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デルラジア洞窟の覇王

完全に肉体を取り戻したスカル・リッチとの睨み合いが続く。


どうすればいいの!もうそんな都合がいい作戦なんてないし..同じ作戦が通用するほど相手がバカだとも思わない..いや、相手..リアルに脳みそないし、ワンチャンいけるんじゃない!?

でも失敗したら文字通り命取りになるし、やめておこう...


いくら考えても作戦を思いつかないでいる私に痺れを切らしたのか、なんとスカル・リッチ自ら距離を詰めてきた。

私の予想だと相手はカウンタータイプ..事実今までスカル・リッチから距離を詰めて来ることなんてなかったし、遠距離攻撃を多用してた。


私が予想だにしてなかったスカル・リッチの行動に戸惑ってる間にも、スカル・リッチはどんどん距離を縮めてくる。


〖ライトニングスピード〗を使えば容易に避けられる攻撃だ。でもロスとベインさんは...


「〖ハイスラッシュ〗!!!!」


私はスカル・リッチをそのまま迎え撃つ事にした。分かってる、このままじゃ相手の思う壺だ。〖グラビティ〗を使われて終わりかもしれない。もしかしたら私だけ一旦距離を取ってから迎え撃った方が勝算あったかもしれない。でもそれだとロスとベインさんが...


私の放った〖ハイスラッシュ〗は勢い良く、正確にスカル・リッチへと迫っていった。

しかし、そんな攻撃をスカル・リッチは更に速度を上げ、簡単に避けた。これは〖シャドウスピード〗だろう。

でもこれは好機だ。更に速度を上げたスカル・リッチは私の半径10メートル以内..つまり〖気象制御〗の発動圏内だ!!


「〖気象せ..」

「〖グラビティ〗...」


私が右手をスカル・リッチへとかざし、〖気象制御〗を発動させようとした瞬間、スカル・リッチはその顔を少しだけ上げ、私をない目でにらみながら呟いた...〖グラビティ〗と...


次の瞬間、ロス、ベインさんと私は勢い良く地面に体を打ち付け、完全に動けなくなってしまった。


しまった..〖グラビティ:Lv7〗...少し甘く見てたかもしれない。自分で食らってみると予想以上にキツイ..!!


動けないのは勿論、声も上げることができなかった。私達はただ、地面に這いつくばりながらスタスタとゆっくり近づいてくる足音に屈服していた。


「〖光矢〗!!」


私が全てを諦めかけようとしていると、後方から女性の声が聞こえてきた。メイさんだ。

そのメイさんの掛け声と共に、物凄い光りが目の前で飛び散っていった。すると少しではあるが、〖グラビティ〗の威力が弱まった気がした。

私はその一瞬を見逃さす、手のひらを上に向けた。


「〖気象制御〗!」


私は先ず、半径10メートル以内の地面から風を生成し〖グラビティ〗に負けない位の力でロスやベインさん、私を含めた地面にあるもの全て持ち上げた。

その半径10メートル以内に入っていたスカル・リッチは直ぐに〖グラビティ〗を解除し、私から距離を取ろうとしていたが、もう遅い。


私はスカル・リッチの周りのみに風を集中させ、全方向からスカル・リッチを押し潰す様にして風を生成させた。


「がぁァァ...」


苦しそうなスカル・リッチのうめき声が聞こえる..でもチートスキルの一つ位じゃあCランクモンスターは倒せないだろう。


「〖ライトニングスピード〗!!」


私は覚悟を決め、スカル・リッチへと一気に距離を詰めた。光の速さとほぼ同等の速さで迫った私はスカル・リッチの脇腹へと手をかざした。


「〖電撃〗!!!!」


私の最大の攻撃スキル、〖電撃〗である。私はその熱の力を使い、容赦なく骨の髄まで燃えつくしていった。


【経験値34を獲得ましました。】

【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値34を獲得ました。】


経験値獲得の通知が届く。

終わったのか...?Cランクモンスターを私は倒したのか...


「君!!後ろだ!!!!」


後方からベインさんの声が響く。後ろ?まだ敵がいたのか!?

