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西の谷

「ロス!!」


帝都外の草原の中。

そこにいたのは、腹から血を出したロスだった。


「遅かったか...」


「いえ、お父様。ロスはまだ大丈夫です。」


「しかし、この出血。王宮の医師にも治療なんて不可能だぞ。そもそもドラゴンを治療する医療技術なんて、この国にない。」


ロスは出血だけでなく、部位欠損もしている。普通に考えたら、回復魔法なんて効くわけがないし、お父様が言っていた通り、訓練を受けた医師であっても、今のロスを治す事なんてできっこない。


でも、私にはチートスキルがある。正確には、スキルではないのだが、『わが身に戻れ』的なやつだ。


私は直ぐにロスに近づき、心の中で唱えた『わが身に戻れ』と...


するとロスの体はいつも以上の輝きを放ち、小さな球体へと形を変えた。


「な...っ?」


「っ...!?」


驚きの声を漏らす剣聖と光速のクルム。


数々の戦場を渡ってきた彼らも、流石に魔王スキル〖竜神〗の力である、『わが身に戻れ』的なやつは始めてみるようだ。


「ロスは少し休ませておいた方がいいので、走って行きましょう。涅色の龍の祠というのは、どっちですか。」


魔王スキルである〖竜神〗であっても、即座に重症のドラゴンを回復させてやる事なんてできない。しかし、だからといって、ロスが完全回復するまで、気長に待っている余裕なんて今の私達にはない。

残された選択肢は一つだけだ。


「また...走るんですか...」


愚痴を漏らすクルムさん。

二つ名がつく程の速度を誇るのに、何が不満なのだろうか?


「何で走るのが嫌なんですか?この中で一番足遅いの私ですよ。里では一番速かっただったのに...」


ずっと黙っていたヒューリが徐に口を開くと、私がずっと抱いていた疑問をそのままクルムさんにぶつけてくれた。


「彼女の言う通りだ。何がそんな不満なんだ。」


お父様も知らないのか...?


これは意外だ。戦場でなにかあったのではないかと予想していたのだが、違っていたみたいだ。


「不満なんて...そんな大層なものじゃありませんよ。」


少し寂し気な表情を見せるクルムさん。


「まぁいいだろう。今は、涅色の龍の祠だ。そこにいるんだろう、シルフィーが...」


お父様の言う通り。

悪いが、クルムさんの不満なんて今はどうでもいい!!

走れるのだから、走ってもらわないと困る。


走ると持続的なダメージや、変な状態異常が付くわけでもない。そんな事があれば、直ぐに私が気づいて、解決している。


「涅色の龍の祠は西の谷の向こう側だ。」


全力で走ると、1時間半くらいかかるらしい。空を飛ぶことだできる私やヒューリなら、もっと早くつけるだろうが、お父様に打ち勝つなにかを持っているお母様に、私とヒューリだけで挑みに行くのは少し危険すぎる。ここは警戒して、お父様とクルムさんと一緒に走った方が良いだろう。



***



ーーレーナ?何をやっているのです?遅いじゃないですか。


あれから約1時間。


西の谷までもう少しと言う所で、お母様からの念話が入った。


「お父様、念話です。お母様から。」


無言のまま頷くお父様。

光速で走り続けている為、私に視線を向けたり、大声を上げたりはしないが、彼の表情は、少しだけ焦っているように見えた。


ーーレーナなら20分くらいで着くと思いましたのに...もしかして涅色の龍を放っておくのですか?それはお勧めしませんね。レーナならわかるでしょう、龍種の重要性。


龍種の重要性なんて知らない。

グレゴリーから『龍種は重要だ』と聞いただけで、その情報がそもそも正しいのかも分からないし、龍種の何が重要かなんて分からない。


ーー暇ですし、時間制限でもかけましょうか...10分以内に祠に来なかったら、涅色の龍を消します。


10分!?そんな短時間で、祠に辿り着けるわけがない。

西の谷まであと少しで着くと言っても、谷を越えて、もう少し走らないと祠にはつけない。


「お母様が...10分以内に来なかったら、涅色の龍の消すと...」


「本当にやるつもりなのか...!?」


ーーグルルルル!!


脳内に響き渡る竜の鳴き声。

これはロスのものだ。


「ロス!回復したの!!」


ーーグルルルルゥゥゥ!!!


翻訳すると、完全回復が完了した。だから早く出して欲しい!


「なに!?もう回復したのか!?」


お母様から念話が届いた時でさえ、リアクションを見せなかったお父様が、ロスの回復が完了したと聞いた途端、物凄いナイスリアクションを見せてくれた。具体的には、目と口を大きく開け、大声を上げながら走り続けていた。


「ロスを出します。一旦ここで止まってください。」


皆に視線を向け、止まるようにお願いすると同時に、私はロスを自分の中から取り出した。


皆が立ち止まると、私の胸元から淡い光が漏れ出し、それは球体へと変化していく。そんな球体は段々と大きくなってゆき、次第にロスの形へと戻っていった。正確には、完全回復したロスの姿に。


「グララララァァァァァァァァァァ!!!!」


「ロス!本当にもう完全回復したんだね!!」


私も正直驚いている。

回復できる事は知っていたが、まさかこんな短時間で出来るとは思ってもいなかった。


「病み上がりなのに、悪いが...頼めるか...」


分かっている。

10分以内に祠につくのには、ロスの力が必要だ。お父様とクルムさんを乗せて飛べる仲間なんて、ロス以外にいない。


「ロス!お願いがあるの!!」


「グルルルルゥゥゥ!!」


翻訳すると、分かっている!


「大丈夫みたいです、お父様。」



***



上空、ロスの背中にて。


「あの、お父様。一つだけ質問いいですか?」


「なんだ。」


「龍種の重要性って、なんですか?」


ずっと前から疑問に思っていた事だ。お母様と対戦する前に知っておく必要がある。


「一般には、知れ渡っていないもんな...」


「はい...」


お母様やグレゴリー。私の知っている魔王スキル持ちは、皆知っていた事だ。

今回、お母様がしたみたいに、龍種を消そうとしてくる人だって現れるかもしれない。そんな時、龍種の重要性を知らなければ、どう対処していいのかも分からない。

この情報は絶対に把握しておくべきだろう。


「龍種は、一言で言うと管理者だ。」

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