デルラジアの魔物狩り
私が未だに使っている『魔法少女レーナの戦闘スタイル』でネルウルフが姿を現すのを待っていると、予想通りの茂みから4体のネルウルフが姿を現した。
私は急ぎその内の一匹へと意識を集中させる。
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種族:レッサー・ネルウルフ
状態:空腹
ランク:E-
LV:8/12
HP:31/31
MP:14/16
攻撃力:26(-1%)
防御力:26(-1%)
魔法力:19
速度:28(-1%)
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このネルウルフ中々強いぞ。しかもこんなのが4体もいると考えると進化前の私なら勝てなかったかもしれない。
「早速試させてもらいますよ!〖水刃球〗!〖爆炎球〗!!」
私は少し警戒しながらネルウルフからだいぶ離れた場所で新しく手に入れたスキル〖水刃球〗を左手で、〖爆炎球〗を右手で生成した。
私はそれぞれを近くにいた2体のネルウルフへと放った。目にもとまらぬ速さで2体のネルウルフへと迫っていったそれは、ネルウルフに考える隙すら与えず、ネルウルフ2体の体を切り裂き、包み込んだ。
【経験値7を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値7を獲得ました。】
【経験値7を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値7を獲得ました。】
立て続けに経験値獲得の通知が届く。私は倒したのだ。一撃で。あの普通よりちょっと強そうなネルウルフを一撃で...倒してしまったのだ。私はこの瞬間、自分はもう人間ではないのだと、ヒュームではないのだと実感した。分かってる、私が元々人間ではない事位。でも私は人間でいたかったのだ。公爵家の娘として、慎ましく生きていきたかった。そんな私の淡い夢がこの瞬間、粉々に砕け散ったような気がした。
私は再び戦闘に意識を集中させ、〖水刃球〗でばらまいた水に目を向けた。
「〖水流造形〗!!」
私がその水に意識を集中させると、その水は6本の美しい輝きを放つ、私と大して変わらない大きさの剣へと姿を変えた。私が残りのネルウルフへと目を向けると、既に逃げ始めていたネルウルフが視界に入った。
そっちから仕掛けてきたのに情けない...逃がしませんよ!!
私は生成したばかりの剣を逃げ回るネルウルフへと向け、勢い良くその剣を放った。その剣は水で出来てるとは思えない程深く2体のネルウルフの腹へと突き刺さり、ネルウルフはそのまま動かなくなってしまった。
【経験値6を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値6を獲得ました。】
【経験値7を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値7を獲得ました。】
終わったのか...本当に化け物になっちゃったみたいね..私...
この戦闘が終わったと同時に私の人生も終わったような気がした。私は生まれ変わったような気がしたのだ。人々が恐れる、単体で小さな町を半壊させられる恐怖の塊に。化け物に。
そんな考えが頭をよぎると、急に孤独感が私を覆いつくして来た。私は何の為に進化した?帰る為...でも、もし、私が拒絶されたら?化け物だと言われたら?お父様に...レイシアさんに...
「グルゥゥゥ...」
私が無残に散らばるネルウルフの死体の前でうずくまっていると、ロスが何時より少し低い鳴き声で私に近づいてきた。
私はそんなロスの鳴き声を疑問に思い、振り向くと、そこには見覚えのないドラゴンが私を心配そうな目で見つめていた。そのドラゴンは私の二倍位あるその巨体から美しい真っ白な翼を生やし、私に似た水色の瞳から涙を流していた。いや、私も馬鹿じゃない。このドラゴンがロスだって事は分かる。数か月間苦楽を共にしてきた中なんだし、間違えるはずがない。でもなんで今進化したんだ?今回の戦闘で何もしてないロスが...何故..私が進化した後だから?私が進化しないとロスはできなかった。でもなんで?
私はこの世界の進化システムについて考察しながら、ロスに意識を集中させ、ステータスを確認することにした。
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名前:『ロス』
種族:ベビー・カルレイク
状態:通常
ランク:D
LV:1/38
HP:51/51
MP:37/37
攻撃力:54
防御力:51
魔法力:42
速度:48
通常スキル:
〖かぎ爪:Lv4〗〖突撃:Lv4〗〖ベビーブレス:Lv4〗〖ハイヒール:Lv3〗〖スラッシュ:Lv5〗〖リジェネレーション:Lv1〗〖氷弾:Lv1〗〖氷針:Lv1〗〖降雪:Lv1〗〖流水砲:Lv1〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv4〗〖火属性耐性:Lv4〗〖氷属性耐性:Lv1〗〖水属性耐性:Lv1〗
特性スキル:
〖飛行:Lv1〗〖竜の鱗:Lv1〗
称号スキル:
〖竜神の配下:Lv--〗〖竜神の右腕:Lv--〗
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Dランクかぁ。ロスもあの騎士団の人たちに負けない位強くなってしまったな...それに始めてみたな、氷属性スキル。それに〖リジェネレーション〗とかチート臭くない?まだ冒険者レベルの人たちが対処できるDランクモンスターが持ってていいスキルじゃない気がするんだけど...まぁいいか持ってても損しないし...多分...
