敵陣
村尾の調べた見取り図は頭に入っている。村尾は完璧主義者だ。間違いはないだろう。そして、警備だ。主寝室に近ければ、警備も厳重だろう。
彬子はとりあえず、塀のなかに忍び込んだ。入り口に一人……。彬子は当て身をくらわせ、縛り上げた。そして、悠然と中へ入っていく。思ったよりも人が少ない。彬子が乗り込んで来るとは想像していなかったのだろう。だが、主寝室の前には二人の護衛が立っていた。いかにもボディーガードらしく、体は大きく、筋肉がついているのが分かる。それでも、彬子の敵ではない。彬子は素早く近づき、二人を昏倒させた。しかし、ドサッという大きな音がしてしまった。これでは主犯は起きてしまっているだろう。それでも、彬子は主寝室の扉のノブを回した。
彬子が入ろうとする前に、ナイフが飛んできた。それをかわしながら、彬子は部屋へと入っていく。今度は銃弾が飛んできた。彬子はそれを難なくかわし、本人へと近づく。彬子の間合いに入ったら、もう無理だ。多少の武術の心得など頼りにもならない。彬子は相手を縛り上げ、尋ねた。
「何故私のことを知っている?黒幕はお前の国の連中か?」
「こ、こんなことをしてただで済むと思うな!」
「おやおや、昼間に私の会社には乗り込んで来たのに?」
男は顔面蒼白になった。あの男たちは雇い入れたものたちで、自分との接点が無いようにしていたからだ。
「そ、それは何かの間違いだ」
「それとは?詳しくご存じのようだが」
「こ、黒龍剣を渡せ!あれは我らのものだ!」
「なるほど。そこまでご存じとは……死んでいただく」
「なっ!」
男の声のすぐあと、彬子は針を急所に刺した。そして縄を解き、ベッドに横たえた。そのまま彬子は屋敷をあとにした。
翌日、彬子はアジトの一つである部屋で、テレビを見ていた。テレビから流れてきたのは、某国の大使が頓死したというものだった。彬子はテレビを見終わると、ベッドに寝転がった。