デルラジアの主
「キサマ、ワレがケス...」
焔漿龍はゆっくりとその大口を開け、私達に向けてきた。ここで私が取れる行動は限られてる。後ろでヒューリが倒れてる以上、私はただ避ける事は出来ない。抱えて避けるのも時間がかかり過ぎる。
「ロス、出てきて!」
私は直ぐに『わが身に帰れ』状態にしておいたロスを外に出し、ヒューリを抱えて逃げてもらう事にした。
私の胸元から光の球体が現れ、球体はその状態のまま倒れるヒューリへと近づいていった。
私はヒューリの事はロスに任せ、自分は目の前の焔漿龍に集中した。気付くと、焔漿龍は大きく口を開き、口内に赤い光を生成していた。その光は段々と規模を大きくし、次第には口内から飛び出していった。
〖竜人化〗を発動させていた私は直ぐに〖飛行〗を使い、真上に勢い良く飛んだ。その瞬間、ほんの少し前まで私が立っていた場所に灼熱の炎が襲いかかり、半壊した石造りの家を飲み込んでいった。
完全に崩壊した元家から炎が舞い、浮遊していた私に襲い掛かる。私はそんな攻撃に素早く反応し、避けると同時に焔漿龍と距離を取った。
私のスキルのほとんどは遠距離型攻撃だ。前みたいに〖電熱〗の為にわざわざ距離を詰める必要はない。
私は炎がもう追って来てないのを確認すると、新スキルの中で一番使い慣れた、〖断罪之光〗を使う事にした。
「挨拶代わりの〖断罪之光〗!!」
天空から強い光が舞い降り、目の前の焔漿龍を包み込んでいく。
そんな光に若干慣れた私は、目を細めながら現状を把握に励んだ。その瞬間、所々傷ついた焔漿龍が今も輝き続ける光の柱から姿を現し、私に接近して来た。
「〖天候支配〗!!」
私は直ぐに〖断罪之光〗を解除し、〖天候支配〗を実行した。近距離戦ならこのスキルが一番だ。半径10メートルから50メートル以上にまでなった私の〖天候支配〗は強力な攻撃スキルにもなるし、防御スキルに化ける事も出来る。取り敢えず発動しておいて損する事なんてないはずだ。
物凄い勢いの台風が目の前で吹き荒れ、焔漿龍を包み込んで行く。
「グラァァァァ!!」
焔漿龍は雄叫びを上げ、その巨体で出鱈目に暴れる。
これはいくら何でもイージーゲーム過ぎる。相手は〖ステータス閲覧〗持ちだ、私の力を把握しきれていなかった何て事は有り得ない。それに、私のステータスには(-80%)のデバフが付いている、しかも、毎秒5MP奪う状態異常も。そんな状態異常が付いていたら確かに1分も持たずに私は倒れてしまう。でも、こんな龍なんて1分もあれば余裕で倒せる。グレゴリーが見せたあの不敵な笑みの理由が分からない。
私はそんな不安を抱えながら、焔漿龍に更なる追撃を与える事にした。私の最大の攻撃スキル(多分)〖断罪之光〗である。
暴れ回る焔漿龍に照準を合わせるのには骨が折れたが、問題なく追撃を与える事に成功した。
腹から血を吹き出す焔漿龍。今の私のステータスは圧倒的なまでに焔漿龍に劣る...が、ドラゴノイドが与えてくれたチートスキルの数々。もしかしたら〖断罪之光〗より強力なスキルがあるかもしれない...けど、それは後で調べればいい。焔漿龍を倒すのに〖断罪之光〗や〖天候支配〗以上のスキルはいらない。
私は更に〖天候支配〗で追撃を与える事にした。傷ついた腹に照準を合わせ、今回は先程のような台風は止め、〖スラッシュ〗のような、薄く、鋭い風をいくつも生成した。
鋭い風は勢い良く焔漿龍に襲いかかり、腹の傷に更なる深手を負わせる事が出来た。もう焔漿龍は鳴き声を上げない。さっきの台風攻撃よりダメージが入ったはずなのに叫ばない...
