朝果実 ~果実を食べる人~
チュンチュン。
ああ、今日も可愛らしスズメたちが僕を起床させる。
可愛らしい見かけに反して、バイ菌の温床であるから僕は死んでも触らないが、どれ、見ているだけなら愛らしい。
朝の所用を済ました僕は、朝食ことリンゴを手に取った。
なぜだかリンゴが好きで仕方がない。いっそのことリンゴの木を育ててみようか? などと思うほどだ。
真っ赤に染まった魅惑の果実。
当然のこと、男は黙って丸かじりだ。
ガブリ。
爽やか香りが辺りを包み、口の中にはほど良い酸味がジワリと広がり、さらには鉄の味まで……。
おい、嘘だろ。前歯が二本とも折れている。
そうかと気付くと、にわかに痛みだすが、僕は負けること良しとしない。
たたがリンゴにナメられてなるものか、ナメるのはこの僕ほうだろ。
長年リンゴを丸かじりしてきたが……いいだろう、僕の歯が先か、お前の果肉が先か、勝負してやろう。
数分の死闘の末、僕は前歯八本を犠牲にリンゴを食いつくした。
フフ、たたがリンゴ、僕の敵ではなかったな。
若干気取ってリンゴの芯をポイする。
言うまでもないが、真っ赤に染まったのは僕の口の方であるが、さて、この時間、歯医者はやっているだろうか?
【朝果実 ~果実を食べる人~】を了読していただき、誠にありがとうございます。
作者も不慣れながら、読者様の【面白い】に値する物を目指して書いております。
【温かい】目で【読んで】頂けたら幸いです。