次の瞬間、私は背中に焼けるような痛みを感じ、急ぎ敵を確認するべく、振り返った。


すると後ろは倒したはずのスカル・リッチが私の背中にあの黒剣を突き刺してるのが見えた。


「〖気象制御〗..!」


なんで生きてんのか分かんないけど..今はとにかく距離を取らないと...

私は巻き起こした風を一気にスカル・リッチへと叩き付け、それをもろに受けたスカル・リッチはメイさん達からは少し離れた後方へと飛んで行った。


やばい..気..失いそう..

私は辛うじてその場で膝を付き、スカル・リッチを睨み付けた。すると近くまで来ていたベインさんとロスが私に近づいてきた。


「危ない!!」


私を見ながらこちらに走ってきたベインさんは何故か顔を青ざめて剣を振りかぶつていた。私は違和感に気づき、後ろを振り返ってみると、そこには前に見た日本人形..ククラ・ローメイジより一回り大きいサイズの日本人形が私に向かって手をかざしていた。


激痛のあまり反応出来ないでいた私の背後に勢い良く剣を振り下ろしたベインさんは、ギリギリでその日本人形に距離を取らせることに成功したようだ。


私は急ぎ、離れた日本人形に意識を集中させ、〖ステータス閲覧〗を発動させた。


--------------------------------------

 種族:ククラ・ローリッチ

 状態:通常

ランク:D+

  LV:32/40


  HP:124/124

  MP:147/147

攻撃力:68

防御力:87

魔法力:128

 速度:102


通常スキル:

〖シャドウスピード:Lv5〗〖ファイアウォール:Lv4〗〖黒炎球:Lv5〗〖闇槍:Lv5〗〖ファイアボール:Lv5〗〖ポイゾンタッチ:Lv6〗〖グラビティ:Lv4〗〖毒霧:Lv4〗


耐性スキル:

〖闇属性無効:Lv--〗【火属性耐性:Lv4〗〖物理耐性:Lv3〗〖呪い無効:Lv--〗


特性スキル:

〖アンデッドフォグ:Lv6〗〖念話:Lv4〗〖暗視:Lv4〗


称号スキル:

〖デルラジア洞窟の魔物:Lv--〗〖デルラジアの覇王の配下:Lv--〗〖霧の支配者:Lv--〗

--------------------------------------


嘘でしょ..十分強いじゃない...しかもいつの間にここにいたの。


「嘘...だろ...」


後ろからベインさんの絶望の声が聞こえる。私は何が起こったのかを確認する為後ろを向くと、そこにはククラ・ローリッチやククラ・ローメイジに似た日本人形が何体も出現していた。

そのおぞましい数のククラ系統のアンデッド達はスカル・リッチを取り囲む様にして私達を睨んでいた。


急ぎ〖ステータス閲覧〗を使い、確認してみると、『ククラ・ローリッチ』や『ククラ・ローメイジ』を含めた『ククラ・メイジ』などのDランク下位から上位までのアンデッドの高レベル体が集まっていた。


なるほどねやっと分かったよ、あの時の経験値獲得の意味...あれはスカル・リッチのスキル〖身代わり〗だろう。どうにかしてククラ系統のアンデッドを集めて身代わりにしたんだ。

でもどうやって集めたんだ?スカル・リッチは大声も上げてなかったし、そもそも何処から湧いて出てきたのかも分からない。

もしかしてスキル?一瞬でアンデッドを生み出すスキルがあるとしたら?あるとしたらアンデッドの王様でないと..〖デルラジア洞窟の覇王:Lv--〗か...

あの称号スキル..何の為にあるんだろうとは疑問に思っていたけど、まさかこんなトンデモスキルだったとはね...


でも..もしこのアンデッドがスカル・リッチの手によって一時的に生み出されただけの存在でしかなかったら?もしそうならスカル・リッチの死亡は全員の戦闘不能を意味するのでは!?