ロスのステータスを確認すると、流石に疲れが出た私はもう寝る事にした。明日は魔物狩りと〖飛行〗の練習をするつもりだ。今まで避けて、逃げていた魔物を積極的に狩って、ここから出る為に〖飛行〗のレベルを上げる。私はそう心に決め、眠りについた。
翌日
私は昨日決めた通り、先ずは魔物狩りをすることにした。ロスと二人で森の中を歩き、ネルウルフやそれに似た弱い魔物を発見したら速攻で経験値に変える。そんな作業を繰り返した。偶に『ポイゾン・ネルウルフ』やDランク下位、つまりこの森の上位のモンスターと戦う羽目になってしまったが、問題なく倒すことが出来た。
かなりの量を狩ると、私は拠点である川に戻った。今日のお昼は昨日竜王さんに倒してもらったアスシリスである。朝に少し食べたがめっちゃ美味しかった。屋敷の料理には流石に負けるが、この数か月間塩気の全くしない魚や獣臭が凄いネルウルフばかり食べていた私にとって、普通の牛肉と余り変わらないアスシリスの肉はめちゃくちゃ美味しく感じた。
血抜きや解体処理は既に終わっており、作業はロスに頼んで焼いてもらうだけになっていた。
私はロスに頼みじっくりとその肉を焼き、出来上がった瞬間に私はそれにかぶりついた。やはり美味い。牛肉にも遅れを取らない位のジューシーさに、猪や熊に似た臭みもあるけどそれが癖になりような素晴らしい風味。こんな美味いものがこんな森で食べられるだなんて夢にも思ってなかった。
それから数日間、私はそんな生活を繰り返し魔物狩りをやめ、本格的に帰る方法を探そうと考えていた。
私はいつものように川辺で座り込みステータスチェックをすることにした。魔物狩りをしていた時も経験値の入り具合を調べるために細かにチェックはしていたが、方針を変えることにしたので一応確認することにした。
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名前:『レーナ・ヴォン・アルフォード』
種族:ドラゴニア
状態:通常
年齢:6
ランク:C-
LV:34/55
HP:214/214
MP:248/248
攻撃力:162
防御力:114(+10)
魔法力:182
速度:162
装備:〖アルフォード家のワンピース:価値C-〗
ーースキル:
〖竜神:Lv1〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv5〗〖爆炎球:Lv4〗〖焔矢:Lv3〗〖水撃:Lv3〗〖水流造形:Lv3〗〖水刃球:Lv4〗〖電熱:Lv5〗〖電撃:Lv5〗〖ライトニングスピード:Lv6〗〖ハイスラッシュ:Lv5〗〖烈風弾:Lv5〗〖烈風槍:Lv5〗
耐性スキル:
〖衰弱耐性:Lv2〗〖貴族耐性:Lv1〗〖水属性耐性:Lv3〗〖恐怖耐性:Lv5〗〖物理耐性:Lv6〗〖苦痛耐性:Lv5〗〖落下耐性:Lv5〗〖火属性耐性:Lv4〗〖雷属性耐性:Lv4〗〖風属性耐性:Lv4〗〖闇属性耐性:Lv3〗
特性スキル:
〖飛行:Lv2〗〖気象制御:Lv3〗〖水脈支配:Lv3〗〖鑑定:Lv6〗〖ステータス閲覧:Lv6〗〖念話:Lv5〗
称号スキル:
〖神の卵:Lv--〗〖剣聖の娘:Lv--〗〖吞気なお嬢様:Lv2〗〖竜王の加護:Lv--〗
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私の中での化け物のシンボルだったアスシリスとほとんど変わらないステータスなんだよねぇ...何というか実感湧かない。ネルウルフやDランク下位のモンスターを軽々撃退する事は出来たけど、あのアスシリスと同等の力を得たと言われても良く分からない。
私は考えるのをやめた。私がどれだけ強くなったとか、悪く言えばどんな化け物になったとか、そんな事考えてもしょうがない。今はどうにかして〖飛行〗のレベルを上げて、ここから出る事を考えないと。
そう心に決意した私であったが、今日は他に目的がある。そう、あの洞窟の調査である。ここまで強くなったんだ、あの日本人形みたいな少女も今ではワンパンで倒せる自信がある。それにあそこを通らないと町に帰れないかもしれない。不確定要素は減らしておくべきだ。
私は川に浸かってのんびりしていたロスへと目を向け、洞窟に行くと声をかけた。ロスは今回も嫌そうな顔をしながらもこくりと頷き、下を向きながら洞窟方面へと歩き出した。
この数日間ロスもただボーっとしてた訳ではない。きちんと戦闘に参加し、経験値稼ぎをしていた。ロスもレベル『1/38』だったのが『26/38』まで上がり、ほとんどのステータスが80前後まで上がっていた。
これならロス単体でも問題なく日本人形少女に勝てるだろう。
私はまだ戦場に付いてもいないのに勝ち誇った顔で洞窟へと足を運んでいた。ロスは横から不安そうな顔で私を見つめていた。
洞窟に近づくにつれて私は嫌なオーラを感じ始めた。これは私がまだ突き止めていない、『闇属性な何か』だ。いやな邪気を感じながら森の中を突き進むと、あの洞窟が見えてきた。私とロスは辺りを警戒しながらそっとその洞窟に近づいていった。すると次の瞬間、女性の悲鳴が洞窟の中から聞こえてきた。
「ケーニングさん!!死んじゃいやぁあ!!!」
その悲鳴からは泣きじゃくり、絶望に浸る女性の姿が容易に想像出来た。私はロスと目を合わせ、迷うことなく洞窟の中に走り出した。
「メイ!!お前はケーニングを連れてここから逃げろ!!こいつは俺が引き付ける!」
今度は低い、男の声が洞窟の奥から聞こえてきた。私はそんな彼らの言葉から状況を考察しようと考えたが、そんな事するより体を動かした方が遥かに早い。私とロスはスピードを上げ、悲鳴が聞こえる方へと走り続けた。




