4人の冒険者
洞窟の中は暗く、まともに歩くのも大変だった。明かりは既に遠ざかっている出口頼み。そんな中私は自分の火属性スキル〖爆炎球〗を手のひらに残しながら洞窟の中へと走って行くのであった。
男の苦し気な声が聞こえる。女性の悲鳴も聞こえる。そんな状況下でも私は少し興奮していた。それは数か月間人と触れ合ってない私にとっては仕方ない事なのかもしれない。でも目の前に苦しんでいる人がいる、泣き叫んでいる人がいる。興奮している場合ではない、一刻も早く彼らに駆け寄って助けてあげなくてはならない。もっと緊張感を持たなくては...
私は口周りに違和感を覚え、触れてみるとある事に気づいた。私はニヤけていたのだ。私は慌てて歪んだ顔を元に戻し、目の前に意識を集中させた。気付くと奥から本の少しだけ明かりが見えてきた。
「いいから早く行け!!皆死んだら誰が騎士団に報告するんだ!!!!」
さっき聞いたのとは少し違う男の震える声が聞こえてきた。あの明かりがする方からだ。
もう少しだけ走ると洞窟の開けた場所が見えてきた。そこには腹から血を流す細身の男性に、その男性を支えながら泣きじゃくる女性。両手剣をへその位置に持ち真っ直ぐ構える大柄の男に剣を二つ構える細身の男性、計4人の冒険者らしき人達が何かを睨み付けていた。
彼らの目線の先に目を向けて見ると、そこにはローブを被った一人の男がスタッフを持ちながら彼らと睨み合いを続けていた。その男はフードを深くかぶり、顔がよく見えなかった。
私はローブの男に意識を集中させ、〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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種族:スカル・リッチ
状態:通常
ランク:C
LV:58/60
HP:235/293
MP:242/309
攻撃力:132
防御力:103
魔法力:219
速度:143
通常スキル:
〖グラビティ:Lv7〗〖シャドウスピード:Lv6〗〖黒炎球:Lv6〗〖闇剣:Lv6〗〖毒霧:Lv5〗〖リジェネレーション:Lv5〗〖身代わり:Lv5〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv6〗〖雷属性耐性:Lv5〗〖水属性耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv5〗〖毒耐性:Lv6〗〗〖闇属性無効:Lv--〗〖苦痛無効:Lv--〗〖呪い無効:Lv--〗
特性スキル:
〖暗視:Lv5〗
称号スキル:
〖デルラジア洞窟の覇王:Lv--〗
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こいつ...あのアスシリスより強いのか!?
いや、攻撃力や防御力は流石にアスシリスには劣るみたいだけど、あの化け物みたいな魔法力はなに!?ステータス200超えとか見たことないよ!それにチーム臭いスキルがいくつものあるし、流石はCランクと言ったところかなぁ。
「子供!?なんでこんな所に!!!」
「君!ここは危ない!!!早く逃げろ!!!!」
後方でうずくまってる女性と血塗れの男性は私を見て何のアクションを起こす事無く、ただ私を呆然と見つめていた。
しかし、スカル・リッチと対面していた剣士二人は私を見て慌てた様子だった。凄い迫力で剣士二人を睨み付けてたスカル・リッチを完全に無視し、背を向けながら私を説得するその姿は剣士としてどうなのかと疑い持ってしまったが、それも仕方ないのかもしれない。
私は強くなった。Cランク下位の化け物に。しかし、傍から見たら私はただの6歳の少女なのである。薄汚れ、真っ白でなくなったワンピースを着る儚そうな少女。そんな子供が戦場に突っ込もうとしてるのだから敵に背を向けても仕方ない?...のかもしれない。
無論、そんな彼らの必死な声を聞いても私は止まらない。止まるはずがないのだ。数か月間一切触れてなかった人、その温もり、彼らの叫び声ですら私は興奮を覚えたのだ。私は人に飢えていたのかもしれない。いや、そうに違いない。
「どいて下さい!!〖烈風弾〗!!!」
私は彼らの叫び声を完全に無視し、そのまま距離を詰めながら風の弾を手のひらに生み出した。〖烈風弾〗は私の手のひらより一回り大きくなると、剣士二人の間を勢い良く擦り剝け、スカル・リッチへと襲いかかった。
中途半端な状態で生み出した〖烈風弾〗が化け物クラスのCランクモンスターに当たるはずもなく、余裕であっさりと避けられてしまった。
「ロス!後ろの人達の治療をお願い!!そっちが終わったらここの二人も〖ハイヒール〗お願い!!」
「グルゥゥゥゥゥゥ!!」
スカル・リッチが私の攻撃を避け、宙を舞う瞬間を見計らい、ロスへと指示を出した。それを終えると直ぐに意識を戦闘に戻し、スカル・リッチを観察する事にした。
体勢を立て直したスカル・リッチは自分から攻撃する素振りは見せず、じっとこちらの攻撃を待ってるようだった。もしかしたら相手はカウンタータイプなのかもしれない。私が一気に攻めるのを待って〖グラビティ〗を仕掛けてくるかもしれない。もしくはポイゾン・ネルウルフも持ってたスキル〖毒霧〗でこちらを弱体化してから遠距離攻撃を仕掛けるとか。とにかく相手は自分から仕掛ける気はないらしい。
