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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪5 半紀を超えしモノ
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変わりたい願いと壊したくない想い

 あれからも考えてはみた。

だけど今現状ではここまでが精一杯。

犯人が誰かを示す根拠、過程はおおよそ組み上がった。

だけど肝心の事件関係者が誰もいない。

平石に殺人を教唆した真犯人。

三条葵。

官野の無実を証明した刑事。

そして双鏡塔で実際に生活をしたと推測される人物。

双鏡塔の人物は事件に関係あるかどうかさえ分からない。

この中の誰か。

一番可能性がある人物が刑事。

これが誰かさえ分かれば。

楓には、どんな人物がいたかのデータがPCPにあったから、そこから真犯人の特定を頼んでる。

後はこう言う事に詳しい人物に、俺は直接話を聞きに行く所だ。

4人掛けの電車席。

隣には由佳、向かい側には姉ちゃんが座ってる。

予定を繰り上げて、俺達は風舟村へ向かう。

姉ちゃんがしきりに俺を見てるのがさっきから気になって仕方が無い。

「肩の怪我よ」

 ……。

あの事件からもう2年になるのか。

「そう言えば、詳しく聞いてなかったねその事件」

 幼馴染が犯罪に手を染めた。

殺された仲間の復讐に。

他の仲間を守る為に。

親友も。

殺された家族の復讐に。

それを俺は気付けなかった。

「翔太?」

無意識の内に由佳の手を握る。

挫けそうになった俺を助けてくれたのは由佳だった。

人は変わる。

心の闇を抱える事だってある。

憎しみが殺意って言う明確な意思を持つ事もある。

俺はあの時、変わるか変わらないか。

そんな事を考えてたと思う。

だけど違ったんだと今更ながらに気付く。

俺は変えたいって願ってた。

だから変わるのは当たり前なんだ。

人間関係だって常に変わってく。

その関係を壊したくないって願うのが。

変わらないって事だと。

少しだけ俺も変われたんだろうか。

……そう願いたい。

皆と連絡を取って無いけど、元気だろうか。

「そんな事言うんだったら定期的に連絡しなさいよ」

 ごもっともだけど、それ所じゃなかったから勘弁してほしい。

……これからは定期的に連絡しよう。

「10年以上行こうとしなかったのに?」

 ぐっ……。

何も言い返せない。

「何で行かなかったの?」

「そうよ。どうなってたか気になってんなら行けば良かったのに」

 2人して俺に目線を向けられても困る。

「優子さんは毎年行ってたんですか?」

「そりゃあね。仕送りもして貰ってたし」

「翔太なら行くと思うけど」

 秀介と由佳と遊んでたから。

理由はそれ。

由佳と姉ちゃんは気まずそうに黙り込む。

引っ越ししてから直ぐに居場所が出来たと思ったから。

「聞きたかったんだけど」

 何故か空気を読んで姉ちゃんが話題を変える。

「有村君とどうやって知り合ったの?」

 そんな事を何で知りたいのか。

「由佳ちゃんと知り合うのは家が隣だから分かる。だけど有村君って家が近い訳じゃないし、同じクラスでも無かったじゃない。なのに何で知り合えたのかって思っただけよ」

 何故か論理的な姉ちゃんに唖然とする。

何も言って無いのにアイアンクローをされ降伏する。

「顔に書いてあり過ぎよ」

 きっかけは。

ヴァイオリン。

以上。

「んな訳無いでしょ」

「あたしも続き知りたい」

 何でこうも食いつくんだ……。

「どうせ着くまで時間あるんだし、話しなさい」

 ……妙な事になってしまった。

過去の事件を解決する過程で自分の過去まで聞かれるのは考えて無かった。

溜息をつき、目を閉じる。

懐かしい気持ちが込み上げる。

バカを只管やってた昔の俺達。

今の俺を見たらどう思うんだろうか。

特に秀介は。

今の俺を見てどう思うんだろうか。

心残りは消えないだろう。

でも。

いつか楓が言ってた事が急に思い出される。

長い時間の中で殺意や憎悪は溶ける。

そんな感じの言葉だった気がする。

だったら。

後悔はどうなんだろう。

苦笑いする。

消えるか消えないかじゃない。

自分が一生忘れないって言う願いがあれば。

「早く話してよ翔太」

 由佳に急かされる。

俺と秀介の出会いは。

学校を散歩してた時……。

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