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クルム・ハワード

「お父様。少し、いいですか?」


私は恐る恐る片手を上げ、凄まじい風情を放つお父様に近づいた。


そんな私を見て我に返ったお父様は、少し和らいだ表情を見せ、「なんだ。」返答した。


「お母様の強さって...ご存知ですか...?」


私が言うお母様の強さと言うのは、物理的な戦闘力の事もだが、彼女の計画性や、自分の娘を自身の手で殺める事も厭わないその心。

戦場で情が出て、一瞬でも躊躇いを見せれば命取りになる。でも、お母様はそれを見せる事はない。それが彼女の最大の武器だろう。


「シルフィーの強さか...あぁ、十分に知っている...」


溜息混じりに漏れた彼の言葉には、少しだけ切なさが乗っていた。

先程まで見せていたお父様の面影は消え去り、儚いとさえ思える表情を浮かべるお父様は、違った意味で、今までの彼とは一風変わったものだった。


「なら、少し提案があります。お父様には少し辛い事かもしれませんが、お母様を沈める為の作戦です。」


お父様は状況の確認を行う為に帝都に戻ると言っていた。お母様が国の邪魔になる存在だった場合排除する、という目的もあるのか分からないが、お母様と対面すれば、恐らく戦闘は免れない。


お父様に、お母様を消す覚悟があるのか?お母様の病気のせいで、一緒にいたところは見たことないが、きちんと夫婦していたのだろうか?仲が良かったとして、愛し合っていたとして、お父様に、なんの躊躇いもなく、愛すべき妻を殺める事ができるのだろうか?


「話だけ...聞こう...」


額に手を当て、しゃがみ込むお父様の唇は微かな震えを見せていた。


十分な覚悟は出来ていないようだ。いくら帝国最強の称号を持った剣聖でも、愛していた妻を、病弱だった妻をそう簡単に殺める事なんて出来ないみたいだ。


当たり前だ。


愛すべき人がいきなり裏切ったと知れば、自殺する人だっている。そんな状況で私の話を普通に聞いているのだ、驚異的な精神力を持ち合わせていると言えるだろう。


「お父様と数名の信頼できる兵をロス、このドラゴンに乗せて、帝都に向かうという作戦になります。」


お母様がどこで何を見ているかなんて分からない。情報収集が得意な仲間だっているかもしれない。その場合、お父様の早目の帰宅も耳に入っているだろう。

その隙を突くには、もっと早く到着するしかない。つまり、ロスに乗って、誰にも見つからずに屋敷に潜入するという事だ。

私達、つまり私とヒューリの戦闘力に加えて、予想を大きく上回る化け物ステータスを見せてくれたお父様がいれば、ほぼ確実にお母様に勝てるだろう。

ただそれは、お父様が了承すれば...だ。

私の作戦は、私の母親であり、お父様の妻を殺める為のものなのだから...


「はぁ...分かった。」


色々察したのか、重く、寥々たるため息を漏らすお父様。


その表情はやはり、いつもの彼とはかけ離れたもの...


私はそんなお父様を半ば強引に引っ張るようにして、ロスの背へと連れて行った。


騎士さん達も混ぜた、具体的な作戦会議を行いたいところだが、この作戦は出来るだけ早く決行した方がいい。その方がお母様の不意を衝ける。


ロスの背の上にお父様を含めた2人が追加で乗り、ロスは少し苦しげな表情を見せたが、地を蹴り、難なく大空に羽ばたく事が出来た。


「どうも...」


そんな中、第一声を放ったのはぎこちない顔を見せたヒューリだった。


「あぁ...これは、どうも。」


それに続いたのはお父様、騎士団を代表して発言するのも騎士団長であるお父様の役目なのだろうか?


「お父様。こちらは私の友人であり、仲間でもあるヒューリでして、森の中で色々と助けて貰ったのです...」


「そうか...私はレーナの父で..アルスだ。娘が色々と世話になった。」


「それはいいとしてだ...レーナ。森の中で...って...どういう事だ...」


真剣な眼差しで、こちらを威嚇する様いして発せられたお父様の言葉は重く、私は軽く身震いを起こしてしまった。


お父様は、私がまたデルラジア大森林に行った事なんて知らない。

もし知られたら、お父様の過保護ブザーが爆発して大変な事になる可能性が高かったから、あえて黙ったいたのだ。


なのに、私はつい失言してしまった。


皆が知る通り、私は噓が驚くほど下手なのだ。

ここまで聞かれたら、絶対に言い逃れなんて出来ない...