私はそう考えると、さっきまで動く気すらなかった自分の両足を上げ、スカル・リッチを睨み付けた。


「ベインさん!ザコは任せてもいいですか?」


この状況でザコというのはDランク上位も含めた無数のアンデッドの事を指す。そのアンデッドはベインさんと同等、もしくはそれ以上のステータスを持ってるものまでおり、とてもザコとは呼べるものではなかった。


「あぁ、問題ない!」


私に心配をかけない為か、ベインさんは少し笑みを浮かべならそう答えた。

ロスの手によって既に動けるまで回復していた私は〖ライトニングスピード〗を使い、一気にスカル・リッチへと迫っていった。

その行動に対して動こうとするククラ系統のアンデッドは一匹もいなかった。私との戦いはボスであるスカル・リッチにゆだねたのか...それともただ単に私の動きが見えてなかったのかは定かではないが、好都合だ。


「〖気象制御〗!!!!」


私はスカル・リッチの半径10メートル以内に入る前に〖気象制御〗を発動させ、できるだけベインさんの負担を和らげる様にと周りのククラ系統のアンデッド達を風で押しつぶしながら迫っていった。


一瞬でスカル・リッチの半径10メートル以内に到達した私は次の瞬間、勢い良くスカル・リッチを叩き潰し、更に距離を詰めていった。


「〖グラビティ〗..!」


一瞬...あの醜いスカル・リッチの骸骨が見えた気がした。すると次の瞬間、私は物凄い重力で体を押しつぶされるのを感じた。

私はそれに抗おうと必死で〖気象制御〗の威力を上げていく。


私の姿勢はかなり低くなり、今にも地面に叩き付けられそうになるが、今回だけはそうもいかない。ここで決着をつける!

私はそう覚悟し、右手を前にだした。


「〖電熱〗!!!!」


この戦闘で何回使っただろうか...私の最大の攻撃スキル〖電熱〗。一発目は完全に回復され、二発目は身代わりを立てられてしまった。多分今回が最後だろう。生きるか死ぬか。ここで決まる。


「〖電熱〗!!〖電熱〗!!〖電撃〗!!〖電撃〗!〖電撃〗!!!!」


やっとの思いでスカル・リッチに右手をかざし、私は声が枯れるまでそう叫び続けた..熱量が増し、自分の手が、腕が悲鳴を上げていた。ただそれと同時にスカル・リッチも、再度確認した本物のスカル・リッチも悲鳴の声を上げ、骨の髄まで焼き尽くされていた。


右手が痛い!焼き千切れそう..!!


そんな泣き言を心の中で抑え、私は〖電撃〗と叫び続けた。


【経験値102を獲得ましました。】

【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値102を獲得ました。】


麻痺していた私の思考に..頭の中に、経験値獲得の通知が届く、今までとは桁が違う、大量の経験値だ。

それと同時に目の前のスカル・リッチがチリと化すのが見えた。周りのククラ系統のアンデッドも噓のように姿を消していた。

ただ虚しく、右手が赤く腫れていた。


「グルるぅぅぅぅ!!!」

「嘘だろ...この洞窟の覇王を...やったのか..?」


地面に膝をついてしまった私に一番に駆け寄ってきてくれたのはロスだった。ロスは私の腫れた右手を見て直ぐに治療してくれた。今までとは比べ物にならない位の光の量が私の身体を包み込んだ。多分これが〖リジェネレーション〗というやつなのだろう。初めて体験した。

その光が晴れるのには少し時間がかかったが、今までの傷が噓のように消え、腫れていた右手も元通りになっていた。ただ、さすがの〖リジェネレーション〗も疲労感や体力までは回復出来ないらしく、まだ私は立ち上がることができなかった。


後ろに目を向けてみるとそこには同じ様にうずくまったベインさんと彼に駆け寄ってくる他の3人の姿もあった。彼の身体はあちこちが傷ついており、それで血が足りてるのかと不思議に思うほど血を垂らしていた。


「ロス、ベインさんの治療もお願い。」


それだけ言うとロスは無言で頷き、ベインさんへと駆け寄って〖リジェネレーション〗を使ってくれた。


「ありがとう、助かったよ...」


ベインさんはロスにお礼の言葉を送ると、直ぐに立ち上がり私の方へと歩いてきた。合流した他の3人も不安げな顔をしながら私に近づいてくる。

無言で一歩一歩近づいてくる彼らをじっと見つめていた私の心臓は加速し、妙な緊張感がその場を支配した。

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