ロスの進化
どうしよう..出血が酷い...でもそれは相手も同じなはず。もう一匹の方も、目立った外傷は少ないけど、HP残量は少ないはず。こうなったら、一気に終わらせる!
私は覚悟を決め、外傷の多い、私の肩を嚙みついていたネルウルフへと走り出した。しかし、ネルウルフはそんな私を見ても全く動く様子はなかった。スピードが全然出ていなかったのだ、肩の激痛のせいで私の動きはだいぶ鈍くなっていた。
私が目の前のネルウルフにばかり集中してると、後ろから妙な威圧感を感じた。尻目で確認すると、そこには大口を開けたネルウルフの姿があった。今度は私の左肩を狙っている。もう避けられない。そう思ったが、振り返って見ると、そこには体をへの字にしたネルウルフの姿があった。その横には爪を立て、歯を食いしばりながらネルウルフへと迫るロスの姿も。どうやら〖突撃〗した後に〖かぎ爪〗を使おうとしているみたいだ。ロスはそのまま、大きく振り上げた腕を〖風切〗でできた傷口へと振り下ろした。
「ぐぅぅぅあ!!」
ロスが切りつけたネルウルフから情けない鳴き声が上がる。私は先にこっちから片付けた方がいいかとも考えたが、またもう一匹に不意打ちでもされたら不味いので、私はそのまま右肩に嚙みついたネルウルフへと距離を詰めた。勿論そのネルウルフはただボーっと私を眺めていたわけではなく、右前足を大きく振り上げ、〖スラッシュ〗を放とうとしていた。
この肉、なにも学習してないのか?さっきでっかいカウンター食らわせたばっかりなのに。
「〖空気槍〗!!」
私は〖空気槍〗を負傷してない左手で掴み、ネルウルフへと更に距離を詰めた。私はそのまま槍を腹に突き刺してやろうと考えたが、ネルウルフの右前足の様子が少し変だった。まるで〖スラッシュ〗を打つ気がない。
もしかして、フェイント!?〖スラッシュ〗のモーションに見せかけて、〖かぎ爪〗を使う気?
私は急いでネルウルフから距離を取ろうとしたが、ネルウルフは右前足を振り上げたまま、後ろ足で地面をけって私に迫ってきた。左手で手にしていた〖空気槍〗をネルウルフへと投げつけた。その槍は傷の酷かった腹にぶっ刺さったが、ネルウルフは止まらなかった。
なんでこんなにしつこいの!?このタイミングで使いづらいけど、仕方ない。最終手段。
「〖風操作〗!!最大出力!!」
私の周りに協力な風が反時計回りにひき荒れるのを感じる。ネルウルフはそんな攻撃は予想してなかったみたいで、強烈な風をもろに受け、再び吹き飛び、体を強く地面に打ち付けた。
【経験値6を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値6を獲得ました。】
私は直ぐに〖風操作〗を止め、ロスのいた方に振り返った。
【経験値5を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値5を獲得ました。】
振り返るとネルウルフの腹にかぶりつくロスの姿があった。どうやらあっちも終わったようだ。
全て終わったと思うと、急に疲れが出てきた。私はそのまま倒れ込んでしまった。
ダメ..直ぐにここから離れないと、仲間がくるかもしれない...ましてやこんな所で寝るなんて...考えられない...
【通常スキル〖空気槍:Lv1〗が〖空気槍:Lv3〗にレベルアップしました。】
【通常スキル〖風操作:Lv1〗が〖風操作:Lv2〗にレベルアップしました。】
【通常スキル〖電熱:Lv1〗が〖電熱:Lv2〗にレベルアップしました。】
【通常スキル〖スラッシュ:Lv1〗が〖スラッシュ:Lv2〗にレベルアップしました。】
【通常スキル〖ライトニングスピード:Lv1〗が〖ライトニングスピード:Lv2〗にレベルアップしました。】
【耐性スキル〖雷属性耐性:Lv1〗が〖雷属性耐性:Lv2〗にレベルアップしました。】
【耐性スキル〖風属性耐性:Lv1〗が〖風属性耐性:Lv2〗にレベルアップしました。】
【耐性スキル〖物理耐性:Lv3〗が〖物理耐性:Lv4〗にレベルアップしました。】
【耐性スキル〖苦痛耐性:Lv3〗が〖苦痛耐性:Lv4〗にレベルアップしました。】
私は何にも気付く事無く、眠りについてしまった。
翌日の朝
気付くと、聞き覚えのあるドラゴンの鳴き声が周りから聞こえてきた。甲高い、可愛らしい鳴き声だ。私はゆっくりと目を開け、鳴き声のする方へと目を向けた。
「くぁぁ、くぁぁ!!」
そこには見覚えのない、私と同じくらいの背丈のドラゴンが立っていた。私は慌てて立ち上がり、そのドラゴンへと意識を集中させた。
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名前:『ロス』
種族:スカイ・ベビードラゴン
状態:通常
ランク:E-
LV:1/15
HP:18/18
MP:14/17
攻撃力:18
防御力:20
魔法力:16
速度:14
通常スキル:
〖かぎ爪:Lv3〗〖突撃:Lv3〗〖ベビーブレス:Lv1〗〖ヒール:Lv1〗〖スラッシュ:Lv1〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv1〗〖火属性耐性:Lv1〗
特性スキル:
称号スキル:
〖竜神の配下:Lv--〗
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「ロス?もしかして...進化してるの...?」
「くぁぁ、くぁぁ!!」
それに、肩の痛みが全くしない。寝たら元気になったとか?そんなはずはない。それなりに深い傷だった、一回寝て起きた程度で治るはずがない。もしかして、ロス?新しく覚えたスキルの中に〖ヒール〗があったけど、直してくれたの?