「デルラジア大森林で...数日間修行を...」


抽象的過ぎて意味の分からない事を言ってしまったが、間違ってはいない。


「箱入りと聞いてましたから、どんな娘さんなのかと正直心配でしたが、剣聖様そっくりじゃないですか!!」


突然、仕事モード的な表情しか見せていなかった騎士の一人が、私を指差しながらバカ笑いし始めた。


そんな事をいきなりさせて気分がいい訳もなく、私は少し歪んだ顔を晒してしまった。


「申し訳ない!剣聖様とそっくりだと思いましてね」


「そっくり...ですか?」


私はどちらかと言うとお母様似なのだが、どこから'そっくり'なんて言葉が出てきたのだろうか...


「剣聖様も森の中で修行、してたんですよ。」


「それは本当にですか...?お父様...」


お父様も...あのデルラジア大森林でレベリングしていたの?お父様のブッコワレタステータスがあれば、災害級の群れの中で修行していても、おかしくはないけど...


「あぁ、そうだ。しかしだな、レーナにはもう少し安全な所で行う仕事が向いていると思うんだよ。戦闘なんて...あまり...」


お父様は過保護過ぎる。

自身もデルラジア大森林でレベリングしていた事がばれて、あまり強くは言ってこないが、予想通り、否定的な意見を述べてくる。


「お父様...そういう事は後で話しましょう...」


今はお母様戦に集中した方がいい。お母様の力量もろくに把握しきれていないのに...お父様の過保護度には参ってしまう。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。」


呆れ顔を露にしていた私をなだめるように、先程ばか笑いしていた若手の騎士が胸元に手を当て、やさし気な表情を見せてくれた。


「俺はクルム・ハワードと言います。」


「レーナ・ヴォン・アルフォードです。」


クルムさんはお父様が指名した信頼できる部下だ。私が半ば強引にお父様を引っ張っている間に、迷いなく指名したところを見ると、余程信頼できる部下なのだろう。


これから共に戦う仲間になるクルムさんの戦闘能力は出来るだけ正確に把握する必要がある。しかし、何故かヒューリと会ってから無断で〖ステータス閲覧〗を使うと、酷い罪悪感に襲われてしまう...

ヒューリにしたみたいに魔王スキルの事を話してしまえばいい!と、思うかもしれないが、それも少し違う気がする。(面倒くさい)


数分間頭を抱えた結果、私は結局無断〖ステータス閲覧〗をする事にした。


ごめんなさい...クルムさん...


--------------------------------------

名前:『クルム・ハワード』


 種族:ヒューム

 状態:通常

 年齢:24

  LV:69/99

 

  HP:376/376

  MP:321/321

攻撃力:299(+25)(+70)

防御力:246(+80)

魔法力:217(+70)

 速度:293(+60)


 装備:〖竜鱗の防具:価値B-〗〖竜鱗のマント:価値B-〗〖剣聖騎士団の短剣:価値C-〗〖精竜の剣:価値B-〗


通常スキル:

〖マナブレイド:Lv7〗〖アタックフォース:Lv7〗〖ライトニングスピード:Lv8〗〖オーバーブースト:Lv7〗〖旋風脚:Lv7〗〖瞬動:Lv7〗〖魔気脚:Lv7〗〖オーバーアクセル:Lv7〗〖拳圧:Lv7〗


耐性スキル:

〖衰弱耐性:Lv5〗〖水属性耐性:Lv7〗〖恐怖耐性:Lv6〗〖物理耐性:Lv7〗〖苦痛耐性:Lv6〗〖落下耐性:Lv5〗〖雷属性耐性:Lv7〗〖風属性耐性:Lv7〗〖火属性耐性:Lv7〗〖闇属性耐性:Lv7〗〖光属性耐性:Lv7〗〖霧属性耐性:Lv6〗〖氷属性耐性:Lv6〗〖土属性耐性:Lv5〗


特性スキル:

〖属性飛斬:Lv7〗〖剣気解放:Lv7〗〖疾風迅雷:Lv7〗〖双剣術:Lv--〗


称号スキル:

〖剣聖の騎士団員:Lv--〗〖アルフォード騎士団剣聖部隊副隊長:Lv--〗〖暗殺者:Lv--〗

--------------------------------------


強い...


モンスターランクで言ったらCランク上位くらい強い...


でも、これって以前屋敷で会った副団長さんより強くない...?


お父様の騎士団って...どんなシステムなのだろうか?

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