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接触4

外交交渉の場に着くまでもうちょっとかかりそうですが、お付き合いいただければ幸いです。

握手が一般に広がったのは幕末からだそうです。

尾張沖に夕日を浴びて佇む灰色の巨大船を確認し、しばらく呆けたように見ていた信長であったが、ふと我に返ると日が落ち始め、あたりが暗くなり始めていることに気づく。

話し合いの意志がある場合は旗印を海岸に掲げろ。

その様に言われているというのを思い出し、信長は供の者に旗印を掲げさせる。

しかし何も反応がない。

報告では海岸まで届く大きな声でこちらへ呼び掛けたというが・・・あたりが暗くなりだしているため確認できなかった可能性を考え、明日、日が昇ってから仕切り直すべきかと考えていたところ、件の船から光を放つ何かが奇妙な音を立てて向かってきている。

やがてそれが放つ光と音は時間とともに強くなり、我々の目の前につく頃には目も眩むような強い光とバタバタという大きな音を出し、更には叩きつけるような強烈な風を巻き起こしていた。

昼間から増え続ける野次馬が何やらざわついているがそれどころではない。

あれは明らかに空を飛んできた。

空を飛ぶのは鳥、虫以外で見たことがない。

信長が驚いていると突然声が鳴り響く。


「着地の邪魔になりますので間を少し開けてください。」


声に促され海岸に集まっていた野次馬が距離を置き始めある程度の空間ができると、それはゆっくりと降りてきた。

やがて地面にしっかりと着地した後、その物体の横が開き、人が下りてくる。

この時信長は理解した。

これは人を乗せて空を飛ぶ絡繰りであると。


「呼びかけに応じて頂き、ありがとうございます。」


みたこともない服装の男女とそれとはまた別のみたこともない服装の男数名がそこには立っていた。




織田家の関係者と思われる馬に乗った侍風の男二人が海岸から姿を消した後、橘達は「護衛艦かが」最終確認をしながらも軽く雑談をしていた。


「さすがに今から報告に向かったなら、馬だと清州まで20分、岐阜だと1時間位でしょうか?」


「出陣していたなら場所によってはそれなりにかかるんじゃないでしょうか?」


「どちらにしろ、報告してもすぐにはどうするか決まらないと思いますよ、相手も話し合いや対策を講じるだけの時間も必要でしょうし」


「あとは今回の接触は、友好国の確保とは別に、歴史そのものへの干渉とその影響に関しての調査も兼ねてますからね。」


「先日できたあの調査室でどのような結果に結果になるか?というやつですか?」


「教科書から歴史書、年代が確定してる中世以降の書物で転移してきた日本の名前、またはそれらしき名前が出現するか調べるって言ってましたね。」


「それですね。その結果によって、今の時代が僕らがいた時代に続く連続した歴史の一部なのか?影響を及ぼさない、いわゆるパラレルワールドなのか?というのを判断するということでした。」


「SF映画だと歴史が変わった瞬間未来の人間の意識も切り替わったりするパターンもあるんですがね。」


「今の段階で日本は昔から一つっていう認識のままですし、それに関しては大丈夫じゃないですか?」


そこからしばしの時が流れる。

やがて夕日が差し込むようになり、時計はもうすぐ17時になろうとしていた。


「さすがに今日すぐの返事は無理でしたか。」


21世紀の地球とは違い、この時代は日が落ちれば真っ暗である。

今日はもう来ないであろうと思っていた所で監視をしていた自衛隊員の一人から連絡が入る。


「海岸に新たに馬に乗った数人の集団が現れました。」


橘と和泉が即座に反応し、すぐ動けるように身構える。


「かなり早いですが目的の織田からの使者でしょうか?」


「わかりません。時間としては監視の交代要員の可能性もありますが。」


程なくして、追加で連絡が入る。


「さきほど現れた集団の一人が旗印を海岸に掲げました。我々が知る織田の家紋が入っています。」


現状を認識した橘達が待機させていた輸送ヘリへ向かい、乗り込む。

甲板から離陸した輸送ヘリはそのまま海岸へ向かうが、海岸は野次馬がそれなりに集まっているため、ヘリを着陸させるだけのスペースが見当たらない。

輸送ヘリを運転している自衛隊員がヘリに備え付けられている拡声器で注意を促すと野次馬は次第に距離を取り始める。

やがて十分なスペースが確保できたのを確認したのでヘリは着陸態勢を取り、少しずつ降下していく。


「さて、和泉さん、行きましょうか。」


ヘリが着地したのを確認し、橘はドアをスライドさせて、尾張の海岸に降り立つ。

それに引き続き和泉や護衛の自衛隊員達も橘の傍に立ち並ぶ。


「呼びかけに応じて頂き、ありがとうございます。」


武士と思われる一団の中から身なりや周囲の反応などを頼りに一番身分が上と思われる者に声をかけ、手を差し出す。

しかし、反応がない。

和泉が近寄ってきて小さな声で告げる。


「橘さん、握手の習慣は幕末からです。ここはお辞儀ですよ。」


和泉の助言を聞き、橘は内心やらかしてしまったと思うが何食わぬ顔で続ける。


「失礼しました。」


橘は手を引っ込めると頭を下げ、最敬礼の角度をとる。

それに対し、相手がお辞儀を返す。

やがて居住まいを正し、橘は告げる。


「今回の交渉の責任者を務めることになります。橘と申します。お見知りおきを」


それに対して相手が返す。


「織田信長である。」


橘は予想外の事態に一瞬硬直するが、すぐに冷静に戻り対処する。


「信長様直々にお越し頂きありがとうございます。話し合いに応じて頂けるという話なのですが、残念ながら、もうすぐ日も落ちてしまいます。明日以降に改めて話し合いの場を持てればと考えているのですが、いつのご都合がよろしいでしょうか?」


周りの供と思われる者たちが若干ざわつくが信長が制するとおとなしくなる。

相手が少し考える様子を見せるがすぐに返答が来た。


「明日の巳の刻頃にこの海岸へ使いを出す。」


「わかりました。それでは、また明日お会いしましょう」


こうしてファーストコンタクトは無事に終わり、橘達は再びヘリに乗り、護衛官かがに帰艦するのであった。

この時期の信長の官位を調べたところ、参議という官位ということでしたが、「織田参議信長」と個人的には締まらない気がしたので普通に「織田信長」と名乗らせています。

上総ノ介と尾張之守は自称だそうですし、第六天魔王は本人は名乗ったこともないらしく、ルイス・フロイスが本国に送った報告書に記載があった信長表すための言葉として出るのみらしいです。

他にも1,2回しか使わなかった自称としては「藤原信長」や「平信長」があるらしいですよ?

ご意見ご感想、誤字脱字報告お待ちしております。

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