表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪2 文字を愛した少女
34/108

蘇生の先に何をするのか

「PCPに来た男の人は、以前松本沙耶って人の調査をした時のコピーを持ってたので調べました。多分ですけど、松本大河って人だと思います」

「松本……夫婦って事か。その松本沙耶さんと」

「名前が分かっただけでも収穫ね。後であたしが調べてみる」

「んで? あんたはどうだったのよ」

「警察が逮捕して、今事情聴取をしてるけど……」

「何か気になる事でもあったんですか?」

「犯人が拳銃を翔太に突きつけた時、その銃が狙撃されたの」

「狙撃……」

「自衛隊の方ではないでしょうか」

「そう言った要請は出していませんね」

「じゃあ誰がやったのよ」

「……」

「分からないなら切り替えよう。拓さんの事情聴取、どうだったんですか?」

「皇桜花の目的は知らされていなかったようだが、スネークについて、その構成員。そして彼らがどのようにして集められていたのかが分かった」

「構成員……」

「詳しくお願い致します。倉田さん」

「スネークの構成員の殆どが、ネット記事によって晒された者、或いは記事を依頼した有名人本人らしい」

「記事の関係者は、もうその瞬間から黒の御使いによって囲われる……って事ですね」

「え? どゆ事?」

「はぁー。って殴るなよ姉ちゃん! あの記事は、一般人に恨みを持った有名人がその全財産と引き換えに記事を依頼して、それでスネークによって一般人もどん底に叩き落される」

「居場所が。或いは未来が無くなると言う事ですね。坊ちゃん」

「行き場が無くなった人達に仕事とお金を与えれば」

「そうだ。黒の御使いの骨格の完成だ」

「例えそれが悪事だとしても、もう戻れない人にとっては……」


 静かになる。

スネークの構成が仮にそうだとしたら。

暴力団の争いの目的はシミュレーションと言った所だろう。

全てを無くした集団に経験を積ませる。

これ以上の組織は無いかもしれない。

「やはり、坊ちゃんもそう思われますか。私も今のお話で確信致しました」

 ここまでは皆知ってる事なら良かった。

殺害予告を追ってたから、そう言った意味でもここで集まったのは間違いじゃなかったかもしれない。

「後は、官野帝って人の事と、皇桜花の目的ですよね」

 そう言えば姉ちゃんはまた皇桜花と戦ったのか。

「官野帝は、行方不明になった建築家よ。でも、奴が作った建物が1つも無かった。それに帝と皇。あたしと楓はここに何らかの繋がりがあるって思って調べた。けど情報は何も無かった。そこで思ったのよ。もしかしたら現代と違った理由で、報道規制が敷かれたんじゃないかって。その事件に、官野帝が関わってるんじゃないか」

「そこまで考え付いた矢先に、皇桜花が来た……って事ですよね。優子さん」

 事件後、PCPで映像を見た。

全身の重りを外す場面。

あの姉ちゃん相手に今まで手加減してた事実。

俺にとっては信じ難かった。

姉ちゃんを見る。

別にいつもと変わりはない。

何でだろうか。

自分が勝てないかも知れない相手がいる。

姉ちゃん以外に止められる人物は、本当に一部のトップアスリートだけかもしれない。

そんな状況で、不安は無いのだろうか。

「……ちょっとだけワクワクしてるのよ」

 はい?

