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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪4 永久の零を望む者達
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零の裁き

 男、安西寛斗は過去に大罪を犯した。

学生時代にサークルで犯した強姦。

その後遺症に、とある女性達は未だに苛まれている。

学生の犯罪には、未だに手が届かないケースも多いのだろう。

現に、こうして現在も一般人として生きている人物が存在していた。

リストは200を超える。

だが、完遂する覚悟はある。

その為に膨大な時間を費やし、調べ上げた。

たった2人で出来る訳が無いと、世界の誰もが思うだろう。

だがそれは……。

限られた時間の中。

次のポイントへと移動を開始する。

ただの幻想である事を、世界はまだ知らない。



 郵便物の発送を済ませ、私は由佳さんからの連絡を見て大学へ向かう。

殺人事件が起きた。

それだけなら、私が協力してるPCPは動かないけど。

届いた古い手帳。

皇桜花と官野帝の過去が書かれたもの。

誰が届けたのかを考えたら。

翔太さんが動かないわけが無いだろう。

……どうして世の中は、こんなにも犯罪が起こってしまうんだろう。

私は手帳を読んでそう思った。

兄さんは私の為に犯罪に手を染めてしまった。

官野帝は。

誰かの為に犯罪を犯す事すら許されなかった。

だから目的を自分の為にって。

暗示をかけるしかなかったのかもしれない。

それでも誰かに分かって欲しくて。

皇桜花に心の闇を聞かせた。

何を求めたんだろう。

生き地獄に放り込まれて。

それでも願った殺意を。

私は悲しいとしか思えなかった。

希望を持つ事は出来ないかもしれないけど。

ただ、勇気を持ってほしかった。

面と向かって言えないのが。

ただ悲しい。

カードキーを差し、大学の建物に入るのも手慣れたものだ。

カードキーは桜庭さんが渡してくれた。

こっそり複製したわけじゃなくて、桜庭さんが持ってるものをそのまま頂いた。

拠点内には、もう由佳さんと桜庭さんがいた。

「ごめんね呼んじゃって」

 謝る必要なんて無いのに、由佳さんは本当に優しい。

「食事は済ませてきたのかしら?」

 毎回お腹をすかせてる訳じゃないけど、この人は優しくない。

PCモニターには、殺害現場の様子が映されてる。

「ライフルによる狙撃のようね」

 こっちを見ずに桜庭さんが状況を説明してくれる。

死亡推定時刻は21時。

直後の映像が、モニターの映像と言う訳だ。

「狙撃地点はまだ分かっていないけれど、50口径用の弾丸が見つかっているわね」

 50口径が良く分からないけど、要は遠く離れた地点から狙撃が行われたって事だろう。

「まだ周辺をモニターし始めたばっかりだから」

 私は由佳さんの言葉を待つ事無く、由佳さんの隣に座る。

「理解が早くて助かるわ」

 桜庭さんはこの状況で何をするんだろう。

「私は一度桜庭コーポレーションに戻るわ。捜査状況を知っておきたいし、何より黒の御使いがまだ捕まっていないわよね」

 ……そうだ。

皇桜花が死んだだけで、それ以外のメンバーは誰一人として捕まってないんだ。

それに、警察は事件で殺害され、警視庁まで襲撃を受けた。

人員に余裕が無いのかもしれない。

「余裕が無くても私が捜査に参加できるわけではないわ。けれど、黒の御使いの行方を追う事で情報提供をする事は出来る」

 後はお願いねとだけ言い残し、桜庭さんは出て行く。

本当に久遠正義がこの狙撃事件の犯人かどうかも分からない。

それはあり得ないと感覚が否定するのに、尚も久遠正義の可能性を否定しようとしてるのは。

兄さんに似てるから。

チクリと胸が痛んだ。



 被害者は安西寛斗。

ライフルによる狙撃により死亡。

弾丸は被害者の額から後頭部へ貫通したようで、血痕が道と同じ方向、後頭部の方へ飛び散っている事実から、被害者の正面から狙撃されたと分かる。

犯人が誰なのかは見当がついているが、それよりも優先してすべき事は、狙撃現場の特定。

急がせているが、それらしき現場が無い。

狙撃に好都合な高層建造物が、現場周辺に存在しないのだ。

一体どこから狙撃を行ったのか。

周囲は住宅街であり、一軒家が立ち並ぶだけ。

マンションも周囲には見当たらない。

被害者が倒れていた道は、1km程の直線が続く。

多少遠くても狙撃を行うには好都合な場所ではある。

だが、不審者の目撃情報は得られていない為、道陰からの狙撃は可能性として低いだろう。

だとしたらどこから、どうやって狙撃を行った?

捜査本部に、桜庭君が入って来る。

警視庁襲撃事件により、現在仮拠点として桜庭コーポレーション内のスペースを提供して貰っている。

様子を見に来ただけでは無いだろう。

「黒の御使いの足取りは掴めていますか?」

 皇桜花が死んだとは言え、誰一人として警視庁襲撃の実行犯を捕まえられていない現状。

そんな矢先に起こった狙撃事件。

両方を勿論追わなければならないが、時間が残されているかどうか……と言う危険な状況。

「狙撃現場の特定は、今由佳ちゃんと華音ちゃんがモニターしています。何かあれば倉田さんに連絡が行くと思います。黒の御使いの目撃情報を頂ければ、消息は私の方で追います」

 頼もしい言葉だが、消息は一切掴めていないのが現状だ。

奴らが逃走したビルの地下道は既に調べたが、下水道に繋がっていた。

つまり、どこから奴らが地上に出たのか。

そのパターンが無数にある為に、数を絞り込めないでいた。

「分かりました。であればこちらで消息は追います」

 私の言葉を待つ事無く、桜庭君はどこかへ行ってしまう。

警察顔負けの行動力で、彼女らは翔太君と共に数々の事件を解決してきた。

今は彼女の手腕を期待するとして……。

ライフルは簡単に扱えるようなものではない。

正確に標的に当てるのもかなりの腕が必要。

それに反動がある為自動で打ち出す事は困難。

例えそれが可能になったとしても。

標的に標準を正確に合わせられるだろうか。

だが。

奴ならそれを可能にしてしまうかもしれない。

恐らくは犯人であろう目星をつけている。

久遠正義であれば。



 女性はゆっくりと部屋に入って来た。

自身が務める会社の会議室だったが、様子がおかしい。

まるで何かに怯えているような、そんな表情だった。

不必要に辺りを見回しながら、入り口に鍵をかける。

それでもなお、女性の挙動不審は続き、扉正面の窓を開ける。

5階からの開放的な景色は女性にとっては見慣れたものだったが、すぐ隣では大規模な工事が行われており、建物一帯はビケの鉄で覆われている。

辺りを異常なまでに確認する女性の側頭部を、弾丸が貫いた。


 同時刻。

マンションの1室。

閉められたカーテンに割れた窓ガラス。

カーテンの内側はガラスの破片が散乱している。

室内には頭部から夥しい量の血液を流し、男性が仰向けに倒れていた。

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