vs.赤ちゃんアスシリス
私の足にかぶりつく赤ちゃんアスシリスたち。
学習しないドラゴンだなぁ...私もなんでか知らないけど、その攻撃は通じないよ!
私は剣を振り上げ、足にへばりつく赤ちゃんアスシリスたちに一太刀食らわせようとした時、私の目に剣を突き刺したはずの赤ちゃんアスシリスが私に向かって、その口を大きく開けているのが見えた。
あれ、もしかしなくてもブレス攻撃じゃない?
確か名前は〖ベビーブレス〗でレベルも2程度だったけど、今の私にはダメージを食らってやるだけの体力はない。
どうにか避けなくてはならないけど、足にへばりつく赤ちゃんアスシリスたち。
この子達!道づれにするつもり!?
やられた...まさかこんな手で来るなんて...
私は振り上げた剣を自分の手前に回し、ブレス攻撃の準備を整えた。
「かぁぁぁあぁ!!!」
口を大きく開けていた赤ちゃんアスシリスはカラスのような鳴き声で鳴き、口の中に火の玉のようなものを生成した。
来る!!
その直後、火の玉は大きく広がり、私の方へと迫ってきた。私の身体全体を飲み込む程のブレスではなかったけれど、こんな剣では防ぎきれない。
ブレス攻撃は私の身体と足にへばりついていた赤ちゃんアスシリスたちを飲み込んだ。
あっっっつ...くない?
あれ?私普通に炎に包まれてるのに...なんで全く熱くないんだ...
これもあの変なスキルのおかげなのだろうか。
【経験値2を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値2を獲得ました。】
【経験値1を獲得ましました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値1を獲得ました。】
また経験値がなんちゃらこんちゃらだ。
私は一体...一体何なんだろう...
数秒後、ブレス攻撃が治まった。
私の目の前にいたあの赤ちゃんアスシリスは顔を真っ青にし、呆然と私を凝視していた。
戦う気がないならこちらから攻撃する理由もないので、私はそのまま放置することにした。
すると、その呆然としていた赤ちゃんアスシリスの右側から胴体を深く切り裂いたはずの赤ちゃんアスシリスがとびかかってきた。
その赤ちゃんアスシリスはもう一匹の方へと目を向け、何やらアイコンタクトをとった。
それに気づいた、目の前の赤ちゃんアスシリスは、もう一匹の後ろにぴたりと付き、私に迫ってきた。
なんでこうなるかな、放っておいていてよ!!私は別にあなた達を肉に変えるために来たわけじゃないんだから!!
私は再び剣を大きく持ち上げ、手前の赤ちゃんアスシリスが迫ってきた時に振り下ろした。が、躱された。それもそうだ、ステータスの速度値が全然違うのだ。それに加えて、なんの剣術も習ってない5歳児の剣なんて当たる方がどうかしている。今まで当たっていたのはただ運が良かっただけ。
後ろに回り込んだ赤ちゃんアスシリスは私に向かって爪を立てて迫ってくる。それと同時に、私の前の少し離れた所でもう一匹が爪を立てて何かの準備をしていた。スキル〖かぎ爪〗と〖マイナースラッシュ〗だろう。
こんなの防ぎようがない、剣で〖かぎ爪〗を使う、手前の赤ちゃんアスシリスを無効化できたとしても、〖マイナースラッシュ〗で確実にやられる。よけるにしたって体力的にもう限界。
あぁもう...
お父様に剣術でも教えてもらえば良かった。
私は振り下げた剣をそのまま〖かぎ爪〗で襲いかかってくる赤ちゃんアスシリスに向かって振り上げた。が、簡単によけられ、後ろに回り込まれてしまった。
私は対処法を必死に考えようとしたが、赤ちゃんアスシリスも野生に生きる身。そんな時間は与えてくれなかった。
後ろにいた赤ちゃんアスシリスが大きくその腕を振り下ろし、『マイナースラッシュ〗を放ち、私に小さな風の刃が迫っていた。
私のこの体力でよけられるはずもなく、〖マイナースラッシュ〗をそのまま食らってしまった。が、なんだか全く痛みがしない、ちょっと強い風が当たった、位の感触でしかなかった。
〖マイナースラッシュ〗とはこんなものなのか?いや、そうじゃない。彼らの攻撃力はそれなりに高かった。ただ、私のトンデモスキルの何かが発動して、それを防いだとしか...
