焔漿龍とグレゴリー
『龍』はその大口で大気を揺らし、私を睨む。
「キサマ...ケス...」
私はその言葉を聞いた瞬間、即座に〖竜人化〗と〖稲光〗を起動させ、〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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種族:焔漿龍・ヨルムンガンド
状態:通常
ランク:B+++
LV:100/100(MAX)
HP:888/888
MP:888/888
攻撃力:666
防御力:666
魔法力:666
速度:666
耐性スキル:
〖炎無効:Lv--〗〖闇無効:Lv--〗
特性スキル:
〖完全炎支配:Lv--〗〖焔漿龍の鱗:Lv--〗
称号スキル:
〖デルラジアの主:Lv--〗〖最終進化:Lv--〗
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流石は創造の時から存在すると言われる龍、と言った所だろうか。スキルの数が妙に少ないのが気になるが、ステータスなら〖竜人化〗と〖稲光〗モードの私が勝ってる。
今気付いたけど、創造の時から存在する、多分最強の存在である龍にステータスで勝ってる私って...いったい何なのだろう...
私は自分のステータスに軽く恐怖を覚えながらも、外で出くわした虎みたいな天罰を焔漿龍に与える事にした。その名も...
「〖断罪之光〗!!!」
分かんないけど、恐らくは私の最大威力の攻撃スキル。Cランクモンスターを一撃で粉砕したんだし、これ以上のスキルがあったら、自分が何なのか分からなくなる。
天から...と言うより洞窟の天井(?)から強い光が降り注ぎ、目の前のヨルムンガンドを包み込んでいった。
しかし、ヨルムンガンドの苦し気な鳴き声は上がって来なかった。あのCランクモンスターを一撃で倒した超必殺技でさえも、ヨルムンガンドには通用しなかったというのか...
内心かなり焦りながらも、私は自分で放った光が収まるのをじっと待った。
段々と光が弱まり、それと比例して私はゆっくりと目を開けていった。視界が戻り、一番最初に私の目に入ったのは、「なんかしたのか?」とでも言いたそうなヨルムンガンドの姿だった。
私は慌てて意識をヨルムンガンドに集中させ、〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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種族:焔漿龍・ヨルムンガンド
状態:大出血
ランク:B+++
LV:100/100(MAX)
HP:569/888(毎秒-10ダメージ)
MP:888/888
攻撃力:666
防御力:666
魔法力:666
速度:666
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そして私は気づいた。龍は『強がり』だという事を...
「ナンカ、シタノカ?」
そして私は理解した。龍の性格を...
「何してくれてんだ!!そこのクソガキ共!!!」
男の声が聞こえる。若い男の声だ。
「あなた!皆をどこにやったのです!!」
ずっと黙り込んでいたヒューリが突然声を荒げる。振り返ると、彼女は憤怒の表情を露にし、ある一点を睨み付けていた。彼女の視線の先に目を向けてみると、そこには声の主と思われる、一人の男が立っていた。
焔漿龍の真横に平然と立つその男は、人間というより、リザードマンに近い容姿を持ち合わせていた。私を睨むその瞳は病的なまでに白く、口元には緑色の液体が付着していた。
「ヒューリさん...あの人って...」
「はい...あの男です..私の友人を攫った...」
そう言う事か...何故こんな所にヒューリの友人がいるのか疑問に思っていたけど、あの男に連れてこられたという事だったのか。
「うるせぇ!クソガキ!!お前!僕を怒らしてどうな...」
私達に発せられた言葉はチンピラの戯言にしか聞こえない物だった。しかし、彼は突然何かに気付いたかのように言葉を止めてしまった。瞳を大きく開き、口をパクパクさせたその表情は何か恐ろしい物でも見てしまったかのようだった。
そして男はいった。
「魔王候補が...何故こんな所に...!」