私はそう考えたら涙が止まらなくなり、ロスに勢い良く抱き着いた。身長差が全くないので、少し違和感があるが仕方ない。
「くぁぁ!!」
ロスは鳴き声を上げ、抱き着いた私に何かを伝えようとしていた。私は抱きつけていた手を離し、ロスが向いていた方へと目を向けると、そこにはネルウルフの死体が転がっていた。どうやらお腹がすいたらしい。
そう言えばロス、〖ベビーブレス〗ってスキルもってたな。焼いてくれないかなぁ...
私はそんな事を考えていると、心の中で何やら変な声が聞こえてきた。
『了解です。レーナ様!!』
ん?なんだこの声?あの男の子のものでもない...
私は少しこの声のことで悩んでいると、ロスが何やら嬉しそうな顔をして、こちらを見ていた。
「もしかして、ロス!?〖念話〗使ったの?ってロスは持ってないし、使ったのは私か..」
『それでレーナ様、どうすればいいんですか?』
立て続けにロスの声が私の頭の中で響き渡る。
そう言えば、〖念話〗の使い方ってモンスターと会話するためにあるんだったわ、あの男の子の印象しかなくて、すっかり忘れてた。
「取り敢えず血抜きね。頭を切って適当な木にぶら下げてちょうだい。」
ロスはそれを聞くと、嬉しそうな顔でこくりと頷き、ネルウルフの死体へと近づいていった。
私はその後もロスに指示をだした。毛皮を切り取る作業など、内臓を分ける作業、そして〖ベビーブレス〗でこんがりとお肉を焼く作業まで。そうこうしているうちに、2体のネルウルフは普通の焼肉に大変身していた。
ロスはその内の一匹に幸せな顔でかぶりついていた。私はというと、食べるのに少し苦労していた。サイズ的にはロスに小さく切ってもらっているので問題ないが、かなりの量の筋が通っており、噛みづらいのだ。それにかなり臭みが強く、余り美味しいとは思えなかった。
私はそんなお肉を食べながら少し調べ事をしていた。そう、自分のステータスの確認である。今回のネルウルフ戦でかなりの経験値を獲得したはず、もうレベルマックスとかまでは行かないだろうけど、それなりにステータスは上がってるはずだ。
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名前:『レーナ・ヴォン・アルフォード』
種族:ドラゴニュート・ヒューム
状態:通常
年齢:5
ランク:E
LV:10/22
HP:31/31
MP:36/36
攻撃力:32
防御力:28(+10)
魔法力:39
速度:33
装備:〖アルフォード家のワンピース:価値C-〗
ーースキル:
〖竜神:Lv1〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv5〗〖風切:Lv1〗〖風弾:Lv1〗〖空気槍:Lv3〗〖風操作:Lv2〗〖電熱:Lv2〗〖雷撃:Lv1〗〖スラッシュ:Lv2〗〖ライトニングスピード:Lv2〗
耐性スキル:
〖恐怖耐性:Lv4〗〖衰弱耐性:Lv2〗〖貴族耐性:Lv1〗〖物理耐性:Lv4〗〖苦痛耐性:Lv4〗〖落下耐性:Lv2〗〖火属性耐性:Lv1〗〖雷属性耐性:Lv2〗〖風属性耐性:Lv2〗
特性スキル:
〖鑑定:Lv5〗〖ステータス閲覧:Lv5〗〖念話:Lv3〗
称号スキル:
〖神の卵:Lv--〗〖剣聖の娘:Lv--〗〖吞気なお嬢様:Lv2〗
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私、TUEEEEEE!!あの騎士団の人たちより劣るけど、だいぶステータス上がってる。それに、いつの間にスキルレベル上がったんだ?いつもなら絶対なんか通知みたいのが来るのに、まぁいいか上がったなら上がったで、別に困らないし。
それからしばらくして、肉を食べ終わると、私とロスはこの辺りの探索を始めた。勿論帰り道を見つけるためでもあるが、今回の目的はちょっと違う。水だ。ロスの〖ヒール〗のおかげで二日水抜きでも歩ける位の元気はあるが、もう流石に死にそうだ。水がなきゃ生きていけない。
私は水がなければこのまま死ぬとか、急いで進化して水魔法が操れるのに進化するかとか、色々と考えていたら、結構簡単に川が見つかった。森の中に流れる、透き通ったような綺麗な川。そこには魚も少し泳いでおり、食料にも困らなそうだった。
私はロスと目を合わせ、競うようにして川へと近寄った。私は両手を川に付け、水をすくい上げ、口に含んだ。
美味い!
こんなに美味い水がこの世にあったのか。水の中にほんの少しだけ感じる優しい甘みが口の中に広がっていくぅ。
あぁ、生き返った!!
私はすっかり元気になり、しばらくはここを拠点として動くことにした。むやみに動いても迷うだけ、また川を見つけられる保証なんてどこにもないし、ここは安全に帰り道を探した方がいいと考えたのだ。
私は一息つくと、自分を見てあることに気が付いた。着ていた白いワンピースがかなり汚れていたのだ...まぁこれが高いドレスでなかった事だけでもよしとしよう。もしドレスなんて着てたら動きずらくてしょうがなかっただろう。
私はレイシアさんが持っていた〖クリーン〗のスキルを思い出したが、こんな森の中で誰かが持っているはずもなく、私は仕方なくワンピースを脱ぎ、川水で洗うことにした。ついでに自分も洗うことにした。