「どう言う事ですか?」

「お嬢?」

「こいつがもしマジに武道に取り組んでたら……あたしは武道を辞めなかったかもしれないなーとか。心の底から倒したいなーとか……ちょっと何言ってんのって自分でも思うけどさ」

 ……ちょっと何言ってんのか分かんないけど、ほんのちょっとだけ姉ちゃんの言ってる事が分かる気がする。

姉ちゃんが武道を続けなかった理由だ。

自立の為とか俺の為って言ってたけど。

本当は違う。

対等に戦える同年代がいなかったから。

年齢が上の弦さんでさえ歯が立たない。

何度か試合を見たけど、学年が上の相手もまるで相手になってなかった。

要はつまらなかったんじゃないだろうか。

だから初めてなんだろう。

年齢が同じ位で(実際に同じ位かは分からないけど)、戦えるって事が。

それが多分ワクワク。

「だが、優子君。そうは言っても捕まえるか止める。それがマストなのは分かっているのだろう?」

「勿論」

「もー驚かさないで下さいよ優子さん」

 警察は厳戒態勢を維持してくれてる。

後は奴らがいつ仕掛けるか。

「厳戒態勢が解かれた瞬間を狙うのであれば、長期の消耗戦になる可能性もある」

 黒の御使いはこっちの動きを幾つかの事件を通じて把握してる。

厳戒態勢の上から来る事は考えられるだろう。

けど、警察がそんなに甘くない事は奴等だって分かってる筈。

考える必要がある。

限られた不確定な時間の中で。

俺は両小指を絡め、手を口元に当てる。



 電気の明るさと、PCの音だけがこの空間の音を支配している。

翔太君達が休んでいる間の見張りをただ行うだけの退屈で。

最も重要な時間が流れる。

翔太君達からの情報は、後で私が目覚めた後に聞けば良い。

そんな中、私は考える。

漏れている情報が無いか。

皇桜花は言っていた。

当たっているけど違うと。

嘘かもしれないけれど、嘘をつくメリットが特に浮かばなかったから。

嘘をつくのであれば、官野帝を否定すれば良いと考える。

であれば。

私達が色々調べ、手に入れた情報にまだ何か見落としている部分が無いか。

華音ちゃんの情報は、恐らくだけれど頭打ち。私も翔太君も由佳ちゃんも。

暴力団の抗争で言うのであれば。

柳生さんも恐らくもう情報は無いだろう。

倉田さんはどうだろうか。

記憶を遡る。

有村君の事件に疑問を持ち、最初は巨大な自動巻き取りホルダーの製造場所を当たっていた筈。

それが後に黒の御使いによるものだと判明した。

大まかな流れはそうだろう。

その過程で。

松本沙耶と言う女性について調べていた。

浮上した人物は阿武隈川愛子。

……この時に。

倉田さんは皇桜花に会った。

そして関りがあると踏んだ倉田さんは。

阿武隈川病院を調べていた筈。

そうだ。

彼女は元医者。

そして地下で行われていた何かの実験。

確か……。

PCのファイルを開く。

一連の事件についてを簡単に纏めた物。

人が入れそうなカプセルがあった。

……。

私の中で、有り得ない仮説が浮かび上がる。

そう考えれば、皇桜花が合ってるけど間違ってると言った理由。

感情に対する皇桜花の考え方。

警察に対する目的。

それら全てがクリアされてしまう。

けれど、有り得ない。

体が震えているのが分かる。

この仮説を肯定するのであれば。

皇桜花の目的は。

死者を蘇らせる事……馬鹿馬鹿しい。

もじをあいしたしょうじょ。

いかがだったでしょうか。

ずっと考えてました。

文字で人を殺す。

これ絶対無理でしょって。

2年位考えてた気がします。

そこで少しずつあ。これ。これ。って感じで積み上がり、何とか形に出来た気がします。

カノウコウチクでは、実在するアイテムを使って殺人を行うと言うスタンスで基本的に書いていましたが。

もっと曖昧なもの。

到底殺害に使わないようなものを使って殺人を行うと言うのを書いてみたいと言うのもありました。

だからザイカオクサツと言う名前に変えたのもあります。

ここいらで一旦構想を練る為、とりあえず完結の印をつけときます。

1月位経ってあげられると思います。

次回は黒の御使いとの全面対決的な回です。

何か出て来てない犯罪者がいますけど、ちゃんと出します(笑)


最後になりますが、読んで下さりありがとうございます!

それではノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=173247957&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