28話「ダブルデート」前編
「ふうー。 だいぶまとまってきたね私たちの演奏!」
「だな。 さっきのテイクは真柴も淳一も息ばっちしだったな」
「うん! それに淳一のギター前より格段に上手くなったよ!」
「まあ、伊達に毎日弾いてないからな。 それに俺には才能があるからな」
「バーカ、調子乗んなって。 ポテトもらうぞ」
「おい、それ俺のポテト……」
「淳一くん調子乗ってるとモテないぞ〜。 私もいただき〜」
「だから俺のポテトだって……」
バンドの練習が終わった俺たちBlues Drive Monsterは、某ファーストフード店に来ていた。
練習後に、ここに来るのが近恒例になりつつある。
学生の優しい値段で俺たち学生はとても入りやすい。
この頃は100円でハンバーガーが買えてお釣りも出たんだよな。 今じゃ100円ぴったりになったが。 まあ味は変わらない。
「文化祭まであと1ヶ月ちょっとだからな。 あんまうかうかしてらんねえよなー。 俺の部活もあるし、忙しいったらないぜ」
石田はそう言って深くため息をついた。
「おー、それはお疲れ様だね石田ボーイ」
「いいよなあお前らは部活なくてよー」
「うっ、そこを突かれると痛いぜ石田くん……あ、でも私の場合はお店の手伝いがあるからちょっと忙しいかな。 」
「あー、自営業だと家族も手伝わないとな。 それに比べてよ……」
「……悪かったな暇で」
石田が何か言いたげにこっちを見たので俺は先手を取る。
……暇で悪かったな……。
で、でも過去を変えるのに忙しいし?
「夏休みも部活とバンドしかしてなくてよー。 久しぶりに遊びたいわけだ。 そこでだ!」
石田は椅子から立ち上がり拳をあげる。
「明日の日曜日、部活が奇跡的に休みの俺と一緒に遊園地で遊べ!」
「……明日ってまた急だな」
「まあな。 昨日取り付けたデートだからな」
「昨日って本当に急だねえ……ってデート?」
石田の言葉に俺と真柴は反応する。
「富田さん知ってるだろ? あの子とデートすることになってよ」
「だとしてもなんで俺たちも一緒に行くんだ?」
「いや、なんか一対一は無理らしいんだ。恥ずかしいとか言ってたな。 ダブルデートならいいらしい」
「あー、なるほどねえ。 高校生らしい可愛い理由だねえ」
真柴がふむふむと頷く。
真柴よお前も高校生だろうが。
たまにお姉さん感はあるけど。
この前の夜の校舎での一件とか。
悩みを相談した時に高校生に相談した感じがなかったんだよな。
一応真柴は小説家志望だから本で得た知識なのかもしれないけど。
「そこでお前たちにも一緒に行ってほしいんだよ。 頼む付き合ってくれないか?」
石田が手を合わせ頼んでくる。
断る理由は無い。
それに石田には普段からお世話になっている。
俺のわがままにいつも付き合わせてるからな。
今回ばかりは手伝ってやらないと。
まあ、石田と富田真由美は3年生の時に付き合うんだけど。
俺が何かしてもその結果は大して変わらないだろうし。
ていうか、過去にもデートして付き添ってたんだよなそういえば。
「付き合ってやるよ。 石田にはお世話になってるからな」
「私も勿論手伝うよ! 淳一くんとデートしたいし〜」
「お、お前ら……愛してるぜ!」
石田は涙ぐみ、抱擁してこようとする。
「うわ、なんだよ気持ち悪い」
「おー! 頑張れよ石田くん! 私の抱擁パワーを受け取りたまえ!」
俺は石田の抱擁を避けたが、真柴は石田の抱擁を受け止めた。
それよか真柴の方から強く抱きしめていた。
まったく、スキンシップが多いバンドだな。
まあ仲が良いのはいいことだけどな。
そんなこんなで俺たちはダブルデートをすることになった。
帰りに服屋に寄り、ファッションセンス皆無の石田に真柴が服を選んであげていた。
真柴は割とセンスが良い方らしく石田が二割り増しに見えた。
石田はニヤリと笑い、
「これで富田さん俺に惚れるな!」
と調子づいていた。
調子に乗るなと言おうと思ったが、まあ似合っていたし、これ以上なく嬉しそうだったのでそんなことを言う気は失せた。