私はすぐさま後ろに回り込んでいた赤ちゃんアスシリスに目を向け、剣を振りかぶった。勝ちを確信し、動きを止めていた赤ちゃんアスシリスに剣を当てるなど、いくら剣の心得もない5歳児だとしても、容易にできた。
【経験値2を獲得しました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値2を獲得ました。】
すぐさま前に目線を戻すと、もう一匹の赤ちゃんアスシリスは既に距離を詰めており、私の体力でカウンターを食らわせるのにはかなりキツイ距離となっていた。今回は爪も何も立てずに迫ってくる。多分スキル〖突進〗だろう。
私は赤ちゃんアスシリスが突進してくるであろう位置を予測し、そこに剣を横に構え、剣の腹で受け止めようとした。だが私の予想は大きく外れ、赤ちゃんアスシリスの頭部は私の腹に直撃した。
私はそのまま吹き飛ばされ、離れたところで横に倒れてしまった。だが、不思議と直撃した時の痛みはなかった。勿論、地についた時の痛みは感じたが、〖突撃〗の衝撃は何も感じなかった。
私が横になり、倒れていると、横から小さな足音が聞こえてきた。私は音の方へ目を向けた。そこには勝ち誇った顔の赤ちゃんアスシリスが私を嫌悪の目でにらみつけていた。その距離約1メートル。
私は最後の力を振り絞り、身体を起こしてその赤ちゃんアスシリスにとびかっかった。剣を引きずったまま、その僅か1メートルの距離を私は詰め、自分の頭部を赤ちゃんアスシリスの顔に打ち付け、吹き飛ばした。私は引きずったままの剣を振り上げ、吹き飛び、宙に浮いたままの赤ちゃんアスシリスの胴体を切りつけた。
【経験値4を獲得しました。】
【スキル〖竜神:Lv1〗により、更に経験値4を獲得ました。】
私の頭の中に経験値獲得の謎声が響き渡り、私はその場で膝をつけてしまった。これまでのことからして、経験値獲得の謎声というのは敵の死を意味している、その他にも意味はあるかもしれないが、そんなことはあとで考えればいい。
【レベルが最大値に達しました。これ以上経験値を獲得することはできません。】
【進化の条件が揃いました。】
ん?
レベル最大?進化の条件?
これってもしかしなくても...ゼタ・ヒュームの進化の可能性ってやつなんじゃ...
【種族『ゼタ・ヒューム。』ヒュームの中で極々稀に生まれるという進化の可能性を秘めたヒューム。その魂はヒュームそのものだが、その性質からヒュームの社会ではモンスター扱いされる。1000年前、勇者として世界を危機から救った『ゼタ・ヒューム』が存在したが、すぐに危険モンスターとしてヒュームに討伐されたという。】
わかってるよ鑑定さん...
そう言えば、ここどこなんだろう、あのアスシリスに放り出されたんだけど。私の推測が正しければここはアスシリスの巣、つまり地獄ね...
赤ちゃんアスシリス程度なら、なんだかわからないけど対処できた、でもあの大人アスシリスが来たら絶対私はじゃ太刀打ちできない。
今はここにいないみたいだけど。早くここから逃げないと今度は確実に殺される。
私は辺りを見渡し、現状を確認しようとした。
辺りはもう薄暗くなっており、微かに出ていた夕日も、ほんの少しの明かりを残し、沈んでいた。
私はその場を離れ、少し歩くことにした。
少し歩くと、そこには広大な森が広がっていた...真下に...
私はどうやら高台にいたみたいだ、目に見える木々は10メートル程下にあり、とても飛び降りて無事でいられる高さではない。
私は他に出口のようなものがないかと探してみたが、そんな物があるはずがなかった。ここは赤ちゃんアスシリスの巣だ。そんな物作ったら直ぐに他の魔物に食べられてしまうだろう。
ここが森だって事はまぁ分かったけど、状況は絶望的ってところかな。
一刻も早くここからでなければいけないのに...それもかないそうにない、例え巣から出られたとしても、こんなアスシリスがいる森がただの森であるはずがない、魔物の森だ。
そう言えば、進化って何なんだろう...
ゲームとかである一気に力を手に入れるあれか?
もしそうなら、なにかになるかもしれない。
とりあえずステータスチェックからかな。
レベル最大値とか言ってたし、もしかしたらなんか新しいスキル手にしてて、ここから飛び降りることができるかもしれない。
私は自分へと意識を集中させ、〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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名前:『レーナ・ヴォン・アルフォード』
種族:ゼタ・ヒューム
状態:疲労
年齢:5
ランク:F-
LV:10/10(MAX)
HP:6/21(自動回復率:-10%)
MP:4/30(自動回復率:-10%)
攻撃力:19(+15)(-10%)
防御力:18(+10)
魔法力:20
速度:20(-10%)
装備:〖アルフォード家のワンピース:価値C-〗〖アルフォード騎士団の短剣:価値D-〗
ーースキル:
〖竜神:Lv1〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv5〗
耐性スキル:
〖恐怖耐性:Lv3〗〖衰弱耐性:Lv1〗〖貴族耐性:Lv1〗〖物理耐性:Lv1〗〖苦痛耐性:Lv1〗〖落下耐性:Lv1〗
特性スキル:
〖鑑定:Lv3〗〖ステータス閲覧:Lv3〗〖念話:Lv1〗
称号スキル:
〖神の卵:Lv--〗〖剣聖の娘:Lv--〗〖吞気なお嬢様:Lv2〗
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えっ?
ステータス...めちゃくちゃ上がってるくね?
これミアさん並に凄いステータスだよ!結構やばくね?
まぁ、あのアスシリスが来たらひとたまりもないんだけどね...それに脱出に役立ちそうなスキルもない...
私はステータスが爆上がりしたことに少し興奮したが、直ぐにあのアスシリスのことを思い出し、冷静に戻った。




