2話「相川」
「さっきはいきなりでびっくりしたよね。 ごめんね、唯ちゃん。これから仲良くしてね。」
1限が終わり、休み時間になり、相川が唯に話しかけている。
「別にいいけど、何であんなことしたのよ。」
「目の前に綺麗な花が咲いていたら摘みたくなるものでしょ?そういうことだよ」
相川がキザなセリフを吐く。
「ば、ばかじゃないの?」
唯が照れ臭そうに俯き、答える。
何照れ臭そうに答えてるんだよ。
唯、お前チョロすぎだろ。
昔から押しに弱いんだよな唯は。
転校生の紹介を終え、先生がついでに席替えをすると言い出し、席替えをした結果、唯と相川が隣の席に。
ちなみに、俺は唯の後ろの席になった。
また思い出してきた。
これから2人が仲良くなってくのを後ろの席で眺めるハメになるんだったな。
「ねえ唯ちゃん、僕この学校来たばかりだから何も知らないんだ。よかったら案内してくれないかな?」
「いいけど、淳一も付いて来てよね!」
「え? 俺!?」
いきなり話を振られてびっくりした。
びっくりしたのが丸わかりでなんか恥ずかしい。
「あんた以外に淳一はいないでしょ! 私1人じゃなんかやだし」
相変わらず、唯は俯きながら答える。
この野郎すっかり相川のこと意識してやがる。
幼馴染の俺のことなんて、何とも思ってないのな。
少し胸が痛くなるぜ。
「淳一くん! 僕からも頼むよ」
「……しゃーねえな」
恋のライバル……いや、相川と唯はこの後付き合うんだからライバルとは言えない。
「ありがとう淳一くん! 僕たち、もう友達だよね!」
こいつキザなくせに人懐っこかったんだよな……
鬱陶しい……
授業が終わり、昼休みになり、相川を案内するため、俺と唯は、手始めに相川を購買へと連れて行った。
「ここが購買。大体の人はここでお昼ご飯を買うの。中でもオススメは、スペシャル焼きそばパンよ。私のイチオシよ。」
焼きそばにパンなんて炭水化物のオンパレードじゃねえか。
太る原因だぞ。
普通の女子なら敬遠するだろうが、唯はそんなこと心配する必要がないほど、全く太らない体質だった。
「へえー、僕も焼きそばパン好きだな、まあ唯ちゃんの方が好きだけどね」
「な……何言ってんのよ!」
唯が照れながら答える。
このやり取り腹立つわ……
「くだらねえ話してないで早く買わないと売り切れるぞー」
「あ、そうね淳一とりあえず並んどいてくれないかしら? その間に私は相川くんを案内してくるから」
「あいよ」
唯はそう言うと、相川を連れて購買から出て行った。
俺は蚊帳の外ってやつですかね。
まあ恋のリングにも上ってないからしょうがないけどな。
それにしても、唯があんなに早く男子と仲良くなるなんて珍しいんだよな。
だからこそ2人は、付き合うことになるんだけど。
タイムスリップしてきてまで、これから2人が仲良くなるのは見たくねえもんだな。
まあしょうがないか。
しばらくしても唯たちは戻ってこなかったので、とりあえず3人分の焼きそばパンと飲むヨーグルトを買って教室へ戻った。
昼休みが終わりがけになり、唯と相川が教室へ戻ってきた。
仲良く話しながら歩いて帰ってきていた。
やっぱり少し胸が痛くなる。
こんな気持ちに28歳になった今でもなるなんてな。
未来を知っているのにおかしな話だ。
「淳一、ありがとう焼きそばパン」
「淳一くんありがとうもらってくね」
2人とも自分の焼きそばパンを取っていく。
そして焼きそばパンを食べながら、仲良く雑談をしている。
それを後ろから見つめる俺。
見てらんねえな……
結局今日は一日中唯と相川の様子を眺めてるだけだった。
今は学校からの帰り道。
唯と一緒に帰っている。
途中まで相川が一緒だったが、家の方向が違うため途中で別れた。
「あー、なんか今日は疲れたわ。相川君よく喋る人だから」
唯がため息をつきながら話す。
そのため息はネガテイブなため息ではなかった。
「普通に楽しそうだったじゃねえか。お前普段男子とはそんなに話さないのにな」
少し嫌味っぽく言ってしまう。
なんか情けないな俺。
「べ、別にそんなに楽しいわけじゃないわよ。ただ転校生だし色々分かんないこと教えてあげたかっただけだし」
「どうだかな、お前相川に気があるんじゃねえのか?」
聞かなくていいことを反射的に聞いてしまった。
「は? 何でそんなこと。てか何で怒ってるのよ」
「別に怒ってねえし。思ったことを言っただけだ」
「淳一ってすぐ決めつけて言ってくるよね。もういいしばらく話したくない」
「こっちだってお前とは話したくねえわ」
パシッ
右頬に痛みが走る。どうやら唯にぶたれたらしい
「痛ってえな、何すんだよ」
「もういい、淳一なんて知らない」
そう言うと唯は走ってどこかへ行ってしまった。
思い出した。
これをきっかけに、唯とは相川と付き合うことになったという報告を受けるまで、話せなくなってしまったんだった。
やってしまった……これじゃあ昔と同じじゃないか。
って過去を変えることになるからこれでいいはずか……
家に帰ると、凄まじい睡魔に襲われ、そのままベッドに横たわり寝てしまった。
「淳一!! 早く起きなさーい! 唯ちゃん迎えにきたわよー」
……もう朝か?よく寝たもんだな……
って唯が迎えにきてるって?
何でだ……喧嘩して迎えに来るはずがない。
パァァン
右頬に痛みが走る。
「ん? 何だ?」
「やっと起きた。淳一、早くしないと学校遅れるわよ」
目を開けると、そこには唯がいた。昨日と変わらず制服を着ている。
おかしいな。
迎えに来るはずがない。
こんな記憶ないはずだが。
てか昨日は7月7日の金曜だから学校はないはずだ。
俺の曜日感覚が合っていれば
「唯、今日は何年の何月何日だ?」
「どうしたの?今日は2006年の7月7日よ」
……あれ? ……
もしかして……また戻ってる? ……
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