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シルフィード

「レーナ...なに...これ...」


驚愕の声を上げるヒューリ。

私はそんな彼女の声に答える事なく、只々、無言のまま彼女を見つめ続けた。


答える必要がなかったからだ。


答えは既に彼女の目の前に倒れていたのだ。


「これって...本当に私の力で...?」


混乱するのも仕方ない。


これが進化というものだ。


今まで考えもしなかった事が、突然可能になる。


ヒューリの目の前で散乱した虎の血肉がそれを証明していた。


「ヒューリ...それで、本当に...」


本当に大丈夫なのか...?


そんな事を聞いても仕方ない。もう後戻りは出来ないし、私にはどうしようもない事。

自分でも分かっている...


「本当に...って?何が...?」


キョトンとした表情のヒューリ。


「私、感謝してるんだよ、レーナ。」


私の心境を見透かしたかの様に、彼女はクスクスと笑い声を漏らす。


「前にも言ったでしょ、弱いままの私を救ってくれて、ありがとう、って。」


そういえば、そんな言葉、貰ってたね。


私は無言のままヒューリの手を握り、彼女の頬に唇の印をつけた。



***



時は昼過ぎ。


経験値稼ぎは順調に進み、私達は少し休憩を取る事にした。


「それで、どんな感じ...?」


私は素朴な疑問をヒューリにぶつける。


『どんな感じですか?』とか言われても、質問が抽象的過ぎて、意味が分からない。

自分で言ったのに、思わず笑ってしまいそうになった。


「イイ感じ?」


予想外な事に、ヒューリはなんの疑問もぶつけずに、適切な答えを出してくれた。




ヒューリが進化して、変わった所は一つだけ、それは獣耳...

彼女の大きなチャームポイントでもあった獣耳が...無くなってしまったのだ...


ただ、これには大きなメリットもある。

強力な力を手に入れたのも大きなメリットだが、それ以上の大きなメリットがある。

それは普通のヒュームに見える事だ。

帝都での獣人の扱いはかなり酷い。奴隷として見られるのはほぼ確定だった。でも、これで最低でもヒュームとして、普通に屋敷に居られる。


ただ、もし『シルフィード』が人間に嫌悪されるような種族なら話が変わってくる。


そういえば、『シルフィード』って、鑑定さんで調べる事ができるのだろうか?木や石などを鑑定した事はあるが、自分以外の生命体は鑑定した事がない。


私は先ず、彼女に〖ステータス閲覧〗を使う事にした。


種族鑑定できるか分からないが、やってみる価値はあるだろう。


--------------------------------------

名前:『ヒューリ』


 種族:シルフィード

 状態:通常

 年齢:8

ランク:B

  LV:49/87


  HP:458/458

  MP:348/449

攻撃力:389

防御力:324

魔法力:386

 速度:405


装備:〖古いワンピース:価値F〗


通常スキル:

〖カタルシス語:Lv6〗〖クリーン:Lv5〗〖ハイスピード:Lv7〗〖電熱:Lv7〗〖双鉄槍:Lv7〗〖クロススラッシュ:Lv7〗〖魔力拳:Lv6〗〖ブースト:Lv7〗〖ダブルスラスト:Lv6〗〖暴風空間:Lv5〗〖大気壁:Lv5〗〖大気球:Lv5〗〖風結界:Lv5〗


耐性スキル:

〖水属性耐性:Lv5〗〖恐怖耐性:Lv5〗〖物理耐性:Lv5〗〖苦痛耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv5〗〖雷属性耐性:Lv4〗〖風属性無効:Lv--〗


特性スキル:

〖疾風迅雷:Lv5〗〖浮遊:Lv3〗


称号スキル:

〖獣王の娘:Lv--〗〖緊那羅の配下:Lv--〗

 --------------------------------------


半日しか経っていないのに、かなり強くなったな...

まぁ、ヒューリのステータスは後でじっくり見る事にしよう...今は鑑定が先だ。


【種族〖シルフィード〗Bランクモンスター。気流を司る、風の上位精霊。幻の存在として知られており、伝説では少女の姿をしていると言われている。】


精霊?

ヒューリ...上位精霊だったのか...?


