文章の違和感
平石による最初の連続殺人は、途中で何らかのアクシデントがあったのかは定かじゃないけど、殺人教唆をしたであろう真犯人によって殺害された。
この文章が何らかのメッセージだとしたら。
平石は殺人教唆をされた側なんだから、これは真犯人によって残されたものの可能性が高い。
そう考えると1つの可能性が思いつく。
三条葵って人物を人質に取られたんだとすれば。
平石と三条の間にどんな関係があったのかは分からないけど、殺害をする動機としては充分なものになるような関係だったのかも知れない。
けど、平石は途中でこの文章が隠れてる事に気付き、そして殺害されたって所だろうか。
多分、平石以外に殺害する人物がいたのかもしれない。
その証拠に、さっきの文章には2か所おかしな所があった。
あおいけひたときはかけれた
こみはひやした
けひたとこみ。
こみはゴミと無理矢理読めなくも無いけど、けひた。
平石のひ。
この文章は、被害者の頭文字を組み合わせた文章になってる。
平石が聞かされてた標的に。
例えば名字がし、名前がけで始まるような人物が存在したとすれば。
あおいけしたときはかけれた
こみはひやした
こうなる。
だからこの一見すると何の繋がりも無いような被害者が。
文章と言う形で繋がる。
考えれば考える程。
犯人の異常さが浮き出て来る。
どこまでも異常なのに、どこまでも狡猾な犯人像。
ただ、そうなると1つの疑問が浮かぶ。
何故真犯人はこんな文章を残したのか。
最初から平石を殺害する為にわざと残したとしても。
平石に気付かせる意味が無い。
……仮説を立てる必要があるかもしれない。
俺はこの事件に、黒の御使いや久遠と関わってた自分の状況を重ねた筈。
それなら。
例えば殺害された全員が何らかの形で犯罪に関わってたと仮定すれば。
何らかの形でそれを知った犯人が全員の殺害を決意したとしたら?
頭を振る。
話を飛躍させ過ぎだ。
けど、被害者全員に共通点があるとしたらそれ位しか思い浮かばないのも事実。
陽はとっくに沈み、すっかり遅くなってしまう。
由佳はいつの間にかどっかに行ってると思いきや、コンビニの袋片手に入って来る。
「優子さんには泊まるって言っといたわよ」
……姉ちゃんに殺されるとこだった。
PCPが出来てから、事あるごとに何か買ってきてくれると思ってたら、俺の財布で買ってきてる事を知ったのは本当に最近の事だった。
それについては別に何とも思わなかったけど、しっかりしてるのかちゃっかりしてるのかは何とも言えない。
いつものおにぎりとサラダを食べながら、再び考える。
三条が行方不明って事は。
彼女も既に殺害されてる可能性が高い。
ただ、この時点で官野帝がその犯人像に当て嵌まるのかと言われたら、可能性はかなり低い。
真犯人が仮に官野だとすれば。
官野と平石に少なくとも何らかの繋がりが無いと今までの推理は成立しない。
裏にも絡む人物との交流があったって事は。
この裏にも絡む人物と官野が同一人物でなければ成立はしない。
官野の日記に嘘が書いてでもしない限り、官野が犯人とみなす必要はもう無いだろう。
後は物証があれば良いけど、既に50年が経った事件。
俺が追える官野の無罪の可能性はここが限界だろう。
それよりも真犯人が誰なのかを考える方が良い。
後は三条の行方とどう言う人物だったのか。
PCPのデータベースで探す……のは多分難しいだろう。
「多分出来ると思うよ」
由佳は眼鏡を掛け(度は入って無いPC用の奴だ)、カタカタと作業を開始する。
楓はこのデータベースをどうやって入手したのか……。
やっぱり聞かないでおこう。




