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ザイカオクサツ~吉野翔太の怪事件ファイル2~  作者: 広田香保里
罪2 文字を愛した少女
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死を共に

 7人もの警官が殺害された。

都内を中心に7件ほぼ同時刻に起こった為、緊急捜査本部が立ち上げられたのがつい今し方。

人通りが少なくないにも関わらず、目撃情報が極端に少ない事が、より不安を加速させる。

そして翔太君から聞いた、PCPに届いた暗号じみた殺害予告のメール。

PCPへの協力を仰ぐかどうか。

現在はその認可について会議の場が設けられている。

だが、決してそんな事をしている場合では無いと言うのに。

PCPの監視システム、そして翔太君達の頭脳が必要無い訳が無いのだ。

「そもそもリアルタイムの監視は、道徳的な観点からどうなのだ?」

「確かに吉野翔太君の活躍は、警視から聞かされてはいますが、それでも警察に必要かと言われますと……」

「それに、運営費はどうなんです? 安くは無いでしょうし、そうなると予算が……」

「桜庭財閥は、そのシステムの使用を何故許されているのですか?」

 黒の御使い、久遠の情報は警察内で既に公開している。

情報の殆んどがPCPからの情報だと言うのに、これだ。

確かに犯罪抑制と言う点では範疇を超えているかもしれない。

その一方で、常識の範囲を超えないと、奴らを捕まえる事が不可能なのもまた事実。

黒の御使い、久遠を取り巻く一連の事件が片付くまでは絶対に必要だ。

例え私がその結果職を追われる事になろうとも。

確かな願いは、警察役員の葛藤となるに留まった。

問題は。

殺害されたのが警官であれ、警察である以上、町の巡回はどうしても必要な事。

暗号じみた殺害予告文。

そして今回の同時殺人。

いずれにせよ、奴らの目的をいち早く突き止めなければならない。



 目を覚ます。

兄さんの夢は、あれから一度も見なくなった。

それが良いのか悪いのかは分からない。

暗号じみた殺害予告のメールは、やっぱり私に分かる筈も無かった。

だからと言ってネガティブにはならない。

支えてくれる人達が、私に大勢出来たから。

学校でも、そしてPCPでも。

兄さんの事をたまに言われたりもするけど、その時には本気で庇ってくれる人さえいる。

それにただ、感謝をする。

ベッド代わりにしてたイスから立ち上がり、大きく伸びをする。

翔太さん達もここで寝泊まりする機会が多いなら、桜庭さんに言えばベッド位置いてくれるんじゃないだろうか。

そうなったらここが由佳さん達の愛の巣になっちゃうから置かないのか。

私が言っても、多分インテリビッチの事だ。

却下されるだろう。

そもそも私はまだ高校生だ。

などと下らない事を考えてると、スマホの着信音が鳴る。

翔太さんのものだけど、由佳さんとどこに行ったんだろうか。

スマホを置いてく位だから、近場だろうけど。

スマホ画面から倉田さんの電話だと知り、代わりに取る。

「翔太君。今平気か?」

 生憎不在ですと簡潔に伝える。

「それなら翔太君に伝えてくれ。今からPCPへ向かう事と、別々の場所で同時に7件。7人の警官が殺害された」

 表情が嫌でも引き締まる。

7人もの警察官が同時に殺害される。

間違いなく複数犯による目的を持った犯罪。

黒の御使いが本格的に動き出したと言う事だろう。

……警察?

「兎に角そっちに着いたら、詳しい話をさせて貰う」

 待って下さい!

思わず私は叫んでしまう。

「どうかしたのか?」

 ○×の意味不明な殺害予告。

警察の地図記号をばらしたものだったとしたら。

殺害するターゲットは、警察。



 倉田さんからの連絡に、緊急事態と告げて予定を切り上げた。

もう、何かが始まろうとしている。

とんでもない犯罪が。

財閥や富など関係無い。

純粋なまでに残虐な殺戮劇が。

警官の殺害は、警察の戦力を削る事が目的の可能性が非常に高い。

そんな事をする理由は、本格的な犯罪を行う直前まで来ている事に他ならない。

思考が巡ってしまっている事に可笑しさを覚えるけれど、焦らない訳が無かった。

一刻も早く、奴らの目的を突き止めないといけない。

翔太君達はこの事件に対してしか動けないだろう。

だから私は、この後来るかもしれない最悪の展開を想定して動く方が良いだろう。

けれど、私1人で動くのは危険過ぎる。

優子は退院したけれど、万全で動ける状態では無い。

財閥の人間を動かしても、恐らく黒の御使いと対峙した時点で殺害される可能性が高い。

森田さんなら大丈夫ではあるけれど、誰一人として大切な人を失いたくない。

……。

大学を見上げる。

選択肢が2つしか無い。

しかもその内の1つは、勝算がまず無い。

覚悟がまだ持てないでいた。

「何呆けた顔してんのよ」

 ボストンバッグを持った優子。

ここに来る理由が分からない。

「バカと由佳ちゃんの着替えよ。全く全然帰って来ないで。あんたもちゃんと言っときなさいよ」

 ……。


「優子は、私の為に死ねるかしら?」

「死ねる訳無いでしょ。バカなの?」

「それなら、誰の為に死ねるかしら?」

「誰の為にも死なないわよ。死にたいなら寿命が来た時に勝手に終えなさい」

「敵の懐まで行っても戻って来れるって思うのは、私にとっては優子しかいないのよ」

「……あたしについて来いって言いたいの?」

「言える訳無いでしょう。私と優子は知り合ってしまったのだから。誰か1人でも欠けて。それに意味があるなんてどうしても思えないのよ」

「ん」


 優子は黙って私にハンカチを差し出した。

目元を拭い、お礼も聞かずに優子はハンカチを奪うのは、昔から変わらない。

「あいつを捕まえるの?」

 私は優子を真っ直ぐ見て頷く。

「1つだけ条件がある」

 どんな条件でも、私は呑むつもりでいる。

人の命を天秤になんて掛けられない。

「あたしの前で二度と涙を見せない事。見せたら殺す」

 ……。

確かにそうだと苦笑する。

恐らくもう二度と無いと思うけれど、二度目があったとするなら、優子はこう言うだろう。

気持ち悪い、と。

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