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ギルドでの対談

アンタナの襲撃から数分後。お父様、メイさん、アメルさん、ケーニングさん、合流したベインさんと私はギルドまで足を運んでいた。

本来なら貴族街で色々と話をした方が情報が漏れにくいのでいいのだが、メイさん達を、特にアメルさんを貴族街に行かせると大変な事になりそうだとお父様に話したらギルドの一室を借りる事になった。


「本当に娘を助けてくれてありがとう。」


ギルドの一室にて、貴族絶対社会のこの帝国で公爵であるお父様と、とある冒険者の対談が行なわれていた。

その第一声を放ったのは言わずとお父様だった。深々と頭を下げ、平民である冒険者に感謝の意を表すその姿は、私が見てきた『帝国貴族』と似ても似つかない物で私は少し安心した。

お父様は建前とかを気にする人ではない、これは本心なのだろう。まぁ行方不明になっていた一人娘を見つけ出してくれた恩人なのだからこれが普通の対応なのだろうが、『帝国貴族』としては少し異質な物だったのかもしれない。

もし他の『帝国貴族』がお父様と同じ立場にいたのなら、礼金でも渡してそれで終わりだろう。中には礼金すら払わない『帝国貴族』だっているかもしれない。とにかく彼らは今のお父様の様に頭を下げる事は絶対にないであろう。


「けっ剣聖様!!そんな!頭をお上げください!!」


お父様に続いて声を放ったのはメイさんだ。この対談にはメイさん、ベインさん、アメルさんあとケーニングさんも参加しているが、ギルマスはまだ貴族街にいて戻ってないらしい。なのでここでの冒険者側の発言のほとんどはメイさんが担当する事になっているのだろう。


「本当に助けてくれてありがとうございました。」


そんなメイさんの焦る姿を見た私は、追い詰めるつもりではないが、お父様に習って感謝の意を表し、頭を下げる事にした。


そんな貴族父娘の姿を目の当たりにしたメイさんは絶句してしまっていた。どんな表情をしているのかは頭を下げているので見えないが、彼女の困惑の瞳と痙攣する手足は容易に想像出来た。


「それで...あの..ここでどの様な話を...」


そんなメイさんを生で見たベインさんは彼女だけでは荷が重すぎると判断したのか、恐る恐る口を開いた。


するとゆっくりと頭を上げるお父様の姿が尻目で確認できたので、私もそれに続く事にした。


「申し訳ないが、少しだけ聞きたい事があるのだ。半年間どこにいたのかは娘に聞くとして..あの邪竜の事だ。」

「邪竜..言いますと...あのドラゴンの事ですよね...」


お父様が口にしたのは私を何処で発見したとか、礼金はいつ払えばいいのかとかそう話ではなく、邪竜アンタナの事だった。

しかし、私はその質問に疑問を覚えた。何故一冒険者である彼らに突然現れた邪竜の事を聞くのだろうか?その答えを彼らが知ってるはずもないだろうに。それにこの場で最も情報に精通しているのはお父様自身だ。私と彼らにしか知りえない森の中での事ならまだしも、邪竜アンタナの事を聞くなんて見当違いだ。


「確かこの町のモンスターによる被害はここ20年は皆無だったはずだ。それなのに私と娘が来た途端にこれだ。この町に住んでる君達なら何か分かるのではないかと思ってな。」


お父様は身を乗り出し、鋭く、それでいて優しい眼差しを彼らに向けながら淡々と語った。


見当違いだとは思ったが確かに不自然だ。20年もの間モンスターの被害のなかった町に私が来た途端Cランクの邪竜が町に何の目的もなくやって来るなんておかしい。それに、もしお父様が来ていなかったら今頃ヘップバーンの町は地図から消えていただろう。


「お嬢様を保護したのがデルラジア大森林と言う場所なのですが、ご存知の通りそこにはCランク上位のモンスターも多く存在しております。もし、そこにいたモンスターがお嬢様の事を気に留めていたとしたら..ここまで取り戻しに来た..のかもしれません。」


メイさんはお父様の問いに真っ直ぐな眼差しで答えていた。

確かにその可能性はある、ただ可能性の話だ。それにこの説には大きな穴がある、それはメイさん達が知りえない事だが、大きな穴だ...


「娘の恩人である君達には話してもいいかもしれないな...」


大きくため息をついたお父様は視線を降ろし、寂しそうな瞳で彼らを見つめ直した。


「半年前、娘が乗っていた馬車はドラゴンの襲撃にあったんだ。残っていた覇気からしてあの邪竜とは別物だろうが、恐らくは同じ飛竜だ。」


その話を聞いた途端メイさん達は目の色を変えた。それも無理ないだろう、そもそもドラゴンは数が少ない。そんなドラゴンが偶々同じ幼女を半年の間に2回襲撃するなんて有り得ないと言っても過言ではない。


ただそんな有り得ない事を実現可能とする物を私は知っている。魔王スキル〖竜神〗だ。

このスキルはかなり便利なチートスキルだ。ただそんなチートスキルをリスクなしで背負える物なのだろうか?『大きな力には大きな代償がつく』そんな事を何処かで聞いた事がある気がする。もしそれが本当なら鑑定さんでは把握出来なかった何かがあのスキルにあるのかもしれない。


