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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪4 永久の零を望む者達
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祈り

 館華さんのスマホが鳴り、直ぐに切れる。

「時間のようですね」

 館華さんが拳銃を下ろし踵を返すのと、優子さんがあの重い扉を蹴り開けるのは同時だった。

「華音ちゃん大丈夫!?」

 優子さんに向けて容赦なく発砲されるけど、優子さんは横に飛んで躱してしまう。

出鱈目すぎると本当に思う。

「一足遅かったですね。吉野優子さん」

「以前に助けた人間を発砲なんて良い趣味してるわね」

 館華さんは素早く部屋に入る。

優子さんは追いかけるかと思えば、警官が何人も入って来る。

「華音ちゃんを助けられればそれで良いわ」

 だったらもうちょっと隠れて入って来て欲しい。

撃たないだろうって思っても、心臓に悪い。

「出血は……これでとりあえず良し」

 包帯とガーゼで簡易的な止血をされる。

「久遠正義は後一歩の所で逃げたみたい。さっき電話があったわ。それで多分館華星も逃げたんでしょうね。詳しくは分かんないけど」

 ……。

結局良いように使われただけだったって事だろう。

優子さんなら、無理矢理にでも捕まえられたかもしれないと。

何故かそう思った事が悔しかった。

「何で泣いてるかは分かんないけどさ」

 優子さんに肩を叩かれる。

「多分華音ちゃんの周りにいる人達は、それ以上に失敗してる気がするわよ」

 無理矢理おぶられ、運ばれる。

そんな事、優子さん以上に知ってる。

「後は病院に行って、解決するの待とっか」

 居ても立ってもいられない。

だけど怪我した私がこれ以上役に立てそうもない。

「あいつらなら大丈夫でしょ」

 ……。

何でそう楽観的になれるんだろう。

「そりゃあ、バカだけどあたしの弟だし」

 ……。

凄い漠然としてるのに、凄い納得してしまうのはどうしてだろうか。

私には館華さんを説得する事は出来なかった。

その事実はちゃんと受け止めよう。

翔太さん達に後は託す。

もし翔太さん達がうまく行けば。

もう1度館華さんと話せる機会があるって思う。



 世界にどうして犯罪があるのか。

犯罪と言う定義が存在しているからに過ぎない。

もう1つ定義があるとするならば。

それが認識されていると言う事。

認識されなければ犯罪にすらならない。

だが、それは違うと。

犯罪を通じて我々は訴え続けた。

全てを照らし、それでも自分は正義と自信を持って言える人物は少ないかもしれない。

だから犯罪で犯罪を暴く。

そしてその代償を自ら払う。

「お早いお着きですね」

 始めた時から既に1人のものではない。

全世界の為の革命。

屋上からの世界をただ見つめる。

「目が見えるようになった日を思い出しました」

 雪が輝く白の世界を。

館華星は美しいと思っただろう。

だからこそ協力を。

覚悟を決めた。


「今見える世界は、どう映る」

「未来を見続ける価値のある世界です」

「こんなにも、人は、未来を夢見続ける」

「だからこそ、居てはいけない罪人を排除し続けなければいけなかった」

「誰かが、その役目を。背負わなければ、ならなかった」

「今だから、ですか?」

「ヴァイオリンを、弾く未来は。切り捨てて、良かったのだろうか」


 俯いたのを見逃す訳が無かった。

「生まれ変わってからで構いません」

 輪廻転生。

自己犠牲を厭わない日本人そのものの考えだろう。

自分が現世で犠牲になっても。

自身は来世で幸せになると言う。

扉が開く。

倉田拓也を先頭に警察が。

遅れて吉野翔太がやって来る。

「久遠正義、館華星! そこまでだ! 投降しろ!」

吉野翔太らPCPのメンバーは、分厚いシールドによって遮られている。

警官らは拳銃を構えてはいるが、梯子でこちら側に上って来る様子は無い。

だが、既に関係は無い。

上空には警察のヘリも待機しているだろうが。

別の存在もある。

マスメディアのヘリだろう。

予想通りの展開になっている。

私は手を上げる。


 始めよう。

0の世界を。



 華音ちゃんは何故か来てた森田さんに任せ、PCPへ戻ると誰もいなかった。

ここに誰もいないって事は。

いよいよそう言う事なんだろう。

モニターを見るけど、翔太達らしいのはどこにも見当たらない。

勝手に使うのも気が引けたから、別のテレビをつける事にする。

何かしらの情報は見れるかもしれない。

テレビをつけると、上空からの映像がニュースになってた。

何回か行った事があるから分かるけど、桜庭コーポレーションだろう。

拡大の映像じゃないから分からないけど、多分連続殺人事件の犯人って言ってるから久遠正義と館華星。

それと翔太達もいるんだろう。

殺人の内容、今回以外の罪が報道されて行く。

けど、館華星が館華家の人間って事とか盲目だった事、館華家の確執なんかは報道されてない。

端から見たら、目的不明の異常事件として記憶に残るんじゃないだろうか。

裏にある問題を見抜ける人は警察関係者を除けば存在しないと思う。

……。

だからって訳じゃないけど。

何か引っ掛かる事がある。

気がする。

官野帝の日記にそれを示すような事が書いてあった覚えがある。

だけど思い出せない。

結局事件に関係あったのか無かったのかは分かんない。

……考えても仕方が無い。

ただ皆の無事を祈る。

上空からの映像で、警察が大量動員されてる事が分かる。

要はあたしにはもう出来る事は無い。

だから祈る。

翔太が病院に運ばれた時も祈った。

その祈りが通じたかどうかは分かんない。

だけどそれしか出来ないならやる。

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