連なる想い
優子さんとPCPに戻る。
中に入ってまず感じたのは重苦しい雰囲気。
松本から聞いた事は、既にここと翔太に転送した。
それに、華音ちゃんがいなくなってる。
「館華星の所にいるわ」
モニターを見ると赤い点滅が2つ。
移動する事無く点滅を繰り返してる。
もう1つは翔太。
あたしが転送した場所と同じ場所……。
「警察を向かわせてはいるが、恐らく両者拳銃を所持している」
あたしは踵を返す。
「どこへ行くのかしら?」
決まってる。
翔太の所。
「私達に何か出来るのかしら? ここで情報を集めた方がまだましだと思うけれど?」
出来る出来ないじゃない。
やれる事が増えて来ると出来る出来ないで物事を何でも考えちゃうかもしれない。
だけどそれは。
やりたい願い、想いが積み重なって結果そうなった。
それに翔太を守るのはあたしの役目だから。
「足を引っ張る事になるわ。雷鳥館で由佳ちゃん。貴女は翔太君に守られた事を忘れたのかしら?」
楓さんはそれを分かってるから動かないんだろう。
本音を言えば、翔太の元へ行きたくて仕方ない癖に。
どっちが正しいかは分かんない。
違う。
きっとどっちも正しくて。
きっとどっちも翔太を思ってる。
だけどあたしは行く。
共に歩むって決めた。
「……そう」
倉田さんは頭を抱えてるけど、あたしはそれでも行くつもり。
「いくら君らに数々の借りがあるって言っても、警視の前で簡単に話を進めて貰いたくないのだがな」
すみませんと謝る。
だけど華音ちゃんを行かせた時点で、倉田さんの答えも分かってる。
倉田さんはため息をつく。
「絶対に死なないで欲しい」
ありがとうございますとお礼を言う。
そう言えばどうして華音ちゃんが向かったんだろう。
「館華星から電話が来た。阿武隈川愛子を拉致していると。交換条件として華音君を指名して来た」
それでも翔太は久遠捜索に向かった。
それで華音ちゃんも向かった。
……2人の考えが何となく分かる。
ここで2人とも捕まえるつもりなんだ。
だったら猶更行かないと。
ネットの書き込みを見る。
犯行声明についての書き込みだ。
久遠正義は悪だとする書き込み。
殺害覚悟で捕まえるべきと言う書き込み。
そんな人物を捕まえようとしてる翔太が。
どんな扱いを受ける事になっても。
あたしはそれを見届けなきゃダメ。
「あたしは華音ちゃんの所に行った方が良い? どんな状況か分かんないけど、ここにいるよりましよね」
「優子君はその方が良いだろう。だが、くれぐれも気を付けてくれ」
楓さんを見る。
「私は万が一に備えておくわ。2人を追えるように」
「翔太は任せて」
「死なせたら承知しないわよ」
出て行く由佳ちゃんと優子の後姿を扉を閉めて遮る。
行かなかった理由なんて決まっていた。
役に立つ立たないじゃない事は。
PCPにいれば分かる事なのだから。
想いの結果がPCP。
自分にさえ嘘をついて。
ただ、翔太君を守る役を。
由佳ちゃんから奪いたくなかった。
私は想いの中だけで良い。
翔太君にとっての脇役と主役は。
もう決まっている。
ここで私がやるべき事は。
万が一久遠と館華が逃走した時に逃がさない事。
それに。
スマホが鳴る。
爆破現場の救助作業が完了した事を聞かされる。
行方不明者は0。
そのまま復旧作業に協力するよう指示を出す。
ボランティアで財閥の人間を派遣している以上、私が動く事はもう出来ない。
久遠と館華の件は。
ここから祈るだけ。
最初から殺害するつもりなら、腹部を撃つなんて事をしないのは奴だって分かってる筈。
だとしたら、俺が必要だから殺さないって事。
立ち上がり、正面から見た久遠の表情は。
この上なく冷たかった。
「重要なキャストだと言ったな。だからすぐに死なない部位を狙って撃ったのか?」
「そうだ。君は、私の計画に、必要なのだ」
「自分が死ぬ計画に俺が必要だと?」
「君は、私を、止めるのだろう?」
そう言う事か……。
俺に止めさせるのが目的。
「犯罪を止める、考えを持つ人間が、少ないのは、事実」
要はその考えを持つ人間なら誰でも良かった。
多分、ある程度の推理が出来る人物を。
そうして自分の元に現れるであろう人物であれば。
だから俺を殺害しなかった。
だったら最後に死ぬって言うのは……。
「だが、ここでは、無い」
久遠が逃げようとする所に警察が来る。
「久遠正義! 連続殺人犯として確保する!」
「予想より、遅い到着だな」
建物を警官が囲ってるんだろう。
拓さんと楓が今の状況を予測してくれたおかげだろう。
そして由佳の情報でここの場所を。
華音ちゃんが館華星をリスクを背負って留めてくれてる。
全員が動いたからこの状況がある。
だから。
お前の犯罪はここまでだ。
久遠正義!




