告白
彬子は、黒木と村尾に「黒龍剣」が生きていることを伝えた。そして、自分が最後の使い手になることも。その結果、彬子がどうなるかも。
二人は難しい顔をしていた。彬子が嘘を言っているとは思わない。だが、自分の主人と決めた彬子がこのまま死を待つだけとは、理解したくなかった。
「彬子さん、何か方法はないのですか?」
黒木が苦しげに聞いてきた。彬子が話した以上、方法はないのだ。それでも、藁にもすがる思いだった。
「気持ちは嬉しいけど、方法はない。最期は子供の頃に過ごした山へ行こうと思っている。その前に李一族を叩き潰してからだが」
彬子は極めて軽い調子で答えた。とんでもないことを言っているのだが、そうは感じられない。
「二人とも、ここまでは同行を許したが、ここから先は私の戦いだ。二人は家に帰るように」
「待ってください!これから李一族と戦うのでしたら、ご一緒させてください!」
「そうです!」
二人は食い下がった。彬子は迷った。確かに人手があると助かるが、生きて戻れる保証はない。というより、生きては戻れないだろう。
「だめだ。二人はこれからのことを考えろ」
「彬子さん……」
「今まで振り回してすまなかった。これからは自分のために生きて欲しい」
二人は何とも言えなかった。彬子が最後の戦いに赴こうとしている。きっと生きては戻らない覚悟なのだろう。だからこそ二人は連れていけないと言っているのだ。だが……二人は同じことを考えていた。この人と決めたから着いて来た。だからこそ、今こそ自分たちが必要なはずだと。
「……彬子さん、戻らない覚悟で着いて行きます」
「私もです」
彬子は驚きを露にした。二人がここまで自分に意見をしてきたことがなかったからだ。
「二人とも……必ず死ぬぞ」
「「わかっています」」
彬子は初めて、二人の覚悟を知った。おそらく自分の部下になった時からかもしれない。思えば、こんな年下の小娘に従ってくれているのだ。気づかない方がおかしい。
彬子も腹を括った。
「わかった。なら着いてこい。ただし、足手まといにはなるなよ」
「はい!」
「もちろんです」
最後の戦いが始まろうとしていた。