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4話「松村由夏」

 色々ありすぎて、もう、滅多なことが起きても驚かないと思っていたが……

 どういうことだ? 俺の孫だと?


「何言ってんだ? 俺の孫だと? 俺は、孫どころか子供もいねえし、嫁どころか彼女もいねえんだが」


 自分で言っておいて辛くなるが、事実だ。

 それなりの恋愛はしてきたが、28歳現在の俺には彼女はいない。ちなみに、まだ童貞だから浅い恋愛しかしてこなかった。


「はあ、1から説明するのは面倒なのよねー。実際に見てもらうしかないわね」

「? 見るってなんだよ」


 俺の孫、由夏はそう言うと、スマホに似た小型端末を取り出した。


「これを見て。これは今のお前の……おじいちゃんの過去を変えた場合に起こることをまとめた動画よ」

 由夏はそう言うと、端末の動画を再生し始めた。

 大勢の人がにぎわっているそんなシーンから始まった。

 結婚式だろうか? 新郎と新婦が並んで座り、笑いあっている。


 ん……?

 この二人見覚えがあるぞ?

 クリっとした大きな目、黒髪のショートカット。間違いない唯だ。

 それに新郎の方は……俺じゃないか!!


「な、なんだよこれ!! 唯と俺が結婚? どいうことだよ!!」

「うるさいわね、いいから黙って見てなさいよ」


 画面が切り替わり、次の場面に移る。

 どうやら、俺と唯は二人で暮らすことになったようだ。

 新居は決して裕福ではないことが分かる1LDKのアパートだ。

 贅沢な暮らしはできなくても、それを上回るほど幸せそうな二人の姿があった。


 一緒に料理をする俺と唯、幸せな新婚生活とでもいえるだろうか。

 こんな未来……かつて俺が望んだ未来じゃないか……


「この2年後私のお母さんが生まれるの。」

「俺に娘ができるのか……?」

「そうよ、お母さんすっごく美人なの。おばあちゃんに似たんだわ」

「…………」


「大体分かった? おじいちゃんは唯おばあちゃんと結婚してわお母さんを産んで、そしてお母さんは私を産むの」


 由夏はそう言うと端末をしまった。


「……それは分かるけどな、こんな未来11年後の俺の過ごしてきた11年とは違う。どういうことだ?」

「そう、このままだとおじいちゃんは、唯おばあちゃんと結婚できないし、お母さんは産まれないし、私も産まれない」

「だから過去を変えるために、私はおじいちゃんを過去に戻したのよ。私を現実世界で生かすために。 いわゆるパラレルワールってやつね」

「お前……過去を変えるのはだな……大体のSF小説ではいけないことなんだぞ。分かってるのか」

「分かってる……けどおじいちゃん……唯おばあちゃんのこと大好きなんでしょ?」

「そ、それはそうだが……過去を変えてまで手に入れたいとは…………思う」

「……思うんかい!」


 思えば……これから先、唯の背中ばかり追いかけて生きるんだよな

 唯のことは大好きだ。

 いつからか覚えてないが、多分、物心ついた時から好きだ。

 だが、相川が現れたことがきっかけで、以前のような距離感ではなくなってしまった。

 それから唯のことは諦め、何人かの女の子と付き合ってはみたが、やっぱり唯以上には好きになれなかった。

 他の子と付き合ったって唯と比べてしまっていた。


「やっと乗り気になってくれたのね……おじいちゃん」

「ああ……」


 そうだ……これは、俺の意志で決めよう……

 もう遠慮はしないぞ、唯と結婚するため、過去をやり直そうではないか。

「とりあえずこれからの11年で、私のお母さんが産まれることをゴールに、頑張ってねおじいちゃん。とりあえず、選択肢には気をつけることね。また戻っちゃうかもしれないわよ」

「ああ、お前を現実世界を存在させてやる」

「……そうなるといいけど。とりあえず今日のところは失礼するわ」

 由夏はそう言うと、あっという間に姿を消した。

 同時に、唯の姿が見えてきた。

「淳一、早くご飯食べて学校行くわよ!」



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