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 第八話  火VS火

「ちょこまかちょこまか、逃げてんじゃねぇぞ!!」


 諏訪は大剣を力任せに振り回す。が、少女はそれをしなやかな動きでかわすと、反撃の弓を射る。

 放たれた矢は諏訪の右肩をかすめ、諏訪の後ろにあった木を貫いた。


「あら、外れちゃった。運が良かったわね」


 少女は諏訪と距離を取りながら笑った。


「クソッ! あのガキなめやがって・・・」


 さっきから、ずっとこの調子で攻撃をかわされ、その度に反撃に遭っている。おまけに・・・。


「諏訪様、そろそろ魔力が底を尽きそうです」


「んなことは自分が一番分かってんだよ!!」


 そう、魔力が絶対的に不足しているのだ。このままいけば、魔装術式も強制解除しかねないという状況まで追い込まれている。


「あれ~? どうしたのかな?  あっ!もしかして、もうスタミナ切れ!? ハハッ! ダッサイわね~」


 少女はイヤな笑顔で、からかってくる。向こうはどうやら余裕のようだ。

 何とか言い返したい諏訪だが、言い返す体力すらもったいない。

 現に、肩で息をしまくっているし、汗の量も尋常ではない。傍から見れば、こいつバテているな、と分かってしまう状態だ。


「ナビケー、八塚に連絡取ったか?」


 諏訪はナビケーこっそり聞いた。

 情けないが、今この状況を打開するためには援軍を求めるしかない。いや・・、正確に言えばあと一つあるが、できればそれは使いたくない。


「はい、さっきから何回もSOS信号を送っているのですが、応答がありません」


「そうか・・・。なら、メッセージを送ってくれ『二十分ぐらい時間をかせぐ』ってな」


 諏訪の言葉を聞いた少女は高笑いをしていた。


「ハハハハッ!! そのスタミナ切れの状態で二十分かせぐって、あなたバカじゃないの?」


「確かに、今の状態だったら三分も持たないだろうな。だが、これを使えば・・・」


 そう言って諏訪が腰のポーチから出したものは、緑色をした丸薬みたいなものだった。


「それ何?」


「まぁ、一般人から急に魔法師になったお前には分からないだろうな。これは、『タブレットポーション』と言ってな、魔力を回復することができる便利なアイテムだ。ただし、これが最後の一個だ。本当なら帰るときのために取って置きたかったんだが・・・」


 諏訪は丸薬を口の中に放り込み、ガリッと噛み砕いた。


「ふ~、よし! それじゃ、続きを始めようか!!」


 丸薬のおかげで魔力は回復した、だがそれでも四分の一も回復してないだろう。

 今はこれで我慢するしかない。


「そんなものがあるなら最初から使えば良かったのに。でも、これでやっと骨のある戦いができるわね」


 少女はそう言うと、弓を構えた。

 それに答えるように諏訪も大剣を両手で握り、自分の目の前に構えた。

 

 少女が先に攻撃を仕掛けてきた。火の矢が三本連続で放たれ、諏訪に向かってくる。

 諏訪は一本目の矢を避け、二、三本目は大剣で弾き飛ばした。

 

「次はこっちの番だ!!」


 諏訪は火系魔法『火柱バーナー・ショット』を唱える。諏訪の手から少女に向かって一本の火柱が放たれる。


「そんなもの、また耐火魔法で・・・」


 少女は耐火魔法を纏った手で、火柱を受け止めようとした。しかし、火柱は予想以上の強さだったのだろう、少女は火柱によって吹っ飛ばされてしまった。


「クッ・・・! な・・なんで?さっきは止めれたのに・・・?」


「そりゃそうだ、さっきの魔法『フレイム・スラッシュ』はD級だ。だが、『火柱バーナー・ショット』はC級。魔力の量、質共に上回っているんだよ。で、どうだ?降参するか?」


「ふざけないで!!」


 少女は立ち上がると火の矢を次々に飛ばしてきた。

 それを諏訪は冷静にかわしたり、防いだりする。

 諏訪は戦う中であることに気付いた。それは少女が詠唱魔法を一つも使ってないこと。

 さっきから少女が使っている魔法は、元々武器に付属されている魔法だったり、詠唱なしでも扱えるごく簡単な魔法ばかりなのだ。

 現に、少女は今も大技らしきものを使ってこない。確かに、魔法の授業を受けてはいないのだろう。しかしそれでは、なぜこの半年間あれだけの魔物を狩ることができたのだろうか。セロから見せてもらった、魔物の不自然死の写真には、普通の魔法師では困難なものまで映ってあった。そのことを考えると、少女には大技が使えない。もしくは、使いたくても使えない状況にあると考えていい。

 諏訪はそこで、ある賭けに出た。 

 火系魔法『紅蓮クリムゾン・ブレス』を唱える。この魔法はランクB級で、魔力の減りも尋常ではない。

 諏訪は大きく息を吸うと、その息を一気に吐き出す。すると、吐き出された息は炎へと変わり、辺り一帯を火の海にした。

 少女はこの攻撃を耐火魔法で全身を覆い防ごうとした。だが、そんなものが効くはずがなく、火は黒いマントに燃え移った。


「しまった!!」


 少女はこのままでは丸焦げになると判断し、マントを脱ぎ捨てた。代わりに現れたのは、紺のセーラー服だった。


「なんだ、お前高校生だったのか?背が小せぇから、小学生かと思ったぜ」


 諏訪は純粋に驚きに満ちた声で言った。がしかし、これがいけなかった。


「・・・今、何て言った?」


 少女は怒気の混じった声で聞いてきた。

 だが、諏訪はそれを軽い態度で対応する。


「んあっ? だから、小学生かと思った、って言ったんだよ」 


 少女は小学生という言葉にピクッと反応した。そして、次第に震えだし、大声で叫んだ。


「誰が幼児体型だ~~~っ!!!」

 

「んなこと一言も言ってねぇ~~~!!!」


 諏訪は困惑と驚きの声を上げる。


「うるさい!黙れ!口閉めろ!! もう許さない!! あんたの魔力が尽きるまで適当にやり過ごして、尽きた瞬間に止めの必殺技しようと思ったけど、もういい!! 今、この場で使ってやる! あたしに幼児体型って言ったことを後悔させてやる!!」


「だから、幼児体型とか言ってねぇし!! そっちの被害妄想が激しいだけだろ!!」


「うるさい!うるさい!とにかく、あんたも最後くらい悪あがきしなさいよ。あたしの必殺技には誰も勝てないんだから!」


「いいぜ!やってやんよ!!んじゃいくぞ!!」


 諏訪は火系魔法『火神アポロニア・フレイム』を、少女は火系魔法『迦楼羅かるら』をそれぞれ唱えた。


「ハァ―――――――――――――――ッ!!いっけぇ―――――――迦楼羅ァ――――――!!!」


「オオォ―――――――ッ!! 負けるかぁ――――――っ!!」


 諏訪の太陽のごとく光る炎と少女の不死鳥の形をした炎がぶつかるはずだった。

 なんと、炎がぶつかる直前に紫の稲妻が二人の間に落ち、炎ごと消してしまったのだ。


「な・・・なに?」


「あ・・・もしかして・・・」


 少女は戸惑い、諏訪は予感する。

 そして、諏訪の予感は見事に当たる。


「お前ら、さすがに暴れすぎだ」


 雷の落ちたところから煙を払いながら登場したのは、諏訪のパートナー、八塚だった。


~続く~









 

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