「なに!?ドラゴン!!なんでこんな時に!!!」
私がスカル・リッチと睨み合いをしていると、後ろから女性の悲鳴が聞こえてきた。内容から察するにロスが駆け寄ったのだろう。私は振り向きはしなかったが、尻目で二刀流の剣士の呆然と後方を見つめる姿を見ながら、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。
多分ロスは〖ハイヒール〗か〖リジェネレーション〗のどちらか、もしくは両方を使ったのだろう。倒れていた細身の男性と女性に。
Dランクモンスターであり、人類の敵であるはずのドラゴンが人間に回復魔法を使うなど前代未聞である。本来なら問答無用で討伐対象にされてしまうドラゴンでも、今のロスならこの人達に認めてもらえるかもしれない。これはロスの人間社会での生活の第一歩だ。彼らの思考を読みながらロスと一緒に屋敷で住むのも夢ではない事を知った私は笑みを浮かべずにはいられなかった。
洞窟内に沈黙が走る。こちらの様子を伺っているスカル・リッチは勿論、剣士二人や後方の女性と男性。瀕死の状態に陥っていた男性が一匹のドラゴンによって完全回復したのだ。私は横目でそれを確認し、目を疑った。まさか〖リジェネレーション〗がこんなにすごいものだとは思ってなかった。私が求めていたのは出血を止めること位であったが、ロスは男性の戦闘復帰を可能としたのだ。それに、この状況を信じられないという目でただ呆然と見つめていたのは私だけではない、一緒にいた女性や二刀流の剣士、傷を負っていた本人でさえも、この状況を疑った。
「グルゥゥゥゥ!!」
沈黙を破ったのは私を見つめながら元気よく翼を広げ、鳴き声を上げたロスだった。
「嘘だろ...俺..死んだと思ったのに...」
傷を負ってた男性はゆっくりと起き上がり、女性の隣に座りながら腕をぶんぶんと振り回していた。
「ケーニングさん...良かった..良かったよぅぅ!!」
女性は起き上がる傷を負った男性を見ると、今まで起こっていた衝撃的な出来事をパッと忘れたかのように泣きじゃくり、ケーニングさんに抱き着いた。
「すまなかったな...メイ...」
前も聞いたことがあるような気がするが、その女性はメイさんというそうだ。ケーニングさんとメイさんは付き合ってるのだろうか?何というか、何の抵抗もなく抱き着いたみたいだし、まぁ瀕死の状態の仲間が生き返ったら異性でも抱きつくのかもしれないけど、何というかピンク色のオーラを感じる。この世界ではまだ6歳の私が見ていいものではない気がした。
でもまぁそんな事はどうでもいい、今は目の前のスカル・リッチが重要だ。
「君、あのドラゴンは一体...」
仲間が生き返って気が緩んだのか、二刀流の細身の男性が私に問いかけてきた。剣先を完全に地面に向け、スカル・リッチを注意する素振りもない。この人は本当に冒険者なのだろうか?どっかのパン屋が間違えて剣を焼いてしまったと言った方がまだ納得する。
「話は後です。今は目の前の敵に集中しましょう。ロス!この人達にも〖ハイヒール〗お願い!!」
私はスカル・リッチに意識を集中させたまま、ロスに彼らの回復をするように指示を出した。相手は私よりランク的に上、しかもレベルも上。私単体で勝てる要素が余り見つからないのだ。ならば力を借りるしかない。逃げるという選択肢もあるが、相手はそれを許さないだろう。もしスカル・リッチがあのククラ・ローメイジの上司的存在なら、上司であるスカル・リッチが部下であるククラ・ローメイジもしなかった『見逃す』という行為をするとは思えない。
賭けに出て逃げてもいいが、大きな隙を見せることになる。それだけは避けたい。
そうこうしてると、ロスが駆け寄って来るのが尻目で見えた。ロスは私の後ろで立ち止まり、私の左右にいる二人の剣士を白い光で包み込んだ。私は確認の為、二人のステータスチェックをする事にした。余りにもHP残量が少なかったら無理に戦わせるわけにもいかないし、そもそもステータス値が低すぎて足手まといにしかならないかもしれない。
私は話しかけてきた二刀流の剣士に先ずは意識を集中させ、続けて私が駆け寄ってきた時以外、一瞬たりとも敵から目を話さなかった大柄な両手剣を持つ男性に〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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名前:『アメル・ゲルマン』
種族:ヒューム
状態:通常
年齢:32
LV:29/99
HP:52/67
MP:16/46
攻撃力:68(+15)(+15)
防御力:37(+20)
魔法力:42
速度:64
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名前:『ベイン・レーガン』
種族:ヒューム
状態:通常
年齢:49
LV:37/99
HP:87/97
MP:17/31
攻撃力:79(+30)
防御力:81(+20)
魔法力:38
速度:68
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この人達思った以上にやるみたい。大柄のベインさんなんか武器補正合わせたら防御力と攻撃力が3桁だし、こんな化け物人間が存在したのか。お父様の騎士団が可愛く思えてきたぞ...




