終止符
ガチャン
男のコーヒーカップが音を立てた。
「『黒龍剣』が終わる……?」
「そうです」
「娘、失礼、彬子殿。何故だね」
「もう終止符を打つべきだと思うからです」
「それは君の考えか?元々『黒龍剣』は我が国のものだ!日本人などに決める権利はない!」
「それこそ間違っています。『黒龍剣』は発祥こそ貴国ですが、継いだものたちは貴国の者だけではなく、欧州などの者もいます」
「う、嘘だ!調べたが、そんな記述はないぞ!」
「口伝ですから。継承者のみに伝えられています。本来ならばお話ししないことも話しました。これ以上はお話しすることはありません。失礼します」
男は呆然としているようだ。今のうちに逃げなければ!
彬子の後ろを、黒木と村尾が追いかけてきた。
「彬子さん……」
「黒木、村尾、逃げなさい。彼らは私を殺しに来るかもしれない」
「嫌です。そのご命令だけは従えません」
「私もです」
「……二人とも、気持ちは嬉しいけど……」
「彬子さん、お供させていただきます」
「もちろん私もです」
それから彬子たちはアジトを転々とすることになる。それでも最後までお供すると言う二人に、彬子は「黒龍剣」について話さなければと思った。このままでは、二人とも巻き添えになって死ぬだけだ。だが、本来ならば継承者のみに話されること。そこで彬子は自嘲の笑みを浮かべた。「黒龍剣」は自分の代で終わりにすると誓ったではないか!これ以上犠牲を出さないためにも、彬子は二人に「黒龍剣」について話す決意をした。