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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪4 永久の零を望む者達
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悪の標的

 爆弾テロに連続殺人。

相次ぐ凶悪事件が起きた為、夜間の人通りはほぼ0になっていた。

自分が狙われるかもしれない恐怖。

家族を危険に晒すリスク。

理由は様々かもしれない。

そんな中、1人の女性が歩いていた。

黒いパンツスーツに身を包む女性は、夜間にしか動けない理由があった。

警察に追われる身だ。

そんな女性の背後をつける影があった。

その存在を知ってか知らずか。

女性の歩速は一定だ。

距離を保ちながら、女性の後を追っていく。

やがて木々が聳える道に、女性の進路は向いて行く。

追って行く影が止まるのと同時に、女性は振り向く。

「私に用かしら?」

「阿武隈川愛子さんで宜しいでしょうか?」

 同時に拳銃を構える。

じりじりと近づく過程で女性、愛子は答えない。

「私の名前を知っていて、こっそり後を追いかけて来る拳銃女に覚えは無いけど?」

「嘘ですね。思い当たる人物が1人いらっしゃるのではないですか?」

「館華星……かしら? 相当派手に動いているようね」

「あの現場から咄嗟に逃げた事は良い判断でした。貴女も殺害するつもりでしたから」

「私は私で目的があるから動いた。それに、貴女に殺害される条件を持っていない。何も分かっていない警察ならまだしも」

「条件なら持っています。黒の御使いは悪ですから」

「ふーん。逃走車を何度も乗り換えて殺害を繰り返した理由は、私達を探す目的もあったのかしら?」

「そうです。メンバーの顔とリストは可能な限り集め、後は殺害する前に聞けば良いと判断しました」

「壊れた組織を個で壊すつもり?」

「悪は殺す。それだけです」

「その言葉、そのままお返しするわ」

 星と愛子の距離が5m程になった時。

同時にサイレンサーの抜けた音を合図に2人が動く。

初弾をお互いに避け、再び構え直す。

円を描くようにゆっくり動き、星が仕掛ける。

星の銃弾をしゃがんで躱し、愛子が素早く距離を詰める。

次弾の発砲が間に合わず、愛子の蹴りを星が銃で受ける。

すかさず発砲しようとする愛子の銃身を片手で星が受け止める。

「盲目だったと聞いていたけど?」

「努力は惜しまなかったですから」

「あっそ!」

距離を取る星がいた場所に、逆足の愛子の蹴りが空を切る。

同時に星の発砲で愛子の拳銃が吹き飛ぶ。

手を抑える愛子に、星が拳銃を構え直す。

「仲間の居場所を教えて下さい」

 言い終わる間も無く愛子は手に持ったナイフを星に投げつける。

間一髪で避ける間に愛子が拳銃を拾い、2人が再び同時に構える。

「これまでの犯罪者は簡単だったでしょうね」

「いえ、チェックメイトです」

 振り返る愛子の後方に、もう1人現れる。

防御が間に合わず、腹に重い一撃をくらい愛子の体ごと吹っ飛ぶ。

「捕まっていない幹部は、貴様だけ」

「久遠……正義……」

 口元に布を押し付けられ、愛子の意識は遠のいたのだった。



 予想はしていたけれど、館華星の居場所を見つける事が出来ないでいる。

駆け付けた警官の話だと、床に空いた穴は地下道に繋がっていた。

恐らくだけれど、黒の御使いが使用した地下道だろう。

全てが準備通りだったのか。

それとも偶然開いていた穴だったのかは分からないけれど、私の命が助かったのは奇跡なのだと痛感する。

地下室の捜索は警察の方で出来る限りの人員を割いてくれるそうだけれど、どうなるかは分からない。

深呼吸する。

久遠らがまだ動くのであれば。

まだ殺害すべき人物がいると言う事。

誰を殺害しようとしているかが分かれば、良いかもしれないけれど、どのように探しているかさえ見当がつかない現状。

予測なんて不可能に近い。

相手を予測する事が出来ないのであれば。

原点に戻る事さえも忘れていた事が恥ずかしい。

捨てようと思っていたけれど、もう捨てない。

考える視点を変える。

自分が思いつく、犯罪者は誰かを考える。

企業間の人物であれば私の方が詳しい筈だし、何より率先してPCPが参加している。

それ以外に思いつく人物がすぐには思い浮かばない。

翔太君が今まで関わった事件の犯人は、全員服役しているか死亡して……。

違う。

私も知っている犯罪者で、久遠が殺害しうる共通の人物がいる。

黒の御使いの残党。

まさか……。

けれどこれだけの殺人を犯してまだ逃げる理由があるとすれば。

黒の御使いを殺害する他に無いだろう。

それに、絶えず動き回って車での移動を繰り返し、犯行を重ねて行った理由を考えれば。

もしかしたら黒の御使いメンバーを探していた為かもしれない。

もう少し掘り下げてみる。

警察でさえ見つけられないような人物全員を簡単に探し出せるとは思わない。

だとするならば。

その中の誰かを捕まえて吐かせる方が効率が良い。

出来るなら、幹部クラスの人物で……。

阿武隈川愛子。

彼女の捜索を優先させた方が良い。

動けるか分からないけど、倉田さんに電話をする。

『桜庭君か。どうした?』

 事の詳細を説明する。

合っているかの確信は無いけれど、筋が通っている気がしてならない。

倉田さんら警察が動けるようになれば。

この状況を覆せるかもしれない。

『復旧作業は残りを救助隊、自衛隊、ボランティアでやって貰う目途が立った。協力感謝する。全警官に久遠正義、館華星並びに黒の御使いの捜査を再開する。私はそちらへ向かう』

 これだけ早く警察の捜査体制が通常に戻る事を予測しているかは分からないけれど、倉田さんがこちらに来ればより効率的に警察を動かす事が出来るだろう。

……。

目を閉じる。

過去の出来事を無かった事には出来ない。

けれど思いまで閉じ込める必要は無いのだと。

邪魔をするつもりは無いけれど。

まさか翔太君本人に気付かされるなんて思っていなかった。

知らない内に人を変えてしまう強烈な力。

それを彼は持っている。

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