ベイン・レーガンとスカル・リッチ
しばらくの間スカル・リッチとの睨み合いが続き、先に痺れを切らしたスカル・リッチはその大きなスタッフを私達に向け、その先端から大きな黒い炎の様な物を生み出した。多分あれは〖黒炎球〗だろう。スキルレベルもそれなりに高かったし、ここは避けるしかないみたいだ。
「二人とも急いで避けて下さい!これは危険です!」
私がそう声をかけると、二刀流のアメルさんが少し不思議そうな顔をしながらもその場から移動し、大柄のベインさんはもう既に行動を起こしているところだった。
私とロスもすぐさまその場から立ち去り、距離を取る事にした。すると、〖黒炎球〗は私よりも遥かに大きくなり、信じられない速さでこちらに迫ってきた。
速度で優ってる私と既に行動を起こしていたベインさんはともかく、アメルさんは避けられそうにない。仕方ない..いきなりではあるが、奥義を使う事にしよう。
「〖気象制御〗!!!」
〖気象制御〗は〖風操作〗の進化バージョンだ。制御できる区域も一気に半径10メートル以内となり、ほぼ無敵のチートスキルである。ただMP消費量は言うまでもなく、持続的にかなりの量を吸われてしまう。
私は少し強めの風をアメルさんに向けて放ち、ギリギリで〖黒炎球〗を交わさせる事ができた。
「アメル!大丈夫か!!」
〖黒炎球〗は避けられたものの、私の風でバランスを大きく崩してしまったアメルさんはその場で倒れてしまったのである。それに気づいたベインさんは一瞬だけアメルさんに目を向け、確認の言葉を送った。
「あぁ大丈夫そうだ!まだ行ける!!」
この人本当に大丈夫だろうか...何だか足手まといにしかならない気がするんだが、気のせいだろうか...
私は背中を預ける仲間(?)の行動を見て少しだけ不安を覚えながら、再びスカル・リッチへと目を向けた。
相手は〖グラビティ〗を含めた怪しげなスキルをいくつも持っている。無理に仕掛けたらこちらがケガをする。
「〖水刃球〗!!!」
私は覚悟を決め、手のひらをスカル・リッチへと向けながらそう叫んだ。一番効率がよくダメージが入りそうなのはやはり近距離攻撃だ。近距離型の攻撃スキルのレベルの方が他のと比べて高いし、何より当てやすい。
ただ距離を詰めようものなら〖グラビティ〗で一発KOされてしまう可能性だって全然ある。だから私は遠距離攻撃で使い慣れた〖水刃球〗を選んだ。私の手のひらで生成された水の刃の塊は勢い良くスカル・リッチへと迫っていき、何と直撃した。これが速度差というやつなのだろうか。
続けて〖飛行〗状態のロスが私の半分位はある、まん丸い氷を生み出していた。これが〖氷弾〗というやつなのだろうか。初めて見るな。ロスの周りに生み出されたそれは私の攻撃を受けたばかりのスカル・リッチへと迫っていった。
ただこれも速度差、もとい、ランク差なのだろうか。かなりの勢いで放たれたそれはあっさりと避けられてしまった。ただ、そんな事は予想してたり通りだ、ロスの攻撃は単なる誘い...狙いは一瞬だけでも隙を見せること!
「〖水流造形〗!!」
そう、狙いはさっき放った水を使った剣での攻撃である。〖水流造形〗それは進化してから私が授かった新たなチートスキルである。水さえあれば何でも作り出すことができる。こんな便利スキルがあっていいのだろうか。
私は自分がチートスキルに恵まれてる事を自覚し、ロスの攻撃を避けて隙だらけのスカル・リッチへと生成したばかりの剣を突き刺そうとしたが、そんな攻撃をスカル・リッチは圧倒的なスピードであっさりとかわしてしまった。
私のチートスキルの一つである〖ライトニングスピード〗よりは劣るが、私の慣れない遠距離攻撃を避けるのには十分過ぎる速さだった。これは恐らく〖シャドウスピード〗だろう...
「君は一体...」
遠距離攻撃という手段を失った私は歯ぎしりしながら悔しさを露わにしてると、後ろから女性の声がしてきた。多分メイさんだろう。
「さっきも言いましたが話は後です!今は目の前の敵に集中...」
「彼女の言う通りだ!気を引き締めろ!!!」
私が最後まで言葉を終える前にベインさんが凄い迫力で仲間に活を入れてきた。その迫力に圧倒されてCランク下位の化け物になった私でさえ少し怯えてしまった。まぁ元は6歳の女の子なんだし、仕方ないのかもしれないけど。
ただ、それと同時にいいことが思いついた。ベインさん...この人なら使えるかもしれないと、そう思ったのだ。
「誰か剣を一本貸してくれませんか?」
取り敢えず私は剣が欲しかった。武器補正もそうだけど、剣があるとないとでは〖ハイスラッシュ〗の威力が違うだろう。私はそう思いながら辺りを見回すと、二刀流のアメルさんが剣を一本よこしてくれた。
「ありがとうございます!!」
私が鋭い目つきで感謝の言葉を述べると、近くいにいたアメルさんはこくりと頷き、少し離れたところで一本の剣を構えた。
「ベインさん!ロスの上に乗って貰ってもいいですか!?」
「グルゥゥゥゥ!!??」
「ロス?あぁそのドラゴンか、分かった。」
私はすぐさまベインさんに声を掛け、ロスに乗るようにと指示した。ロスは嫌そうな顔を向けていたが仕方ない、ここは戦場だ。生きるか死ぬか、それしかない所でわがままを言われては困る。それと正反対の反応を示したベインさんは多分経験が違うのだろう。見知らぬ少女が何故自分の名前を知っているのか?と言わんばかりの顔が一瞬見えたが、直ぐに表情を戻し、移動を開始してくれた。
ベインさんが未だに不機嫌そうな顔をしているロスの上にまたがると、私はその後ろで彼らに手をかざしていた。
「ロス!直ぐに翼を広げて!!!〖気象制御〗!!」
私の声を聞いてロスはすぐさまその大きな翼を広げた。すると、私の周りの風が少しずつ強くなり、勢いを増したその風は勢い良くロスへと迫っていった。
勢いをつけた私の〖気象制御〗にロスが逆らえるはずもなく、あっけなくスカル・リッチの方へと吹き飛んでいった。
「なっ!!」
ベインさんの驚きの声が上がったが気にしないでおこう。
予想とは少し違う飛び方だけど問題ないだろう。何故なら私の目的はおとり作戦なのだから。〖グラビティ〗のアクションが見られない場合は〖ライトニングスピード〗で仕掛ける!!
