儂はそこに嘘偽りがないと考えておる。あれらに戦用の物は確実に存在しているとも考えている。それに、この無線機というもの、これだけでも戦を一変させるだけの価値がある。どうしてかわかるか?サル」
話を振られたサルこと秀吉は少し考えるそぶりを見せた後答える。
「時間の誤差なく戦況を把握してやり取りできるようになるからでしょうか?」
「そうだ。今までは伝令が状況を伝えるために行き来し、戦況が変われば報告と状況が相違していることもたくさんあった。しかし、これがあれば、その場でやり取りができ遠くからでも適切な指示ができるようになる。」
手元の無線機を信長は見る。
「これに限らず、他にも我らが知らないいろいろと便利なものを持っているであろう。現にあ奴らが持参したふりんとろっく式銃とやらも50年から100年ほどで日本に入ってくるという。400年以上先に進んでいる日本にあれ以上の銃が存在していてもおかしくない。今回の戦についての支援も我らの兵の損失を一兵でも減らすために要請しただけに過ぎん。」
周りを見回し、信長は言う。
「あ奴らが友好的であるうちは我らもそれを利用し、日ノ本を統べる一族へ上り詰める。そのためにも信忠、お前にも相手のことをきちんと認識してもらう必要があると考え、急遽呼び寄せたのだ。戦国の世の習わし故、儂もいつどこでどのようになるかわからなぬ。あの国との付き合い方、間違えるでないぞ?」
信長は決意をした目で信忠を見つめる。
「心得ましております。父上。」
信忠の返事を最後に話し合いは終了し、解散することになる。
信長の胸には改めて日本を統一するという野望の火が燃え盛るのであった。
次回からちょっとの間徳川描写がはいるかもしれません。
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