表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

茶竜、現る

暗い城内に立ち竦んでいると、近くで地鳴りが聞こえた。地面が小刻みに揺れている。フォリンもガタガタと震え始めた。

「フォリン! ナタリアとエデン様を連れて外に出なさい」

 祖母が叫んだ瞬間。城の壁に大きな穴が開いた。フォリンはすぐに大きくなり、私たちを背中に乗せる。外の明りで見えたのは、大きな茶竜の顔だった。侵入してきたそれに乗っているのは黒いマントの男。

「お兄ちゃん……」

 私は肩を揺すられてはっとした。

「大丈夫か?」

 後ろに乗っているエデンさんは私の瞳を見ていた。フォリンはいつも以上に速く飛び、暗い城の廊下を進む。茶竜は建物を破壊しながら追跡してきていた。壁にいくつもの絵画が見えては流れていく。人の気配がまるでしない、と思った。お母さんは本当にここにいるのだろうか。後方の茶竜は建物内を思いのままに飛行していた。やがて廊下の突き当りまで私たちは追い詰められてしまう。フォリンの首に手を伸ばし、かろうじて私たちを乗せられるくらいにまで体を縮めると、窓を破って外へ出た。彼はすぐに大きく翼を広げる。続けて茶竜は建物の壁ごと外に飛び出した。振り返ると同時に壊れた壁の下に人らしきものが見え、息をのんだ。とはいえ、目の前まで茶竜の爪は迫ってきている。

「フォリン」

 私の声に少し首を持ち上げる。

「あの湖まで行って」

「グおん!」

 今までで一番速く飛んだ。エデンさんと私は必死にしがみつく。上空へ行くと茶竜も男もついてきているのが見えた。私は湖を下に確認するとエデンさんを振り返った。

「エデンさん。お願いしたいことがあるの」

 彼は何も言わずにうなずく。

「地下から城へ戻って、城の地下にいる人たちを助けてほしいの」

「君を一人になんて出来ないよ」

 彼が承諾してくれるはずもなかった。けれど……

「さっき崩れた壁の下に人が見えたの。いざ全員助けるってなったら、向こうの方が人手が足りなくなるでしょう?」

 昔、意外と頑固なところがあると彼に言われた。ここで発揮しなくてどうする。私の勘は意外と当たるのだから。

「わかった」

 エデンさんは、苦々しい顔をしてうなずいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