闘諍協奏曲第三番
「グルルァァァァ!!」
ロスの鳴き声が届き、私は我に返る。未だに現実を受け止められないでいるヒューリを乗せたままロスは進み、焔漿龍へと近づいていった。
「まだ理解してないみたいだな...自分の立場ってやつを...」
グレゴリーは不適な笑みを浮かべ、こちらを凝視していた。
もしヒューリの言っていた通り、デルラジアの祠を崩壊させたのが私なのだとしたら、グレゴリーや焔漿龍はそんな私の強さを十分に知ったはず。なのに、彼らは逃げるどころか余裕の表情すら浮かべている。
可能性として考えられるのはグレゴリーの進化だけど、Eランク上位でしかなかった彼が一度進化したところで私と対等に戦うどころか、余裕ができるほど強くなったとは思えない。焔漿龍が大幅に強くなっていたら対等には戦えると思うけど、焔漿龍は〖最終進化:Lv--〗を持ち合わせていた。つまり進化は出来ない。
私はそんな彼らに物凄い違和感を覚え、実際に確認する事にした。
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名前:『グレゴリー』
種族:ラグロン
状態:通常
年齢:29
ランク:E+
LV:23/25
HP:48/56
MP:35/52
攻撃力:51(+111)
防御力:67
魔法力:48
速度:42
装備:〖焔漿龍の剣:価値B+〗
魔王スキル:
〖緊那羅:Lv2〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv6〗〖アンハーモニー:Lv3〗
耐性スキル:
〖水属性耐性:Lv2〗〖物理耐性:Lv3〗〖雷属性耐性:Lv3〗〖風属性耐性:Lv3〗〖火属性耐性:Lv4〗〖熱耐性:Lv5〗〖闇属性耐性:Lv4〗
特性スキル:
〖鑑定:Lv5〗〖ステータス閲覧:Lv4〗〖念話:Lv2〗〖闘諍協奏曲第三番:Lv--〗
称号スキル:
〖神の卵:Lv--〗〖焔漿龍の加護:Lv--〗
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進化どころかレベルアップもしていないし、あの馬鹿げたバフも消えている。変なスキルを獲得した様子もないし、これじゃただのEランク上位モンスター...
「龍神様!!僕が力を貸すんだから感謝しろよ!!〖闘諍協奏曲第三番〗!!!!!」
グレゴリーは里の中央で両手を大きく上げ、何かを叫んでいた。
ロスは低空飛行を始め、グレゴリーとの距離を詰めていくが、彼はそんなロスに目もむけず、焔漿龍の方へと視線を向けていた。
「安心しな、お前の〖竜神〗の力なら僕がお前以上に上手く使ってやるから!!」
その言葉を残し、グレゴリーは接近するロスから全力で逃げ出した。しかし、Eランク上位の全力疾走なんてロスなら〖飛行〗なしでも簡単に追いつける。私はそう、高を括っていた。しかし、それは甘かった。真横から炎の波が私達を襲い、飲み込もうとしてくる、異様なスピードで。
これは間違いなく焔漿龍の攻撃だろうが、彼のステータス値からは考えられない程の猛烈な速さで襲いかかるその攻撃に、私は違和感を覚えずにはいられなかった。
「グルルァァ!!」
ロスは直ぐにそんな焔漿龍の攻撃に反応し、私とヒューリを宙に浮かせた。何のつもりかと疑問に思えっていると、次の瞬間、ロスはその尾を勢い良く私とヒューリに叩き付け、遠くへと吹き飛ばした。
ロスは逃がしたのだ、私とヒューリを。あのまま私がロスの背中に乗っていたとしても、〖竜人化〗と〖稲光〗を発動していなかった私に、あの攻撃を回避する事は勿論、防御する事も出来なかっただろう。
ロスに感謝しないとな、こんな作戦、あの一瞬で思いつくなんて。
ロスに吹き飛ばされ、未だに体を宙に浮かせていた私は、焔漿龍の豪炎に飲み込まれる寸前のロスに目を向け、『わが身に戻れ』的なやつを実行した。
ロスの体は輝きだし、一つの光の球体へと変化していった。そんな儚そうな球体は焔漿龍の豪炎に包まれてしまったが、無傷のままのその姿を見せ、私の中へと戻っていった。
ドーン!と、物凄い破壊音と共に、背中に激痛が走った。やっと何かが吹き飛ぶ私達を受け止めてくれたようだ。私は徐に振り向き、半壊した石造りの一軒家を目にした。
徐々に引いていく痛みに耐えながら辺りを見渡していると、ゆっくりと立ち上がるヒューリの姿を目にして、私は安堵の息を漏らした。
