表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪4 永久の零を望む者達
78/108

諦めは零

 見上げた久遠は恐れてる様子も何も無い。

ただ、静かにその時を待ってるようにも見える。

ネット上での拡散と桜庭コーポレーションでの事は、世間が疑問視するのは間違いない。

だから確信してる。

俺達が止められない事を。

警察が銃の引き金を引かない事も。

「悪の行先は、絶望と死である」

 声がこの距離でも聞こえるのは、恐らく小型の拡声器を使ってるからだろう。

メディアが声を拾えるように。

「憎しみの連鎖は、関係者同士が関わる限り終わる事は無い。よって我々が介入する事で終わらせる必要があった」

 ……。


「そしてその罪人を裁いた我々は、やはり悪である」

「殺害した方々の動機は虐待、殺人、様々な犯罪を隠蔽した為です。犯罪は、公にならなければ犯罪にすらならない。我々はそうあるべきでは無いと強く願っています」

「詳しくはネットに記載させて頂いた通りだ。それを見つけられなかった事実を責めるつもりは無い。だが、見過ごして良いものでは無いのだ。全て」


 否定しきれない自分がいる事は分かってる。

久遠らが教唆した連続殺人の犯人の動機。

納得出来なかった事実は1つも無かった。

そこに俺自身がいれなかった事がなのか。

止められなかった事がなのか。

殺人動機を否定出来なかった事がなのか。

これだけ考えても見えて来ない。

殺人を止める理由が弱い事なんだろう。

俺が引っ掛かってるのは。

犯罪を止める。

俺はそう願った。

きっとそれは、秀介の憎しみの連鎖を垣間見たから。

今考えればきっかけは俺だけの問題だった。

だから俺は。

自分自身の問題にケリをつける。

久遠がやってる事はただの自分勝手の理想論だ。

それに。


「てめーの目的は、てめーが死んでも何にもならねえよ」


 久遠が俺を見る。

俺の声が拾われるかどうかは分かんないけど。

言わずにはいられなかった。


「てめーが捕まって生き続けねーと意味ねーだろ」

「ほう?」

「てめーの死をいつまでも全員が覚えてる訳ねーよ。今のネットを知らないなんて言わせねー」

「何も分かっていないのは君の方だ。吉野翔太」

「何だと?」

「犯罪を犯そうと考えている者は、何を思う」

「どう言う事だ?」

「この犯行声明で、少数となった意見を見ていないのか?」

「それは……」

「犯罪を犯そうとする者を説得する事が出来れば、犯罪は0になる。突発的なものや事故はシステムでしか防ぎようが無い。だが、殺人だけは人の憎しみが意思を持つかどうかで変わる。よってこうした方法で命を懸け、発信する事はその者らに対して有効な手段とは言えないか?」

「だったら最初から犯行予告をネットに出せば良かった。それをしないで今更そんな話をしたって筋が通らない。目的と手段がご都合だろうが」

「伝わる人物に伝える為の手段だ。我々は確実に悪の芽を摘んで来た。それに、最初に君に会った時の事を忘れたか?」

「忘れる訳ねーよ。だったら、全部自分で裁けば良い。それをしなかったのは目的の為なんて言わせねーよ」

「この状況を作りうる人物がいたからだ。吉野翔太」

「そんな筋の通らねえやり方で死んで誰かの心を動かさせやしない」

「だったらどうする?」

「てめーを止める。んで、犯罪を止めてやる」

「出来るのか?」

「だからてめーを生かすんだよ。ただ生かすだけな訳がねーだろ」

「ほう? この私を?」

「犯罪を止めたい気持ちが同じなら。協力出来る筈だ。だけど協力はしねーだろうし、捕まえた時点で無期か死刑になる。それなら俺なりに利用する」


由佳、楓に視線を送る。

俺は多分ここから動けない。

だからこっちの目的を成功させる為の方法を由佳と楓に考えて貰う。

奴らがいつ飛び降りるかは分からない。

だけど俺との会話をしてるって事はまだその時じゃないって可能性はある。

短いかもしれないし何時間も時間があるかもしれない。


「まだその時じゃないって訳か?」

「慌てるな。計画実行には相応の舞台が必要だとは思わないか?」

「どっかで聞いたような事言うんだな。だが、もうどこも包囲されてる。下にだって警察がいる。こんな状況でどうやっても逃げる事は不可能だ」

「それを可能にする方法を考える事をして来たのではないか? 吉野翔太」



 病院の手当てが終わり、急いでPCPへ戻る。

優子さん以外に人はいなかった。

優子さんは明かりもつけないまま、テレビのニュース映像をただ黙って見てる。

明かりをつけ、モニターを拡大して目的の場所の様子を見る。

桜庭コーポレーション屋上の映像からは何も読み取れないけど、久遠正義は誰かを見下ろしてるように見える。

翔太さんが何かを話してる。

そして、桜庭さんがゆっくりと屋上から中へ入って行く姿が映る。

多分、何か止める為の策を実行に移してるんだろう。

「華音ちゃんはうまく行くと思う?」

 思う。

皆の想いを嘘にしたくない。

きっと大丈夫。

きっと。

「祈る方が良いよね?」

 ……優子さんも信じてるんだ。

でも、ビルの下には広範囲に転落用の巨大な救助マットが見える。

久遠正義が死ぬって目的は達成し得ない。

拳銃で死ぬかもしれないけど、上空は警察のヘリだって飛んでる。

こんな状況でどうやって……。

今までの行動が狙いだとすれば。

私にも出来る事があるなら、方法を思いついたらすぐに連絡を入れる事位。

残り時間が分からない以上、これはある意味私にとっては確率。

だから心から願う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=173247957&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