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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪2 文字を愛した少女
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誰が少女を助けたか

 徐々に増えて来た抗争は、黒の御使いのスネークによるものだった……。

皇桜花の目的は。

恐らくは警察関係者の内、誰かの殺害。

そう考えると辻褄が合うけれど。

暴力団組織を襲撃する理由がそもそも分からない。

「柳生様は、何か思い当たる理由はございませんか?」

「ふむ……」

 優子よりは頭が切れるだろう。

「余計なお世話よ……」

 華音ちゃんはモニターを食い入るように見ている。

翔太君と由佳ちゃんは、殺人犯と対峙する事に成功したようだ。

気になるけれど。

私達にはまだやる事がある。

歯を食い縛り、心配を頭から消す。

「組織の武力を成長させる為……でしょうか」

 思いがけない可能性を、柳生さんが口にする。

「抗争が増え始めたのが、約2年半前です。何かを行う為の準備に、抗争を行う事が含まれていたと考える事は出来ると思います」

 準備期間……。

だとすると、抗争を行う事によるリターン……そうかと納得する。

更に黒の御使いがどこに目をつけるのか。

「警察に目をつけている可能性が非常に高いです。警察の戦力は国内では突出していますが、彼らといきなり争う訳にも行かない。そうなれば」

「暴力団をシミュレーション相手として選ぶのは悪くないって訳ね」

「それなら……一刻も早く警察にこの事を知らせた方が良いのでは?」

 可能性が無い訳では無い。

けれど確信は全くと言って良い程に無い。

……時間が無い。

急いで倉田さんに連絡をする。

『なるほど……。 分かった。厳戒態勢を敷こう』

 礼を告げ、電話を切る。


 トゥルルルル。


 警察への電話が掛かって来る。

ひとまずは黒の御使いを捕まえた事で安心していた今。

「はい。こちら緊急捜査本部です」

 刑事さんはこんな状況にも拘わらず、良く働いてくれている。

同時に拡声ボタンを押し、全員に聞こえるようにする。

『PCP本部で宜しいかな?』

 聞いた事無い男の声だった。

『そこに鮎川由佳はいらっしゃるのかな?』

 由佳ちゃんを……?

そう言う事かと当たりをつける。


「以前こちらにいらした感想はいかがかしら?」

『ほう? 一瞬でそこまで考えを巡らせるとは。やはり放ってはおけないかもしれないな』

「それで? 由佳ちゃんに何の用かしら」

『なに。もう一度お話をさせて頂きたくてね。彼女をこちらに取り込んでも良いのでは? と思った次第です』

「なるほど? 時間稼ぎと言った所かしら。同じ手ばかり使うのは賢いとは言えないわね」

『時間稼ぎをする必要はもう無いですよ』

「もし宜しければ、貴方のお名前をお伺いしても? 皇桜花、阿武隈川愛子は知っている。けれど貴方だけは我々と全く関わっていなかった筈よね」

『名前がどれ程の意味を持つのかな? 言える事は我々を捕まえるかどうかだけでは?』

「松本……」


 モニターを見ていた華音ちゃんが口を開く。

『ほう……』

「ワイン瓶を象ったお墓を見ました。何年も誰かが入った形跡の無い。松本沙耶って人の墓。入院してた病院に阿武隈川愛子さんも出入りしてた。ここまで合ってますか」

 有村君のもう1つの手紙を見に行った時に見かけたと森田さんから聞いてはいたけれど。

奴等がどう言う経緯で繋がりを持ったかは分からない。

何も話さない状況が、華音ちゃんの言った推測が間違っていない事を裏付けている。

『いやはや。これは骨が折れますね。まさか鮎川由佳だけではなく、それだけの頭脳が集まっているとは』

「松本さん、と呼びます。こっちはもう黒の御使いの目的まで辿り着いています。投降して下さい」

『投降をした所で無意味な集団が我々だ。であれば、力ずくで止めてみると良い』

 通話はそこで切れる。

それにしても。

華音ちゃんの変わり様は何なのだろう。

あそこで咄嗟に切り返せる子では無かった筈。

「皇桜花と最初に会う前、私と倉田さんは病院で松本沙耶って人を調べてました。松本って言う名字が本当なら、多分名簿に載ってる筈です」

「じゃあ、あたしとおっさんは警察に向かった方が良さそうね」

「行きましょう。お嬢」

 とは言うものの、全員相当に疲労しているだろう。

奴等も動き過ぎている。

各自警戒はして頂くにしても、体力的な限界はある。

私がここに残り、何かあったらすぐに知らせる。

恐らくだけれど、警察が厳戒態勢を敷いた以上、直ぐには行動出来ないだろう。

「畏まりました。お嬢様が残るのであれば、私も残らせて頂きます」

「……何かあったら直ぐに知らせなさいよ」

「では、私はどこかホテルを」

「おっさんは家で良いわよ」

 優子と柳生さんは、少なくとも疲れ切った状態で行動させるのは危険だろう。

そんな中予想はしていたけれど、華音ちゃんはただ翔太君達の様子を見守っている。

戻って良いと言っても恐らく聞かないだろう。

「翔太さん達と一緒に帰ります」

 納得する。

1人だけ楽をする事程、気が引ける事は無い。

そう言った組織を作れて、本当に良かった。



 対峙した犯人は、少女にしか見えなかった。

「質問に答えろ」

「答える必要は無いよね? 吉野翔太さん」

 自白してるようなものだった。

こうして時間を稼げば、警察が駆け付ける。

もう手は打った。

「あの2文字だけで、良くここまで辿り着けたね。警察関係者を狙う。そして事件を放置して私を追う事に拘った」

「それは警察の仕事だ。俺の目的はてめーを止める事だけだった。それにてめーが仕掛けた殺害方法は大方予想がついてる」

 構えた拳銃の引き金を引かないのは、相手も何かを待ってるから?

「へー? どんな方法か聞いても良い?」

 女は空に向かって発砲する。

何かの合図?

「それこそ答える必要が無い質問だ」

 続々とパトカーがやって来る。

良かったと安堵する。

「てめーはここで捕まえる。もう犯罪は終わりだ!」

 拳銃を構えた刑事が、女を取り囲む。

「それはどうかな?」

 こんな状況にも拘わらず、女は笑ってる。

「何の為に時間稼ぎをしたんだと思う?」

 何の為?

「ここで私が捕まれば、情報を警察に渡す事になる。警察が憎いと思ってる人がそんな事を許すと思う?」

女がゆっくりと自分のこめかみに銃口を向ける。

「な……!」

 翔太が女に駆け寄る。

「自殺はさせねー!」

 嬉々とした女の表情、翔太に向けられる銃口!

「かかりましたね! 吉野翔太さん」

 まずい!

翔太を殺害するつもり?

そんな事させない!

引き金に手が掛かったその瞬間。

女の銃が吹き飛ぶ。

手を抑える女が即時に警官に取り押さえられる。

拳銃が転がった反対側を見る。

狙撃?

警官が準備してたのだろうか?

「いえ……我々は……」

「まさか……」

「離せ! 離せよお前ら警察が殺したんだろ! 汚らわしい離せよ!」

 女の喚きは心の底からなのか。

一体誰が?

謎に包まれたまま解決した連続殺人事件。

そんな中、考える暇も無く大犯罪が始まろうとしているのだった。

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