「この話は内密にお願いしたいのだが...私は正直フェレッチェリー家を疑っている。」


お父様は今までの優しさを何処かに脱ぎ捨て、鋭く、殺意を剝き出しにした眼差しで冒険者達を睨んだ。その圧倒的な威圧感を平民である彼らが耐えられるはずもなく、メイさんとアメルさんは顔を蒼白とさせ、小刻みに震えていた。


「実は..レーナ様とフェレッチェリー家にお邪魔した時、ある話を耳にしました。」


ただ一人、真剣な眼差しでお父様を見つめ返していたベインさんはゆっくりと口を開き、恐る恐る身を前に寄せた。


「ドラゴンの準備は出来ているか?と...」

「それは本当か!!!」


ゆっくりと口にしたその言葉は信じられない物だった。もしベインさんの言ってる事が正しければ間違いなく今回の犯人はフェレッチェリー家だ。

ただ私を目的として計画していた事だとしたらいくら何でも早すぎる。フェレッチェリー家が『私がこの町に来た』という情報を手に入れたのは私がフローリーさんと会う1時間程前のはずだ。仮にこの町に着いて直ぐに私の存在を認識する事ができていたとしたも、2,3時間程度の違いにしかならない。半日にもならない時間で邪竜が用意出来るとは到底思えない。

ただお父様はそんな私の予想をひっくり返す様な、確信を持った瞳ベインさんを見つめていた。


「しかし、お父様..もしそれが本当なら動きが早すぎると思うのですが...」


私は見たこともない様なお父様の姿に少し怯えながら恐る恐るお父様を見上げ、口を開いた。


「目的がレーナだったなら物理的に不可能だろうな...」


お父様は深くため息を吐き、少し悔しそうな表情を浮かべながら語ってくれた。


「ならお父様...フェレッチェリー家の目的というのは...」

「恐らくは私だろうな、厳密に言えばアルフォード家そのものだろう。」


私はそんなお父様の言葉を聞いて言葉を失ってしまった。

アルフォード家の絶滅でも企んでいるとでも言うのか?でも何のために...思い当たる節がないと言ったら嘘になるが、あれだけでここまでするとは思えない...それともこれが『帝国貴族』というものなのだろうか...


「レーナ。3年前のお披露目会の事を覚えているか?あの事でちょっとしたいざこざがあってな、今日呼び出されたんだよ、この町に。」


3年前のお披露目会...忘れるはずもない、私が初めて『帝国貴族』と言う物を文字通り身をもって体験した場所だ。

もし本当にあの事が原因でこんな事をするような貴族なら野放しに出来ない。無論、どんな理由があったとしても邪竜を町に放つなんて事は許される行為ではないが。


その後は礼金の話やら私がどうしていたのかの話を割とスムーズに済ませ、お父様は一人、座っていた椅子から立ち上がった。


「私はここの領主への報告とフレッチェリー家に『あいさつ』しに行くからレーナはここで待っててくれないか?」


私はそんなお父様の言葉に無言で頷いた。何故ならもし、お父様が一緒にフレッチェリー家に挨拶しに行くぞと言っても全力で拒否したからだ。私としてもここの貴族街より町の方が全然安心できる。


「申し訳ないがもう少しだけ娘を見ていて貰えないだろうか..?」

「勿論ですとも!私にお任せください!!」


お父様の優し気な微笑みに答えたのはメイさんだった。元気よく右手を上げ、キラキラとした瞳で答えていた。色々と話している間にお父様と言う人物を理解できたのだろうか?


と言う訳で私はギルドで待っている事になったが、その間私は町をぶらつく事にした。こんな機会絶対にないだろう。今の私は完全な町娘の格好をしているのだ!アンタナとの戦闘である程度汚れてしまってはいるが、大体はもう既にギルドの人の〖クリーン〗で綺麗になってる。

ただ一つだけ問題があった...金がないのだ。メイさん達に頼めばある程度は貸してくれるだろうが、いつまた会えるかも分からない幼女に金を貸してと言われても困るだけだろう。なので私は仕方なく町をぶらつくだけにした。


やはり町というのは良い...森にいた頃とは比べるまでもないが、屋敷にいた時に味わえなかった物がここにはある。私の嗅覚を刺激する肉や新鮮な野菜の匂い、それらが混ざり合い絶妙なハーモニーを奏でている。それに、数多く立ち並ぶ商店街や人の群れ、どれも私にとっては新鮮な物で興味をそそった。後ろから付いて来ていたメイさん達は不安そうにこちらを見つめていた気がするが、私は構わず町を歩き回った。


それから1時間程町を堪能した私はお父様がギルドに戻った事を聞き、直ぐに戻る事にした。


「レーナ。どこ行ってたんだ?馬車の用意も出来てるし、そろそろ帰るぞ。」


ギルドの一室。私達が対談を行っていた場所でお父様は待っていた。ほのかな笑顔を見せながらこちらを見つめるその姿は、私が前世で夢見ていた『貴族』に相応しい物であろう。


「すみませんお父様。町に来たのが初めてでしたので、少しはしゃいでしまいました。それで帰るって...」

「屋敷に帰るに決まってるだろ。」


私が不思議そうにお父様を見上げていると、お父様は腰掛けていた椅子から立ち上がり、そう言ってくれた。


帰るって...やっと..帰れるの..?レイシアさんや屋敷のみんなにまた会えるの..?


ただそれは同時にメイさん達との別れを意味する。私は何とも言えない気持のまま部屋を後にするお父様について行った。

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