ごはんライス先生が撃たれた!
「大変だー!」
作家志望の火宮偽流が、ダンボールハウスに駆け込んできた。
「どうした、そんなに慌ててよ。まだパンの耳は貰ってきてないぜ?」
と彼を落ち着かせたのは、派遣社員の木宮落瑠だ。
「俺達がそんな卑しい奴なわけないやろ。少しは信じろボケ!」
そう怒ったのは、ホームレスの足宮臭琉。ここの家主である。
彼等は、いろいろあって足宮の家に居候している。名前が似ているから気があったのだ。
が、家主である彼は、ストレスの溜まりすぎで怒りっぽくなり、早速火宮にも喧嘩を売っていた。
「おいどうなんじゃ、おお?」
「そそそそそそそそそそそそそそんなこととととととよりりりりりりり。大変なことが起きた」
「なんじゃ、言うてみぃ」
「ごはんライス先生が撃たれた!」
なにぃ! と全員が声をあげた。
「で、容態はどうなんじゃ、コラ!」
「おおおおおお落ち着いてくれ。ひとまず深呼吸だ。ひーふー」
ひーふー。
「詳しくは知らない。だが、ごはんライス先生が撃たれたという情報が入ってきているんだ」
「マジかよ。信じられないぜ」
「これが銃刀法違反社会の日本の姿っちゅうんかい。嘆かわしいわい!」
三人は、思い思いに悔しがった。
「だが待てよ。撃たれたというわけで先生は死んだわけじゃないんだぜ。なら、俺達に出来ることは何かないのか?」
「お前良いこと言うやないか! よし、何かアイデア出してみぃ!」
「やっぱり、こういうときは千羽鶴と相場は決まっているんじゃないか?」
「エエなあ! よし、それで決まりや!」
足宮はすっかりやる気になったが、木宮がそれを静止する。
「待てよ。確かにそれは良いアイデアかも知れないが、俺は鶴の折り方知らないぜ?」
「あ、俺も知らない」
「ドアホウ! ホンマ役に立たん連中やなぁ。本当にゴハンらいす先生のこと考えとるんかい!」
「じゃあ、足宮は鶴の折り方知ってるのかい?」
「あとよ。ひらがなとカタカナが逆だぜ。本当にお前はファンなのか?」
…………。
「仕方ない。他の方法にするしかないんなぁ」
「……まあ何も言わないけどさ」
「なんやねん! コラッ! ほら、次のアイデア出せや!」
「ならよ。果物を渡すとかどうだい、見舞いっつったらやっぱそれだぜ」
ポン、と手を叩いて足宮が賛同した。
「お前頭いいなー! よし、それで決まりや!」
「ちょっと待ってくれよ。渡すのはいいけどさ、俺等ごはんライス先生の好きな果物知ってるのか?」
…………。
「好きなものなら、ロリコンDVDやってわかるんやけどなあ」
「お前よ。相手は病院の中だぜ。看護婦とか医者がいる前でそんなものが渡せるのか?」
「え、ええやないか! 包装してもらえばええねん!」
「でもよ。火宮がフリーターで月収十万以下、俺は派遣社員で月収一五万だったが、派遣切りされてこれからは報酬なし、あげくお前はルンペンだぜ? 包装は五百円くらいかかるし、そんな金が出せるのか?」
「ぬぐぐぐぐぐぐぐ」
プルルルルルルル。
火宮の携帯電話が鳴った。一ヶ月の給料は大体この携帯に吸われてしまうのである。
「はい、火宮です。はい、そうです。で、容態は……え? ……わかりました。すいません、はい」
ピッ。
携帯を切った火宮は、何故か俯き加減であった。
「なんだよ。何かあったなら言わなきゃわからないぜ?」
「おい、なんやねん! 早く言わんかい!」
しばらくの沈黙も後、火宮は重たい口を開いた。
「撃たれたの、ごはんライス先生じゃなくて中華そばラーメン先生だった」
『誰だよそれっ!』
一方その頃、ごはんライス先生の月収は一三万だった。
いろいろとギリギリに挑戦してみました。
で、中華そばラーメン先生って誰?