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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪5 半紀を超えしモノ
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未来へ続いてしまう憎しみ

 三条葵。

現在までの消息は不明。

当時スナックで働いており、お客からの人気は高かった。

細かい所まで気を配れる人物であり、彼女目当てで店に足を運ぶ客は多かった。

勤務態度は至って真面目。

遅刻や欠席はせず、店からの信頼も厚かった。

交友関係は狭く深くであり、彼女をよく知る友人は、良く悩みを聞いて貰ったりと面倒見が非常に良かった。

行方不明当時、無断欠勤を不審に思った店の店長が1人暮らしだった彼女の自宅に連絡したが繋がらず、数日経っても来ない事から、両親が警察に捜索願を出し、初めて事件が発覚した。

最後に三条と会ったのは友人で、10月10日の夜。

いつもと変わらない様子で別れたらしい。

連続殺人事件で平石が殺害される5日前。

時期的には丁度被る事からも、連続殺人事件との関連が容易に推測できる。

ただ、三条を人質に取られ、そこから殺人を犯した過程とはずれるかもしれないけど。

例の文章を途中で平石が暴いたんだとしたら納得が行く。

文章の秘密に気付いた平石に対して今後も殺人を実行するよう、実際に三条を拉致し、それを知った平石と口論になって殺害をした。

けど、ここまで情報を集めても一向に犯人像が出て来ない。

……。

情報をもう1度整理してみる。

現段階での推測で、三条を人質に取られ、殺人教唆をされた平石が5人もの人間を連続で殺害。

だけどその中で平石が殺害する人物の名前に隠された意味に気付き、口論となった結果平石が真犯人によって殺害される。

その根拠として、殺害方法や同じ現場に死体を遺棄するなど、殺害過程に狡猾さが見て取れた事が挙げられる。

また、真犯人が官野帝である可能性は極端に低い。

理由として、平石と三条との接点が無い事。

官野は海外へ建築を学びに行っており、裏にも絡むような人物と関りがあったとは考えにくい。

問題は真犯人が誰なのか。

ここまでの情報でおかしな人物はいなかっただろうか。

例えば三条自身が殺人を犯していた可能性。

これは低いと見る。

殺害方法が女性のそれじゃない。

女性一人で成人男性を絞殺、無いし刺殺するのは極めて難しい。

道具を使ったにせよ、怪我も無く殺人を犯せるとはとてもじゃないけど思えない。

それ以外で気になる人物は、官野が隔離されてた時に関わったと思われる人物。

そう考えた理由として、官野が無罪になったにも拘らず隔離された事。

警察関係者に犯人がいるなら。

官野が隔離された理由も。

その刑事が恐らく警察を離れたであろう理由も。

無罪となった根拠となる資料が警察に存在しなかった理由も頷ける。

仮にそれが真実だとして。

隔離した官野に関わらせようとするだろうかって疑問は残る。

現状思いつく犯人像はそれ位だろう。

ただ、漠然とした違和感がある。

それだったら複数の事件が絡む事なんて無い気がする。

第一平石に殺人教唆をする理由がない。

もっと別の誰かが関わってるような気がしてならなかった。

他に誰かいないか。

両小指を絡め、手を口元に当て考える。

……。

そう言えば。

平石は文章の意味に何故気付けたのか。

言い換えれば、何で俺は平石が文章の意味に気付いたと仮定したのか。

PCでの解析で俺は割と早く気付けた。

だけど当時そんなものは無いし、平石が殺人教唆による殺人を繰り返す中で気付けたんだろうか。

死亡推定時刻や発見時刻を照らし合わせてみても、時間的な余裕があったとは考えにくい。

それに。

平石が文章の意味に気付く為には最初に全ての計画を知らなくちゃ成り立たない。

最初から計画を全部聞いた平石が。

いくら人質がいるとは言え、実行するだろうか?

俺だったら1人ずつ標的を伝えてくと思う。

そもそもその計画を電話越しに聞いたって平石が実行するかも分からない。

それなら平石と犯人は直接会ってこのやり取りをしたと考えるのが妥当。

このやり方で平石を殺害する為に一番的確なやり方は。

犯人自身が標的として現場にいれば良い。

ここまで考えて言える事は、平石自身と文章は繋げて考えない方が良さそうって事。

ただ、解析をして得られた文章が殺人に全く関係無いかって言われればそうじゃないと思う。

適当に挙げた文字で文章が出来る確率も考えれば。

偶然この文章が出来たとは考えにくい。

どこかで見た事があるけど、確率は数億分の1にもなるそうだ。

ただ、それはアルファベットに換算した場合だけど、確率が低い事を証明するには充分だろう。

だったら。

犯人は意図して標的を選んだはず。

別の理由があるかは分からない。

後必要な情報は何かを考える。

あるとすれば、裏にも絡む人物の情報。

要は秘密結社に関するもの。

そこから1人1人の容疑者を考えていくしか無いだろう。

でも、50年前となると誰がどこに所属してたかなんて情報は残って無いだろう。

だけどもう1つヒントはある。

刑事が無罪を証明しながらも、官野を公に犯人にせざるを得なかった事。

……ダメだ。

大きく背伸びをし、深呼吸をする。

50年前の事件は骨が折れる。

視点を再度変えた方が良いのかもしれない。

これ以上、真犯人を具体的にする事はほぼ不可能だろう。

現時点で官野の無罪はほぼ証明できる。

それなら、刑事が無罪を証明しながらも官野帝が結果的に犯人となった理由。

こっちを考えた方が良い。

半世紀前の秘密結社の情報がPCPデータベースにあるかどうかは定かじゃないけど、やる他無い。

……。

未来に起こる犯罪が0になれば良いって思ってたのに、50年前の事件を必死になって調べてる俺。

だけど。

未解決の事件で今も苦しんでる人は大勢いる。

それが新たな憎しみとなって連続殺人の引き金となる。

それを止められるのは。

第3者の介入のみ。

犯罪を0にするのなら。

起こり始めた事に対しての迅速な対応が必要不可欠。

俺は犯罪を0にしたい。

その気持ちは日に日に強くなってく。

……。

視界が一瞬歪む。

気を抜いた事で俺自身が疲れ切ってる事を初めて実感する。

俺はいつも通り椅子で簡易ベッドを作り、泥のように眠った。

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