武器と防具が売っているお店
車で店に向かいながら、俺はどんな職をやってみたいか悩んでいた。
「やるなら戦士か魔法使いかな」
どちらも人気が高いだろうから、装備の種類には困らなさそうな職だ。
周りとは違う職を選んでみたい所ではあるけど、そんな事を言って装備が見つからなかったら意味が無い。ならば人気が高い職を選ぶべきだ。
その時、俺は閃いた!
どちらも人気なら、その両方を組み合わせた職をやれば良いじゃないか!
戦士と魔法使いの組み合わせ、魔法戦士。複合職なら周りと被らない可能性の方が高い。
鎧の上からローブを纏い、杖を持ち歩く。
そんでもって、もしかしたら魔法使いを探してる人から声をかけられるかもしれない。
「すみません。魔法使いの方でしょうか?」
「悪いな、俺は魔法戦士だ」
ここですかさず仕込み杖から刃をチラつかせる。
完璧じゃねぇか!?
やっべ、これかっこよくない? かっこよくない?
複合職なら他の人と被りづらいっしょ!
テンション上がってきたああああああああ!!!
しかし、冷静に考えてみよう。俺はコミュ症だ。
そんなコミュ障の俺が円滑にコミュニケーションを取れるだろうか? 無理だな。
となると、現実的にはこうなる。
「すみません。魔法使いの方でしょうか?」
「いや、あの……ふひっ」
「???」
「あ、あの。デュフッ」
どもりつつ仕込み杖をカチャカチャする俺。
変な奴に声かけちまったと気まずい顔をしながら「そ、そうですか……それじゃ」と言って踵を返す冒険者。
うん。想像しただけで死にたくなる。
魔法戦士についてはとりあえず保留。何をやるかは装備見てから決めよう。
「目的地に到着しました」
そんなくだらない事を考えて居るうちに、どうやら目的地に到着したようだ。
早速車から降りた俺の目の前にあったのは、大きなミシン屋さんだった……
「どこだよ!?」
地図上では目的地に到着しているが、俺の目の前にそびえ立つ店は大きなミシン屋だ。
周辺を見渡してみるが、他にそれっぽい店は無い。どういう事だ?
それから10分後、俺はミシン屋の入り口の隣にもう1個入り口がある事に気付いた。
『LARP Gear』
そう書かれたドアを潜り抜け、階段を昇った先にその店はあった。
店に入って最初に俺の目に飛び込んできたのは、至る所に飾られている武器の数々。
この配置、俺が憧れたファンタジーの武器屋そのものだ!
剣に短剣、槍に斧、弓もあれば矢も矢筒もある。俺の身長くらいの長さの杖も立てかけられている。
ふむ、これを見て興奮しない男は居ないだろう。
「いらっしゃいませ」
そんな俺を迎え入れてくれたのは、白人男性の店員。
まさにファンタジー!