獣耳の少女から上位精霊に進化って...何が起こったんだよ...

まぁBランクモンスターなんて、上位精霊みたいな規格外種族しかいないけど...


それにしても、獣耳少女が一回進化しただけでなれるものではない...


「ヒューリ...凄いのに、進化しちゃったみたいだね...」


「えっ?」


--------------------

――レベリング最終日


明日屋敷に戻って、お母様に挑む。


その為にも、今日ロスの進化を済ませる。

正直なところ、ロスは遠距離サポート役だし、進化させて、もっと強くさせる理由なんてほぼない...

ただ、後2レベルで進化というかなり惜しい所まできているし、強くなって損する事なんてないだろう...多分...





「レーナ。二匹、前方から来る。」


獣耳は無くなったが、獣人の嗅覚は健在のようだ。


ヒューリはいつもとは少し違う、険しい表情を私達に見せながら、『敵発見』のサインを送った。


そんなヒューリの視線の先へ意識を集中させ、私は敵を目視出来ていない中、無理やり〖ステータス閲覧〗使用した。


--------------------------------------

 種族:迅雷虎

 状態:通常

ランク:C-

  LV:31/55


  HP:198/201

  MP:168/168

攻撃力:152

防御力:145

魔法力:139

 速度:143


通常スキル:

〖ハイスラッシュ:Lv5〗〖かぎ爪:Lv5〗〖突撃:Lv6〗〖嚙みつく:Lv5〗〖ハイスピード:Lv6〗〖ポイゾンタッチ:Lv6〗〖毒牙:Lv6〗〖雷矢:Lv6〗〖雷視:Lv6〗〖雷槍:Lv6〗〖雷撃:Lv6〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv5〗〖苦痛耐性:Lv6〗〖落下耐性:Lv5〗〖水属性耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv6〗〖毒耐性:Lv6〗〖雷属性耐性:Lv6〗


特性スキル:


称号スキル:

〖デルラジア大森林の魔物:Lv--〗

--------------------------------------


驚く事に、敵を目視しなくても〖ステータス閲覧〗を使用する事が出来た。


興味本位で行った、ちょっとした実験に過ぎなかったのだが...まさか成功するとは思わなかった。


「ロス!一人でできそう...?」


「グルルゥゥゥ!!」


いい返事だ。

一応翻訳すると、『問題ない!』とか『大丈夫!』とかそんな感じの事を言っている。


そんなロスの返答の直後、予想通り二匹の虎が姿を現した。もう見飽きたCランク下位の雑魚だ。

街に放てば半壊は免れない所だが、今の私達にとっては雑魚でしかない。


そんな事を考えている間にも、二匹の虎はどんどんその距離を詰めてくる。


遅いな。


動体視力が上がったせいか、虎共の動きが異様に遅く見える。


「グラァァァァ!!」


その瞬間、ロスは大森林を震わせる程の咆哮が放ち、同時に白息しらいきを勢い良く放射した。


ロスの目の前まで迫っていた虎達は、そんなロスの白息に包まれ、一瞬にしてその身を凍結させてしまった。


これはロスの雄一の咆哮系スキル〖氷竜の咆哮〗だろう。

初めて見たが、かなり強力なスキルじゃないか?一瞬でも敵の動きを止められるのはかなりでかい。


ただ、これには一目で分かる、大きなデメリットが存在する。以前、私が愛用していたスキル、〖電熱〗にもあったデメリット、接近戦でしか使えないという欠点だ。

サポート役で、基本遠距離攻撃しかしないロスにとって、接近戦でしか使用できないと言うデメリットはかなり痛い。


でも、ロスならこのくらいの敵..接近戦でも問題なく対等以上に戦う事ができるだろう。


「グラァァ!!」


ロスは爪を立て、凍り付いていた目の前の虎一匹にその爪を突き刺す。

虎をコーティングしていた氷が散乱し、同時にミンチになった虎肉も辺りに散らばる。その直後、先陣を切っていた虎が筋力を失い、その場で倒れてしまった。


一撃。


ロスはCランクの身でありながら、一撃でCランク下位の化け物を倒したのだ...

まさかここまで出来るドラゴンだとは思わなかった...


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