息を整えた私は直ぐに目の前の焔漿龍へ目を向け、直ぐに〖竜人化〗と〖稲光〗と発動させた。それにしてもさっきの攻撃はおかしかった。いくら〖竜人化〗と〖稲光〗を発動していない人間状態だったからって、焔漿龍のあの速度値が私に反応すらさせないなんて事は絶対にないはず。
私は確認の為意識を集中させ、焔漿龍に再び〖ステータス閲覧〗を使った。
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種族:焔漿龍・ヨルムンガンド
状態:通常
ランク:B+++
LV:100/100(MAX)
HP:888/888
MP:888/888
攻撃力:666
防御力:666
魔法力:666
速度:666
耐性スキル:
〖炎無効:Lv--〗〖闇無効:Lv--〗
特性スキル:
〖完全炎支配:Lv--〗〖焔漿龍の鱗:Lv--〗
称号スキル:
〖デルラジアの主:Lv--〗〖最終進化:Lv--〗
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相変わらずな不気味ステータス値が並ぶ。
これはどう考えたっておかしい。変化してない速度値で私を翻弄させるなんて事があるはずがない。戦闘中に呆然としていた訳でもないのに、私があんな攻撃に飲まれそうになるなんて絶対にない。
「レーナさん...」
ヒューリのポツリとした声が届く。震えた唇で唱えられた言葉は私の名。その潤った瞳を私に向け、何かに恐怖するように手足を痙攣させてた。やっとの思いで立ち上がっていた彼女は一瞬にして崩れてしまい、簡単に敵である焔漿龍から目を離してしまった。
「力が..入らない...」
彼女の必死の悲鳴は余りにも弱弱しい物だった。彼女の恐怖の念は圧倒的な攻撃力を見せつけた焔漿龍や、崩壊した自身の里から来た物ではなかった。体を支配する脱力感。戦闘中に起こったそんな事件に、彼女は恐怖を覚えたのだ。
私はそんな彼女を目の当たりにし、心配になり、状態の確認を行う事にした。
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名前:『ヒューリ』
種族:ネル・ヒューム
状態:失闘諍
年齢:8
LV:42/99
HP:87/101
MP:21/68(毎秒-3)
攻撃力:112(-60%)
防御力:98(-60%)
魔法力:73(-60%)
速度:135(-60%)
装備:〖古いワンピース:価値F〗
通常スキル:
〖ウォーターボール:Lv6〗〖ファイアーボール:Lv5〗〖クリーン:Lv5〗〖ハイスピード:Lv6〗〖電熱:Lv6〗〖双鉄槍:Lv6〗〖クロススラッシュ:Lv6〗〖カタルシス語:Lv6〗
耐性スキル:
〖水属性耐性:Lv4〗〖恐怖耐性:Lv4〗〖物理耐性:Lv5〗〖苦痛耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv4〗〖雷属性耐性:Lv4〗〖風属性耐性:Lv4〗
特性スキル:
〖疾風迅雷:Lv4〗
称号スキル:
〖獣王の娘:Lv--〗
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彼女はある病を患っていたようだ。デバフと言う名の病を。
全てのステータスに(-60%)、更に毎秒-3MPなんて聞いた事がない。いや、もしかしたらこれがあの男の能力なのかもしれない。彼も焔漿龍もステータス的には全然私に勝っていない。でも...もし...もし、彼らが私を弱体化する事が出来たら...?
私は悪寒を感じ、直ぐに自分に意識を集中させ、〖ステータス閲覧〗を発動した。
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名前:『レーナ・ヴォン・アルフォード』
種族:ドラゴノイド
状態:失闘諍(中)
年齢:6
ランク:B
LV:37/90
HP:336/354
MP:458/504(毎秒-5)
攻撃力:407(+120%)(-80%)
防御力:215(+10)(-80%)
魔法力:469(+150%)(-80%)
速度:378(+150%)(+120%)(-80%)
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嫌な予感が的中した。何故私が焔漿龍の攻撃に反応出来なかったかは分かったけど、これじゃ時間との勝負だな。ただでさえ〖竜人化〗と〖稲光〗で持続的にMPを消費するのに、更に(毎秒-5)とか、恐らくは1分も持たないだろう。
私は覚悟を決め、目の前の焔漿龍と目を合わせた。




