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7話「願い事」

 結局、相川の出会って10秒で告白を、今回も阻止できなかった。

 これを阻止できなかったことで、また戻るのだろうか?

 今日寝てみないとわからないが。


 さてどうしたものか。

 相変わらず、相川の告白後の唯は、絶賛ツンデレしていた。

 もうビンビンにフラグは立ってしまった。

 このフラグ…………折るしかない。


 朝のホームルームが終わり、席替えをし、俺の前の席にいる唯と相川。


「さっきはいきなりごめんね、唯ちゃん。これから仲良くしてね」

「別にいいけど、何であんなことしたのよ。」

「目の前に綺麗な花が咲いていたら摘みたくなるものでしょ? そういうことだよ」

「ば、ばかじゃないの?」


 さて、このやり取りも何回も見た俺だからもう何の感情も沸かない。

 10回目くらいまでは、いつ相川に殴りかかろうか迷うぐらいに殺意を覚えていたが。


「ねえ唯ちゃん、僕、この学校来たばかりだから何も知らないんだ。よかったら案内してくれないかな?」

「いいけど、淳一も付いて来てよね!」


 ここはどれを選べば、正解なのだろうか。

 一緒について行くか、ついて行かないか。

 まあ、ここはとりあえずいつも通りついて行っても問題なさそうだな。


「はいよ」

「ありがとう淳一くん! 僕たちもう友達だよね!」

「お、おうそうだな」


 何週してもこの馴れ馴れしさには慣れんな。

 俺と真逆なやつだもんなこいつ。

 過去では全く絡んでこなかったからこいつのことあまり知らない。

 唯と付き合うことくらいしか知らなかったな。

 故に、過去では近づかなかったんわけだが。


 そして昼休み。

 唯と俺は、相川を案内するため手始めに購買に訪れた。


 食堂と併設されており、パンや弁当や定食などはもちろん、文房具なども置いてある。

 まあ、普通の高校の購買だと思ってくれて構わない。


「ここが購買。大体の人はここでお昼ご飯を買うの。中でもオススメはスペシャル焼きそばパンよ。私のイチオシよ」


 唯は、何故か定食を食わず嫌いでいた。

 いつもきまって、焼きそばパンを食べていたな。そういえば。


「へえー、僕も焼きそばパン好きだな、まあ唯ちゃんの方が好きだけどね」

「な……何言ってんのよ!」

  唯が照れながら答える。


「くだらねえ話してないで早く買わないと売り切れるぞー」

「あ、そうね淳一とりあえず並んどいてくれないかしら? その間に私は相川くんを案内してくるから」


 さて、ここで前回はとりあえず並ぶを選んだわけだが…………

 校舎案内を二人で行かせた結果、二人の仲が良くなった過去を知っている俺としては、今回はついていくしかないだろう。


「いや、俺もついていくよ。唯一人じゃちゃんと案内できないだろ?」

「はあ? 私一人で十分案内できるわよ! それに焼きそばパンどうすんのよ」


 そうだった……俺が一緒に行ってしまったら三人分の焼きそばパンを確保することは不可能だ。

 くっ……断念するしかないのか……


「おう淳一、お前も焼きそばパン買うのか?」

  「い、石田!!」

「おうおう。俺の名前は石田だ。石田慎也だ」


 11年後の世界でもよく飲みに行く俺の親友、石田はなぜか誇らしげに自分の名を語る。


「頼む、石田!!! 俺と唯と相川の分の焼きそばパン買ってくれ!!」


 普段の俺にしては、ありえないくらいの必死さだった。


「おう、別にいーけど?」

 石田は、そうあっさりと答える。

「おお! サンキュー!! これ三人分の金な。んじゃよろしく」


 気付いたら、唯と相川は購買を出て図書室へ向かっていた。


「よ……よう……待たせたな……」


 割と全速力で、唯たちを追ったので息が切れ切れである。

 体力は28歳のままなのね……


「淳一どうしたのよ焼きそばパンは!」

 こいつ……焼きそばパンにしか興味ないのか?

「石田に頼んだ。俺も一緒に行く」

「あっそう。まあならいいわ」

「どうせ回るなら多いほうがいいからね。淳一君がいれば僕もうれしいよ」


 こいつ、さっき俺が追いついた時「げっ来やがった」って顔してたような。

 まあいいか。これで二人で回ることを阻止できた。


 しかし、これといったイベントもなくただ校内を案内するだけであった。

 過去に二人が校内案内から帰ってきたあと、何故あんなにも仲良く話していたのか気になった。

 また、俺が二人について行ったことで過去を変えてしまったことへの罪悪感を感じた。


「あー、なんか今日は疲れたわ。相川君よく喋る人だから」

  唯がため息をつきながら話す。

「ああ、話上手な感じするよな」

 ここが一番重要な分岐点だと思う。

 ここで喧嘩するかしないかで今後が大きく変わっていくだろう。

 だから、俺はとにかく唯を刺激しないように言葉を選んだ。


「そうなのよねー、話しやすいっていうか。私初めて会った人と同性ならともかく異性であんなに話せる人初めて」

「お、おうそうなんだ」

「なんか初めて会った気がしないっていうか。まあちょっと疲れたけど。モテるんだろうな相川君みたいな人って」


 唯がこんなに異性を褒めるってことないからなんか……

 俺としては……つまらん。

 だが、下手なことは言うな淳一。

 とりあえず同調しておけ。


「まあ、そうなんだろうな」

「そういえば淳一、この後神社寄っていい?」

「お、おういいけど。なんかあるのか?」

「ばかねー、今日は七夕よ。毎年淳一の家の近くの神社に短冊飾ってるじゃない」

「あー、そっか。今日は七夕か。んじゃとりあえずうち来いよ」


記憶が蘇ってきた。 唯とは七夕になるといつも決まって短冊に願い事を書いていた。

この恒例行事がなくなったのはいつからだっけか。


 家につくと、俺たちは、すぐさま短冊に願い事を書く作業に入った。


「唯はなんて書くんだ?」

「言うわけないでしょ、言ったら願い事が叶わないとかなんとか」

「短冊は書いてあるから誰にでも見えるけどな」

「う、それはそうだけど、とにかくダメ。ゼッタイダメ」


 唯はそう言うと、まだ書いていないにも関わらず短冊を手で隠す。


「はいよ」


 俺は、何て書こうか。

 短冊に書く願い事は、絶対叶えると言い切るのがいいと聞いたことがあるな。

 俺の願いはこれしかないな……

「唯と結婚する」

 これだ。これしかない。


「淳一は、何て書いたの?」


 唯が俺の書いた短冊を見ようと首をのばしてきた。


「ば、馬鹿野郎見んじゃねーよ!」

「ふふふ、どうせ、淳一のことだからくだらないことに決まってるからいいけど」


 唯が、笑いながらそう答える。

 くだらねえことじゃねえけどな。


 短冊を書き終えた俺たちは、神社に行き、短冊を飾って、それぞれの家に戻った。


 唯の願い事何だったんだろう……

 気になる……気になる気になる気になる…………

 そういえば喧嘩してなければこんなイベントは起こらなかったんだな。


 ベッドに横になりながら、そんなことを思う。

 確実に過去を変えた。

 相川の告白は防げなかったが、唯とは喧嘩せずにすんだ。

 あんな思いもうしたくないからな。

とりあえず今日はもう疲れた…………




 夢を見た。

 夢の中では、何故か俺は唯視点で、短冊に願い事を書いていた。

「淳一が、私のことを好きになりますように」

 短冊には、唯のきれいな字でそう書かれていた。






 

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