私は回避されたのではないかと一瞬心配になったが、そんな心配は要らなかった。
先程まで私に襲いかかって来ていた焔漿龍は瞳の色をなくし、纏ってうた炎を失っていった。力なくした焔漿龍はその場で倒れ込み、大地を揺らした。
それは、ほんの数秒の出来事。私はデバフを抱え、無傷のまま、生きる伝説に勝ったのだ...
【経験値632を獲得しました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値632を獲得ました。】
【称号スキル〖デルラジアの主:Lv--〗を獲得しました。】
【進化の条件が揃いました】
呆然と龍神様の末路を眺めていた私に、一通の通知が届く。私は伝説を生きていた龍を倒した、それなりの経験値を手に入れた。しかし、最大レベルにはまだ達していないはずだ。その証拠に【レベルが最大値に達しました。これ以上経験値を獲得することはできません。】の通知が届いていない。それなのに、進化の条件が揃った。
これは伝説の龍種を倒したから...と言うものなのだろうか?
「グルルァァ!!!」
「レーナさん!!!」
後方から声が聞こえてきた。ロスとヒューリだ。ヒューリは私に大きく手を振り、ロスは翼をばたつかせていた。
私は少し回復した様子のヒューリを見て、安堵の息を漏らした。私は直ぐに〖竜人化〗と〖稲光〗を解除し、彼らに近づいていった。
「ヒューリさんそう言えば、あの男は...」
「ごめんなさい...」
ヒューリは下を向き、少し涙目になりながら謝ってきた。
私はそんな彼女に近寄り、少しの間抱きしめてやった。彼女の家であった里が、完全に崩壊したのだ。里の人達の気配はない。辺りには散乱した木片やレンガだけでなく、朱餡のシミも所々確認できる。
残念だが、恐らく...もう全滅しているだろう。それに、多分ヒューリもその事を察している。この惨劇を目の当たりにして、淡い希望を抱く程ヒューリは甘ったれてない。出会ってまだ24時間程度しか経っていないが、それぐらいは分かる。
私はそんな彼女を両腕で包みながら、少し、今後の事について考える事にした。
先ずヒューリをどうするかだが、全滅した里の中に放っておく訳にはいかない。となると、屋敷に連れていくか...ただその場合、ヒューリをお母様戦に巻き込む事になってしまう。屋敷に入って、レイシアさん達が無事なら彼女らにヒューリを預ける事くらいはできそうだけど、皆がどんな状況に陥っているか分からない。
となると、やはり戦闘中に後ろで待っていてもらうか...獣人が一人でいたら奴隷と間違われるかもしれないし...
次はグレゴリーをどうするかだけど、ヒューリが里の敵を討ちたいと言うんだったら、私も協力していいと思ってる。でも、もしそうじゃないなら、別に放っておいても問題ないんじゃないかと思う。ステータス的にもそこら辺の魔物に劣るし、森の中に逃げて行ったんだったら、もう既に食べられてる可能性だってある。
とっつかまえて魔王スキルの事を色々聞くのも良さそうだけど、そんなのお母様に聞けばいいし、そもそも捕まえるなんて多分出来ない。手加減ができるほど器用じゃないもん...私...。
と言う訳で、グレゴリーは取り敢えず放置でいいかな。また変な事してきたら返り討ちにすればいいし...
最後に進化の事だけど...正直要らない。お母様戦に備えて強くなるのはいい事なんだけど、既に数日前のお母様のステータス上回ってるし、これ以上強くなる意味ないと思う。今以上の力の代償に、人間の容姿を剝奪するとか言われても困るし、ドラゴノイドのままが丁度いいと思うんだよね...
私は万が一の事を危惧し、結局進化先だけ調べる事にした。進化するかどうかは、その進化体の容姿で決めればいい。
【進化先を表示しますか?】
オーケー。
【称号スキル〖デルラジアの主:Lv--〗の効果により、特異進化体〖No Name〗への進化が可能になりました。】
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【現状】
〖ドラゴノイド:B〗
【進化】
〖ドラゴノイド:B+++〗
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進化先がドラゴノイド?
通知では『特異進化体』とか言っていたけど...それにランクが焔漿龍と同じBランク超上位。
超上位なんて存在しないランクのはずなんだけど...
私は次なる進化に物凄い不安を覚えながら、恐る恐る〖ドラゴノイド:B+++〗に鑑定さんを使った。




