21話 檻と幻覚
うん。実は……
前回までのあらすじ。真田信繁という偽名を名乗る奴とネタ被りして捕まりました。
「ホントあっけないな」
もっと楽しませろよと木の枝で作っれた檻を蹴り飛ばす。
「まあ、もう一匹は逃がしたからな。気配もしないし、逃げたか」
中の俺に向かって、
「仲間に利用されてホント哀れだな。同じ日本人として同情するぜ。お兄ちゃん」
俺の偽名の真田信之はこいつの偽名の真田信繁の弟だから知ういってくるのだが、こんな弟いらない。
「まあ、いいか。あのガキは別の奴に取っておくか」
「………」
真田信繁は俺を檻の中に閉じ込めたと思っていたが、俺と共に行動していた夕日を捕らえる事は無かった。一人捕まえれば御の字と思っていたかもしれないだろうと思ったかもしれないけど。そこが罠だったりする。
「さてと、お嬢様に連絡するか」
檻の中の俺に向かって、
「可哀想にお嬢様は怒ると怖いんだぜ」
全然可哀想だと思っていない。どちらかと言えばいい気味だと面白がって笑っている。
「大人しくしてろよ」
大人しくさせる気がないだろう声を掛けて去っていく。
「さてと」
俺は檻の上から真田信繁が居なくなったのを確認してゆっくりと下に降りる。
「上手くいったな」
あんな簡単に上手くいくとは思ってなかった。
「そうですね……」
夕日もびっくりしている。
だよな。俺も成功するとは思わなかったし。
「まさか檻の中に囚われているのが幻覚とは……」
檻の中に居る俺――の幻覚が泡の様に溶けていく。
「――そなたのその発想は感服したぞ」
咲耶が褒めてくる。
「さて、今の内に逃げてもいいけど」
「――何で僕達の動きを把握出来たか。ですね」
夕日の言葉に頷く。
「うん。――偶然とは思えなくて」
危険だけど。確かめた方がいい。
「……反対かな?」
咲耶と夕日に尋ねる。
「――いや。それも策じゃ。敵を知るのは戦争の初歩じゃしな」
「戦争したくないけどね……」
苦笑いと共に告げると、
「生きている事自体戦いじゃ。そもそも受精する瞬間から戦いじゃろ」
えっと……。
何も言えなくなる。
凄く微妙な例えでしたね。
「じゅせい?」
夕日が分からないと首傾げてますよ。咲耶さん。
「……まあ良い。気にする必要はないぞ」
「?」
「うん。気にしなくていいからね」
まだ首を傾げてる夕日に告げると、
「そろそろ隠れた方がよさそうじゃ」
咲耶が忠告してくる。
その声に反応するように近付いてくる気配。
「確かに。この森から動いてないようだな」
「だから言ったろ。俺が一匹捕らえたって」
「私。追い詰めた。お前手柄。違う」
「追い詰めても捕らえたのは俺なら同じだろう!!」
現れたのは三人。
スーツを着ているサラリーマンのような男とウサギの耳の女。そして、真田信繁。
三人の首にはしっかり首輪。
「……」
どくんどくん
ここに残ると決めたのは自分だが、見つかったらどうしようかと緊張する。
「――安心するといい」
咲耶が不敵に、
「我がそなたらを守るからのぉ」
神の言葉は絶対じゃ。
その言葉に、
(頼りにしている)
声に出さずに告げた。
NG
木の枝抜掴まっている鷹也。
桜の枝も持ちながらなのでかなり危なげ……。
どぉ~ん
落ちて見つかりました。




