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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪4 永久の零を望む者達
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本当の事件の始まりが

 久遠正義と館華星は、最高裁による裁判を行う決断が下された。

異例中の異例ではあるが、事件の規模を含め、この事件は必ず死刑判決を下さなければならないと言う見解もあるのだろう。

恐らく、それを否定出来る者はいない。

そして、久遠は私に願いを申し出て来た。

翔太君に会わせて欲しいと。

久遠には既に家族はいない為、面会を行う事は不可能な状況ではあるが、面会をする事によって久遠が犯行理由を話す。

或いは精神の安定が期待される人物であれば例外的に面会を認められる。

そう言った意味で、翔太君の希望を退院後のタイミングで行う。

だが、何故久遠は翔太君に面会を望むのか。

理由が分からない。

久遠に尋ねたが、翔太君から詳細を聞く事が望ましいと。

要するに、答える気は無いようだ。

無理に吐くような人物では無い事は十分承知している以上、慎重に事件経緯の詳細を聴取する必要がある。

「それで今日は、何用かな? 倉田警視」

 特別取調室にて、正面に座る男、久遠正義が私に問いかける。

事件が解決してから、既に1か月が過ぎている。

殺害動機や殺害方法は、あらかた警察の捜査やPCPの働きにより、明らかにはなった。

犯罪を起こす動機がある者を救う為に、殺人教唆や殺人を実行した事。

「そこまで、全て、話した通りだ。後は、武器の、調達方法と言った、所か?」

 その通りだった。

日本でそのような武器売買が行われている事は考えにくい。

かと言って持ち込む事はもっと困難。

黒の御使いにも言える事ではあるが、その取引ルートを知る事で今後起こる犯罪を防ぐ事が出来る。

この手の動きであれば、警察からでも充分に行える。

警察の動きが犯罪者によって手玉にされてしまう醜態を晒してしまった。

だからこそ動ける事をする事が必要。

「捕まえる事は、不可能だ」

 やけにあっさり答える事が意外だ。

「個人で、彼らは、動いている。組織では、無いのだ。仲介している者は、いるかも、しれないがな」

 ……アタッシュケース1つで武器の売買を行っている者もいる事を、どこかで聞いた気がする。

その類の元傭兵……と言う事か。

ハッとする。

以前、血が付いた身分証だけが残され、身分証の本人が行方不明になった事件があった。

まさかそいつを……。

「それが、彼の、やり方なのだろう。偽造身分証など、幾らでも、作れる。そうして、本当の目的を逸らし、自分は煙のように、姿を隠す」

 ……厄介な事だ。

確かに、久遠の言う通り追跡はほぼ不可能だろう。

だが、対策を考える事は可能。

「吉野、翔太は、いつだ」

 日にちの催促に憤りが無い訳では無かった。

元々原因を作ったのは貴様だと告げる。

下手をすれば両腕が使えなくなっていたかもしれないのだ。

わざと言っているのか本心なのか。

真意は分からない。



 姉ちゃんに頼んだ事が久遠に関わる事かと思ったけど、残念ながらその予測は外れてた。

単純に日記に書いてあった、犯罪を目的として作られた建造物の破壊が目的だったんだろう。

……終わった筈なのに、まだ事件について考えてる俺がいた。

これからの事は、今の入院中で考えても仕方が無い。

動く事に意味があるからだ。

それに、何か重大な事を忘れてるような気持ちの悪い感覚が俺の中にあった。

何だ?

納得いかないけど、目的に疑問があった訳じゃない。

犯行の手順でもない。

そもそも、殺人事件があった場所へ姉ちゃんに行って貰った理由は何だったか……。

姉ちゃんが焼け焦げた現場をモニター越しに見つけたから。

ここにも別におかしな所は無い。

違う。

何でその時に行って欲しいって、俺が判断したのか。

気になる事があったから。

……ハッとする。

古い日記。

それに書いてあった筈だ。

とある刑事によって無罪が証明されたけど、結果的に官野帝を殺人犯に仕立て上げるしか無かった。

それに。

古い日記を書いたのは死ぬ直前。

官野本人が日記を何冊も書いたとは考えにくい。

だから久遠が何か知ってると思った。

……。

俺が久遠から話を聞くのは多分無理だろう。

扉が開き、拓さんが入って来る。

「怪我の具合はどうだ?」

 順調だと同時に、物凄い良いタイミングで入って来てくれてありがたい。

「突然で申し訳ないが、退院したら久遠正義と面会をして欲しいんだが、良いか?」

 ……は?

出来るの……?

「これはまだマスコミにも伏せている情報だが、久遠正義、館華星の両名は最高裁にて判決を下す決断が下された。恐らく、久遠正義と館華星の両名を死刑判決にする方針だろう」

 ……それは俺にもどうしようもない。

だけど世間は無期懲役だろうが許しはしないだろう。

だけどあの場で死んでたら。

取り返しのつかない事になってたと思う。

「だが、死刑囚への面会は、面会をする事により死刑囚が精神的に安定すると判断された者は可能になる。久遠館華両名は既に家族がいない。だからこそ翔太君がこの状況では適任だ」

 断る理由は無かった。


 だけど、この時の俺は予想もしてなかった。

俺が解決すべき事件がここから始まるなんて。

証拠も何もかもが風化した、忘れ去られた事件の解決をする事になるなんて。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

いかがだったでしょうか?


物事の善悪について。

書いて行くごとに毎回考えさせられました。

誰でも納得出来るような犯行動機を考えても。

それを実行するのはどうなのか。

法的にダメでも、それは加害者の精神状態を考えれば当然なんじゃないか。

ミステリーを書いて今回感じたのは。

善悪を書く事なんだなと自分なりに思いました。


そんな事を書いてますが、私自身はまだ尚結論を出せずにいます。

考えて考えて。

慎重に結論は出さないといけないと感じました。


そんな、人の誰もが持ってる善悪の定義とか。

そう言うのを考えながら読んで頂ければと思ってます。

次がラストになります。

しばらく空きますが、最後まで書こうと思っていますので宜しくお願い致します。



それではこの辺でノシ

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