『魔王』という言葉には聞き覚えがある。それは言わずと魔王スキルの事だ。私は彼の言葉に強く反応してしまい、少し固まってしまった。
状況を再確認した私は即座に意識をあの男に集中させ、〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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名前:『グレゴリー』
種族:ラグロン
状態:通常
年齢:29
ランク:E+
LV:23/25
HP:112/56
MP:104/52
攻撃力:51(+333%)(+111)
防御力:67(+333%)
魔法力:48(+333%)
速度:42(+333%)
装備:〖焔漿龍の剣:価値B+〗
魔王スキル:
〖緊那羅:Lv2〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv6〗〖アンハーモニー:Lv3〗
耐性スキル:
〖水属性耐性:Lv2〗〖物理耐性:Lv3〗〖雷属性耐性:Lv3〗〖風属性耐性:Lv3〗〖火属性耐性:Lv4〗〖熱耐性:Lv5〗〖闇属性耐性:Lv4〗
特性スキル:
〖鑑定:Lv5〗〖ステータス閲覧:Lv4〗〖念話:Lv2〗〖闘諍協奏曲第三番:Lv--〗
称号スキル:
〖神の卵:Lv--〗〖焔漿龍の加護:Lv--〗
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二人目の魔王スキル所有者。お母様以外にもいるのではないかと予想はしていたけど、まさかこんな所で会うなど思ってもいなかった。
ただ、少しステータスがおかしい。以前会った魔王スキルの所有者、つまりお母様はこんな男とは比べ物にならないぐらい強かったし、私自身のステータス値もかなり強力な物だ。
ただこの男のステータス値は弱すぎる。バフ抜きだとここら辺の魔物にも太刀打ちできないだろう。
「お前!何者だ!!」
男は吠える。何者だと言われても、レーナとしか名乗れない私に何を求めているのだろうか?
「あなたこそ、何者なのです!?」
〖ステータス閲覧〗は持っている。あの男は私の強さを明確に把握したはずだ、変に私に戦いを挑んだりしないだろう。あの龍はしらないが...
「オトコ、ワレとトモニ、アヤツをケス。」
予想通り龍神様はプライドが高い輩のようだ。〖断罪之光〗数発で簡単に倒せそうだが、余り長期戦には持っていけない...〖竜人化〗も〖稲光〗もあと何分もつか分からない。
「グレゴリーさん...ですよね...獣人達を攫ったのは貴方ですよね、皆を解放してください!」
「お前!何故獣人共に肩入れしている!?」
男の顔には困惑と憤怒の表情が混ざっていた。そのおぞましい瞳は歪み、私は軽く恐怖を覚えてしまった。
「質問に答えてください!!」
恐怖を覚えてしまった己に少し苛立ちを覚え、私は声を荒げてしまった。そんな圧倒的ステータスを持つ私に怒鳴られたグレゴリーは、額に汗を垂らし、顔を更に歪めていた。
「ソレナラ、ワレがクラッタ。」
それを聞いた瞬間、私は手加減という物を記憶から消した。彼らは死刑だ。人を殺したのだ、人権の剝奪は当たり前だ。そんな言葉が、私の頭の中で響いた。
「なにいってんだ!!会話は僕に任せてればいいんだよ!!」
「嘘..でしょ...」
グレゴリーは声を上げる。ヒューリは泣き叫ぶ。しかし、私の耳には届かない。別に意識を失っていたとか、怒りのあまり聴覚がおかしくなったとか、そう言う訳ではない。その証拠に、私は今、笑っている。
「丁度いいです。実験台になってもらいましょう。」
悪魔の声が聞こえる。その声は私に良く似ていたが、私とは思えないおぞましさを放っていた。そして悪魔は続ける。
「まだ試せてないスキルがあったんですよ。」
「レーナさん?どうしたんですか?」
ヒューリの声は妙に震えていた。『どうしたのですか』と言われても、別にどこも痛くないし、変な行動を取った覚えもない。
「どうしたもなにも!罪人の処刑ですよ!!」
私は高笑いしていた。その声は先程の悪魔の物と似ている。いや、一致している。
「まて、お前!!魔王候補ならわかるだろう!!龍に何かあったら...」
「先ずは...以前の私のお気に入りからいきましょうか〖天候支配」!!」
風...ではなく、台風に近い物が洞窟内を荒らす。何かを訴えようとしていた男の声も途絶え、龍神様の雄叫びが洞窟内に響いた。




