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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪5 半紀を超えしモノ
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まるで誰かが

 前は頻繁に秀介の夢を見てた気がするけど、今はこうして気付くと朝になってる日が続く。

自分の中で結論が出せたからかもしれない。

欠伸をしながら体を起こし、姉ちゃんが用意しといてくれた食事を由佳と取る。

最近の俺の日課だ。

食事をしながら、ぼんやりと今日何をするか考える。

立て続けに起きた大事件が解決して気が抜けてるかもしれないけど、元来俺はそんなにやる気がある方じゃない。

やる気があるならもっと前から何かやれたんじゃないだろうか。

失って初めて大切なものに気付いてしまう人間だ。

……。

自分の事はどうでも良いか。

下らない事を考えてると、珍しく由佳が俺より遅く起きて来る。

「おはよー……」

 拓さんに連絡を取ってから、桜庭コーポレーションに向かうかと早々に結論付ける。

それに、実物を1回も見てなかったから関連性があるかどうかだけでも見たい。

それもあるけど日記について気になる事があったから。

久遠が送って来た日記帳を官野帝が書いたんだとして。

それを誰が官野が設計した建物に隠したのか。

皇桜花がそれをやったとは考えにくい。

皇桜花にとって、官野は殺害したい対象だった。

そんな人物に協力するような事を奴はしないだろう。

根拠の無い予感があった。

50年前の連続殺人犯が官野じゃないと証明した警官。

その人が日記帳を隠したんじゃないかと。

今俺が持ってる情報の中でやりうる人物がその人しか思いつかないのもある。

その仮説が正しいなら、警官はまだ生きてる可能性がある。

そんな気がしないでもない。

……とりあえず日記帳については後回しだ。

兎に角由佳と楓には、名前の事を調べて貰う。

俺一人で解決しても良いかもしれないけど、こうして周りの仲間が動いてくれる事に感謝する他無い。



 拓さんは午前中に予定があるらしく、警察に向かうのは午後からになった為、桜庭コーポレーションに俺は向かってる。

楓はPCPに向かってるらしく、森田さんが代わりに案内してくれる事になってる。

華音ちゃんはあの事件以降、PCPに頻繁に来る事は無くなった。

何があったとかじゃなく、ただ単に受験があるからだ。

推薦合格を決めてからまた顔を出しますって言ってたけど、華音ちゃんなら大丈夫だろう。

秀介が犯罪者って事で、華音ちゃん自身苦しんだ時期もあった。

俺自身、心にも無い事を言った事もあった。

だけどそこから前を向いてくれて本当に良かった。

楓の行動で今後のPCPの活動方針がより具体的に決まれば。

俺達はより前に進める。

その為に、俺は目の前のことに集中する。

森田さんは俺が来るのを分かってたかのようなタイミングで、入り口前に姿を現す。

「吉野様、こちらです」

 森田さんについて行く。

中は珍しく(って言っていいのか分からないけど)閑散としてた。

少し前まで、ここで警察が動いてたと思うと夢みたいだった。

少し前に復旧作業が終わり、警察は警視庁へと拠点を戻した。

まあ、俺はPCPにいたから実際どうなってたかなんて分かんないけど。

森田さんに1室に案内される。

そこにはかなりの量の物が保管されてた。

「一応、倉田警視に断りは入れていますので、ご安心ください」

 警察は、ようやく火災が発生した、殺人現場になった建物を調べ始めた段階らしい。

落ち着いてようやくって所だろうから仕方が無い。

逆に言えば俺が単独で調べられるのは今位しか無いって事だ。

何れこれらの証拠は警察で保存されるだろう。

「時間的に全ての建物を調べられたわけではありませんが……」

 調べた場所はトランプ館と双鏡塔。

他の建物は花園塔位だろうか。

だけど、あそこに何か痕跡が残ってる話は聞かない。

確か警察が花園塔は調べた筈。

雷鳥館は既に証拠を消されてるだろう。

だとしたらトランプ館と双鏡塔を調べてくれたのは有り難い。

トランプ館と双鏡塔の物が別々に保管されてる。

トランプ館は、やはりトランプばかり。

当時足を運んだ時はそんなに多くのトランプがあるとは思えなかった。

精々遊戯場にあったもの位だろうか。

双鏡塔の物は多義に渡る。

懐中時計にノート、万年筆、包帯と言ったアイテムが並ぶ。

万年筆に名前は書いてない。

だけど、双鏡塔の証拠品からは。

明らかに誰かが住んでたような気さえする。

「この証拠品は、全て吉野様らがいなかった塔の焼け跡から回収したものです」

 ……なるほど。

誰かが隠れ蓑にしてた可能性が高い……って事か。

ノートの中身は白紙だったけど、表紙が黒いノートって言うのが引っ掛かる。

久遠自身が住んでた可能性は低いだろう。

わざわざ自分が住んでるってばれる可能性がある場所に俺達を殺人事件の舞台として呼ぶ理由が無い。

誰か別の人物が住んでたって考えた方が良いだろう。

それに、トランプも気にはなる。

そもそも、官野帝はトランプに興味があったなんて記述は日記に無かった。

だからこれは少なくとも官野の死後に用意されたものだろう。

だとしたら皇桜花か秀介が用意したのか。

どっちかとすれば皇桜花だろう。

秀介に必要だったのは殺害現場に残す数があれば良い。

それだけじゃないかもしれない。

確かあそこには銅像や絵も飾られていた。

確か銅像はトランプのモデルになった人物を象ったものだった筈。

トランプを意識付ける為の道具って考えるのが妥当か。

或いは、トランプの館だと思い込ませる事によって館を覆っていた蔦から意識を逸らす為かもしれない。

問題は何故官野帝が最期を過ごした館を、トランプ館に変えてまで舞台にしたか。

それに、雷鳥館を爆破したのだって。

俺達を殺害する事が目的なら他にやりようなんて幾らでもあった筈。

……もしかして、館自体の爆破が目的だったんじゃないだろうか。

しかも、その建物を久遠が次々に殺人の舞台として利用した。

ただの偶然で片付けるには無理がある状況が並んでる。

……仮に久遠が建物の秘密を暴く為にわざと殺人現場に選んでたとしたら。

皇桜花がその情報を知り得る人物と、あの日記を見て確信を持って殺害した。

そう言う側面があった可能性がある。

それに、双鏡塔に住んでた人物が誰なのか……。

他に何か思い出せる事は無いか。

両小指を絡め、手を口元に当てて考える。

そう言えば。

双鏡塔の事件で黒の御使いのメンバーである阿武隈川愛子が来たのも引っ掛かる。

事件解決をしたのが俺だって事を確信に変える為って思ってたけど。

皇桜花が久遠らの存在に気付いてたんだとしたら。

正体を見極める為に足を運んだ理由も捨てきれない。

俺達が事件解決に必死になってる裏側で。

奴らの何かやり取りのようなものや過去に対する疑問が存在してる気がしてならない。

回収をお願いして正解だった。

多分気付けなかったかもしれない。

この事件、ただ単に50年前の事件ってだけで考えない方が良いかもしれない。

そう考えれば、刑事が官野を救えなかった事にも理由がありそうだと推測できる。

あまりにも色々な事が繋がり過ぎてる。

「いかがなされますか? 吉野様」

 とりあえずスマホで証拠品の写真を撮り、また気になったらここに来る事にする。

こうなると、やっぱり平石の交友関係が鍵になって来るだろう。

その先に、50年前の事件の真犯人に繋がる情報が得られる可能性が高い。

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