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空中散歩

 私が寝坊してしまった翌日。

「もう体は大丈夫なの?」

「はい、母上。ご心配おかけしました」

 エデンさんの後ろで私は待機していた。お妃様はまだ不安そうな表情で彼を見ている。

「調合師さん、彼もう外へ出ても大丈夫なのかしら」

「はい、問題ございません。それに、私も同伴いたしますので」

「そう」

 止めても無駄ねと言って彼の頭をなでる。エデンさんと私はこっそりフォリンも連れて、城の外に出た。

「フォリン! 思い切り高く飛んで!」

 強く風を切り黒竜は空を舞う。もちろんエデンさんも一緒だ。下を見ると遠くの町まで見えていた。森を重点的に観察するが、あの山小屋らしき場所は、そう簡単には見つからなかった。

 こうした「散歩」を装い山小屋を探す生活は実に一か月続いた。

「エデンさん、ずっと言ってなかったことがあるの」

 上空でふいに思い出したことを口にする。アイスグリーンの目。白い日傘。力強く細い腕。素早い身のこなし。覚えていることをすべて打ち明けた。そして、彼女が口を滑らせたであろう奥森について。

「僕も、一度は行く必要があると考えていたんだ」

「私、行って確かめたいの。奥森がどんな場所なのか」

「そこに茶竜がいたら……?」

「明るい時間に少しだけ様子を見に行ってみない?」

 エデンさんは何か考え込んで、

「その前に君も何か習得しておいた方がいい」

 と言った。向こうは人を造作もなく殺してきたのだろうと、彼は言う。攻撃に迷いがなかったのだそうだ。

「ナタリアは華奢だから、剣よりも弓がいんじゃないかと思う」

「エデンさんに剣術習いたかったな」

 冗談っぽく言うと、彼からは、

「下手すると自分の足を傷つけてしまうんだよ。それに、いきなり身につくものでもない」

 と真剣な答えが返ってきた。

「そうね。でも私、弓もやったことないよ」

「知ってる。けど、弓の方が向いてる気がするんだ」

 弓を引く自分を想像すると、妙に様になっていた。

「それに、弓ならフォリンに乗りながら使えるだろう?」

「あ、たしかに」

 結局エデンさんの意見に納得して、その日はそのまま城に戻ったのだった。

 王室専属の職人は仕事が早い。彼が私用に作らせた弓は三日で部屋に届いた。包みを開けると、ほのかに森の香りがする。早速構えてみると、手に馴染んでいた。エデンさんに見せると、その出来栄えに驚いていて、私も満足だった。


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