表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍剣  作者: 奈月ねこ
12/12

伝説

 彬子は全てのアジトを引き払った。本当は榊に挨拶したかったが、勘づかれる可能性があるのでやめることにした。不義理をしてしまうが、なるべく自分との接点はない方がいいだろう。

 そして、李一族の国へ三人で旅立った。もちろん偽造パスポートだ。おそらく李一族は自分たちの動きを察知しているだろう。それでも、少しでも時間稼ぎが出来るなら構わなかった。


 李一族の国へ渡り、その夜に彬子たちは行動を起こした。向こうに準備する隙を与えないためだ。

 もちろんこちらの事前準備は怠っていない。李家の見取り図や警備、総帥の居場所、隠し通路までも調べ上げた。三人はそれぞれ別の隠し通路から中へ入ることにした。彬子はなるべく総帥の近くに。二人は彬子の邪魔をするものを片付けるために、少し離れた場所に。


 彬子は総帥の書斎に出ることが出来る通路にいた。通路の向こうに数人の人の気配がする。彬子はしばらく息を潜めていた。


 バタバタ


「総帥、侵入者です!」


 始まった!二人は侵入に成功したようだ。


「早く処理しろ」


 バタバタ


 部屋のなかは静まり返った。とそのとき、彬子のいる通路の先が開いた。


「彬子殿。正面からいらしてくだされば、賓客としてお迎えしたものを」

「総帥、夜分に失礼します。どうしても総帥とはお話をしたかったものですから」


 総帥も落ち着いていたが、彬子も堂々としたものだった。


「ほう、話とは何かな?」

「死んでいただきたいのです」

「くっ、くっ、くっ、さすがは彬子殿。単刀直入ですな」

「では、死んでいただけるので?」

「私が死んでも次の総帥が立つだけだ」

「ええ、ですから全員に死んでいただきたいのです」


 彬子は「黒龍剣」を引き抜いた、と思った瞬間、総帥の首は胴体と離れていた。彬子はそのまま書斎を出ると、次の目的地へ向かった。総帥の親族のところだ。そこへ行くまでには、かなりの数の兵隊を殺さなければならなかった。

 こんな時だが、剣は喜んでいた。血を欲していたのだ。剣の切れ味は鋭いものだった。もちろん彬子の技量あってのことだが。


 彬子は剣を振るい、的確に相手の急所をつき次々と殺していく。躊躇いがない訳ではない。だが、どうしても「黒龍剣」を終わらせなければ、という強い意志が、彬子を突き動かしていた。どれ程の人間がいても、どんな武器を使っても、彬子には敵わなかった。そして、二ヶ所からほぼ同時に火の手が上がる。黒木と村尾が上手くやったらしい。李一族の混乱は増していった。

 彬子も最後の仕上げに入った。親族を残らず殺すこと。非情なようだが、子供も例外ではない。後々、旗印にされては困るからだ。彬子は苦い気持ちで仕事を終えると、炎の中、正門から出ていった。


 たった一夜で、李一族は壊滅した。世間では、神の怒りに触れたのだと噂された。この事は、伝説のように語り継がれることになる。







 ある山の中。


「彬子さん、山菜が豊富ですね」

「まあね」

「彬子さん、水場が遠すぎますよ。上手く水を引けるかやってみましょう」

「そうだね」


 三人の会話はいつまで続くかはわからない。しかし、今を大切に生きようとする三人の姿があった。



 <完>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