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35話「文化祭前夜」 前編

 文化祭前日、俺と真柴と石田の三人は真柴楽器店のスタジオに籠っていた。

 久しぶりにバンドで演奏することに喜びを感じながら俺は思い切りプレーしていた。


「よし、いい感じだな。 最初の頃が嘘みたいだな」


 ドラムスティックを回しながら石田は声を上げる。


「そりゃあ最初の頃と比べたら上手くなるよー。 特に淳一君」


 真柴がニヤリと俺を見て笑う。

 実際問題俺たちは相当上手くなった。

 いや、上手くなったというよりお互いの音が合うようになってきたのだ。


「褒めてるんだかけなしてるんだかわからないんだが」

「いや、けなしてるだろ」

「おい、真柴そうなのか」

「さあねえ」


 真柴はそう言うとやっぱりニヤリと笑った。


「でも、本当に上手くなったよ私たち」

「ああ、伊達に練習してないからな」

「素晴らしい練習場所もあるしね」

「いつもお世話になっております」


 顔を見合わせ笑う。

 タイムスリップ前ではなかった世界。

 ずっとバンドをやりたかった夢が今こうして叶っている。

 けれどきっとそれも明日の文化祭までになってしまうのだろう。

 それは少しだけ、いやかなり寂しい。

 だからこそ大切にすべきなのだと今の俺には分かる。


「そういえば淳一君、歌詞はできたのかね」

「ああ、実は今日の5限目にようやく完成したんだよ」

「得意げに言って。 駄目だよ授業はちゃんと聞かないと」

「大丈夫だ真柴。 淳一はちゃんと聞いても授業の内容理解できないから」

「ああ、そうなのね。 それなら安心だー」

「お前らなあ」

「ごめんごめん。 じゃあその完成した歌詞を入れてもう一回合わせてみよう」


 真柴がそう言うとドラムの石田がスティックを三回叩いて合図を出した。

 その合図と共に演奏は始まった。


 *


 演奏が終わると何とも言えいない心地よさから解かれた気分になった。

 もっと演奏をしていたい気持ちとやり終えた気持ちの半々というか。


「どうだった?」


 俺がつけた歌詞の反応を確かめようと問いかける。

 真柴は俯いて深く何かを考えているようだった。

 石田はというと天井を見上げ目をつむったまま動かない。



「淳一君」

「ん、どうした真柴」

「これで最後にしようね」


 真柴はそう言うと「さあ、今日は朝まで練習だ」と声を高くした。

 それにつられ石田も声を高らかに上げた。



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