すると、スカル・リッチは少しだけ頭を上げ、フードの中を見せてきた。その中はその名の通りスカルだった。そう、骸骨だったのである。
「〖グラビティ〗....」
何だか嫌な声が聞こえた気がする。それは枯れた様な声だった。ここにいる冒険者やロス、ましてや私のものでもない声は、不気味で少しだけ吐き気がしてきた。
もしかしてあのスカル・リッチが喋ったんじゃ...
そんな事を考えてると、次の瞬間、物凄い威圧感と共に、文字通り飛んで行ったはずのロスとベインさんが地面に這いつくばっていた。
この〖グラビティ〗..ククラ・ローメイジとは比べ物にならない程の威力だぞ...こんな物に引っかかったら確実に殺される...!
すると、スカル・リッチは私に考える暇すら与えず、右手を前にだし、おぞましい黒剣を出しながら少しずつロスとベインさんに近づいていった。
大丈夫だ...落ち着け私!予想より少し〖グラビティ〗の威力が高かったが、計画通り事を進めれば良いんだ!
「〖ハイスラッシュ〗!!〖ハイスラッシュ〗!!〖ハイスラッシュ〗!!続けて〖電撃〗5連発!」
私は只々できるだけ〖ハイスラッシュ〗を放った。何故かって?それは〖グラビティ〗の中で問題なく突き進む事の出来るスキルだからよ。他の水や炎のスキルなら簡単に地面に叩き付けられてしまうし。〖電撃〗を使ったのも同じ理由さ。光の速さで突き進むこの攻撃は叩き付けられる前に敵に到達する。そのかわり余りダメージは入らないけど、注意を引くのには十分なはずだ。
3撃放った〖ハイスラッシュ〗は1撃目を簡単に避けられ、2撃目をギリギリで避けられてしまった。ただ3撃目は〖電撃〗の効果もあってか直撃した。空中で〖ハイスラッシュ〗の直撃を食らったスカル・リッチは大きな隙を見せ、〖グラビティ〗を解除した。
「ロス!ベインさん!直ぐに距離を取って立て直して下さい!!〖ライトニングスピード〗!!!!」
私は直ぐに立ち上がろうとするロスとベインさんに声をかけると、大きな隙を見せたスカル・リッチに〖ライトニングスピード〗を使い、迫っていった。
〖電撃〗といい勝負になるくらいの速さになった私は、スカル・リッチに反応する暇すら与えず、彼の脇腹に触れた。
「〖電熱〗!」
私の最大の攻撃スキル〖電熱〗である。持続的な火属性ダメージを与えるだけでなく。強烈な物理ダメージに流血や骨折などという状態異常までつけてしまう凄いスキルなのだ。その欠点としては相手に直接触れなければならないことだが、〖ライトニングスピード〗を使えばそう難しい事でもない。
まぁ相手が骸骨という事もあって流血の状態異常は諦めた方がいいと思うが大した問題でもない。
「続けて〖ハイスラッシュ〗!!」
〖ライトニングスピード〗のまま至近距離で放たれた〖ハイスラッシュ〗は容赦なくスカル・リッチの右肩へと迫り、切り落とした。
そう、あのスカル・リッチの右肩から下を無効化したのだ。多分もうこの作戦は通じない、でも十分な成果だ。私は笑みをこぼしながら一旦スカル・リッチから距離を取る事にした。
「君!ケガはないか!」
距離を取った私に声をかけてくれたのはベインさんである。ちなみにアメルさんは自分には何もできないと悟ったのか、後ろで控えていたケーニングさんやメイさんと合流していた。
「はい!問題ないです。」
私はすぐさまそう答えた。事実痛い所もないし、HP残量もまだまだ残っている。相手の腕は吹き飛んでおり、現状はこちらが有利だ。
だが、少し..嫌な予感がした。
皮肉なことにその嫌な予感は的中したようで、スカル・リッチはこちらに骸骨を向けていた。すると次の瞬間、吹き飛ばしたはずの腕..もとい、右腕の骨が再生していった。
完全に忘れてた!二番目に警戒すべきだった〖リジェネレーション〗!
何で何時も肝心な時に肝心なことを忘れちゃうんだろう...




